14 五人の少女とフリフリリボンおじさん
「う~ん、お客さんですとぉ…… そうですねぇ…… この部屋なんかどうでしょうかねぇ~……?」
不動産屋が俺に紹介してきたのは、大体1DKのボロ賃貸だった。壁紙は黄ばんでいて、床はボロボロだ。築年数は50年くらい。あれ程の金額をポンと出した客にこの部屋を紹介してくるとは。
さっきの金から幾らぼったくるつもりか知らないが、子供だと思って完全にナメられている。そもそも子供が大金を持ってくる時点で裏を警戒しないもんなんだろうか?
物件探索を諦め、ぼったくり不動産屋を放置して立ち去り、暫くの間はホテルで暮らす事にした。よくよく考えてみたら、この方が色々と楽である。何しろお金は無限にあるのだから。完全にチート頼りの生活だが、便利なのだから仕方がない。
女部屋用に大部屋と俺用の小部屋を借りた。長期滞在者用の部屋なので、調理施設も付いている。アメニティは充実しているし、様々なサービスが使える。驚くことにスクリーンと映写機まで借りられるらしい。
この世界に存在していないのはテレビやスマホ、ネットくらいなんじゃないだろうか?
お姉さんを寝かせた後、モンスターボトルからボトルモンスター達を呼び出す。暫くここで暮らすから、好きに部屋を使うと良いと言うと、皆が目玉を丸くして大喜びし、部屋を探索し始めた。
「す、すげえぞマスター、この部屋、風呂が2つも在るぜ!? まじかよ……? こんなにでかいベッドが6つもあるぞ!!」
「冷蔵庫がありまちた! うそぉ……冷蔵庫って初めて見たでち……! 何でも、冷やせるんでちか……?」
「こんな、贅沢していいのか……な? 私達、名前も名乗れない身分なの……に!」
「ブヒョオオッ!? ぶおおおん!!! ぶおおおん!! 視覚絶頂っ……視覚絶頂ぅ~!! アヘェェーッ!!!!!」
「ルームサービスを頼んでも良いのでしょうか? う、うれしい……! 文明の極みを感じます……!」
うん、お金の力はすごいな。知ってはいたが、お金の力さえあれば、大抵の困難は乗り越えられるのだ!
皆を部屋に置いて、ホテルのロビーで一旦休憩でジュースを飲んでいると、奥のほうから見るからにこいつはボトルマスターだな! という感じの不審なおじさんが、俺に向かってゆっくりと近づいてきた。
それにしても、ボトルマスターって変態しか居ないのだろうか? 基本の色がピンク色で、全身にフリフリのリボンを付けているおじさんだ……。
「そこの君、ボトルマスターだな? 私と勝負しないか?」
「俺は今休憩中だし、モンスターは全員部屋で寝てるから、戦えないよ? 戦いたいなら待っていてほしい」
俺の言葉に、そうかぁ…… と頷き、対面の席に座ってコーヒーを頼み始めるリボンおじさん。はっきり言って勘弁してほしい……。
「待っているのも暇だな…… ん? よく見たら、君も好きそうな顔をしているじゃないか……? よし、テーブルの下で互いの股間のモンスターを戦わせる……というのはどうだい?」
俺はボトルモンスターの緊急呼び出し機能を使った。誰が来るかは判らないが、1体を何処からでも強制的に呼び出せる便利な機能だ。相手の都合などを考えないのが欠点だが、今回は仕方のない行為である。
「うっわ、信じらんねえ! 信じらんねえぞ! ねえマスター、俺…… 風呂に入ってたんだけど~!? 酷い!!」
素っ裸でビショビショの1号がロビーに転送されてくる。ちびっ子女子モンスターとは言っても女の子の裸だ。周囲の視線から大事な部分を守るために、収納袋からプール用タオルを出して頭からかけてやろうとしたら、素っ裸の1号に拒否された。
「ちげぇよ! そうじゃねえんだよ!! 俺、風呂をめっちゃ楽しんでたんだよ!? ああもう、敵は何処だ!? 裸の俺が、ボコボコにぶっ殺してやるよ!!」
「ウギャアアッ!! メッ、メッ、メスの裸~っ!!!」
フリフリリボンおじさんが白目を剥いて泡を吹いて倒れる。勢いでモンスターボトルが割れ、漏れ出した光やら何やらに包まれたリボンおじさんが、シュワシュワ…と音を立てながら、とびっきりの女子中学生に変化していく。
ツインテールにミニスカートのセーラー服女子中学生がムクリと起き上がって、周囲を見渡して、一体自分に何が起こっているのかわからないという顔で口を開いた。
「あれっ……? ここ、何処? 私……誰なの?」




