16 五人の少女とちっちゃなおじさん
そんな湯船の俺と1号に向かって、不敵な笑みを浮かべながら歩いてくる、完全全裸のおじさん。手にはモンスターボトルを持っている……。
そんな事よりも、おじさんは当然下半身も剥き出しなのだが、股間にぶら下がっている物の大きさが、見間違えた?と思うくらいに小さい。
ぶら下がっているというよりは、なんか付いてるね……? という感じの小ささで、あれ? あれ? と何度も見返しているうちに、すぐ近くまで来てしまった。それでも小さいので、見間違えではない。
「ククッ……! わかるでぇ……? あんたもわいも、ボトルマスターや!! いざ尋常に、がっちんこ勝負!!」
おじさんはモンスターボトルに指を突っ込んで、いつでもがっちんこ勝負を始められる体勢だ。
何故このタイミングでおじさんの口から『がっちんこ勝負』などという微妙な単語を内包した言葉が出てきてしまったのか解らないが、股間の突起物は相変わらず遠近法を間違えているのではないかと思うほど小さかった。
「あの……? おじさん、バトルとかより、とりあえずタオルを腰に巻いた方が……」
「いくでぇ!! 発現せよ! わいのスペシャルモンスター、マラソンガエル!!」
俺の話を聞かない男の指がボトルから抜かれると、以下略でキラキラなエフェクトと共にぴょんと飛び出してきた結構大きなカエル。
『マラソン』というこれまた微妙な言葉を内包した言葉が付いている事は、おじさんの股間事情とは関係ないと思いたいのだが……。
「ケロォン!」
割とかわいい声で鳴くマラソンガエルは2メートルくらいの大きさがあり、これまで出会ったボトルモンスターの中では割とモンスターらしいモンスターだ。
ふむ、あの大きな後ろ足で蹴られたら、結構痛そうじゃないか……?
「……え? なんだ? ……おっさん、ちんぽこ、ちっちゃいな……?」
風呂に入りすぎたのか、紅潮してボォッとした顔の1号の口から、言ってはいけない究極の煽り言葉が飛び出した。
その言葉を聞いて、顔を赤くしたり青くしたりしながらおじさんが反論する。
「は……? は? は? はああっ!? な、なん…なんだとっ!? ち…… ち…… ちいさく、な…… い……っ!!!!」
1号はまだボーっとした顔のまま、俺の股間を確認し、指さしながら続ける。
「えっ、でも…… 俺のマスターの子供ちんぽこがこれだよ? おっさんは大人ちんぽこなのに、子供ちんぽこの半分以下で、小指の先くらいなのって、大丈夫なの……?」
「あああ!!! マラソンガエル!!!! この最悪なメスガキモンスターを、頭からパックンしてしまええええーっ!!!!」
「ケロォ~ン!!」
マスターおじさんの命令で、ぴょんと飛び跳ねてドポンと湯船に入ってくるマラソンガエル。途端に体がビクンと震えて硬直し、動きが完全に停止する。
カエルは両生類の変温動物。急激な温度変化には弱く、熱々の風呂に飛び込んだりしたら、即座に死んでしまうのだ……。
「ど、どうした!? マラソンガエル……し、死んでるっ!? どうしてだ!?マラソンガエル……俺達、誓ったじゃないか! この戦いが終わったら、種族の垣根を越えて愛し合おうって……ああ、あああ~ん!!!」
色々とヤバいおじさんのモンスターボトルが砕け散ってキラキラが飛び散り細かい事は省略すると、そこにはしっかりとセーラー服を着込んだとびっきりの三つ編み女子中学生が出現していた。
「んっ……? ここは何処? あたしは……誰?」
女子中学生はこの場が風呂だと気が付いたようで、俺達に会釈をして去っていった。なるべくなら金銭を渡してやりたかったが、まぁ仕方がない。
1号は湯当たりしたのか動けなくなってしまったので、おんぶして浴場を後にした。うん、良い所だから、また来よう。




