11 五人の少女と武士のコスプレおじさん
俺は憤っていた。このお姉さんは、幾多の犯罪を犯し、警察への自首を先延ばしながら、なおかつ女子中学生を貶めているのだ。
信じられない……! おじさんが原材料の女子中学生達だなんて、それはもうおじさん軍団じゃないか!?
おじさん軍団を神に捧げる……!? 無数の裸のおじさん達が、股間に付いている物をブルンブルン回しながら、俺に向かって走り込んでくるイメージが脳内を支配する。
「おげええええっ!!!」
気がつけば俺は堪えきれない吐き気を感じ、激しく吐瀉していた。
「大丈夫ですか!? 6次元の影響、まだ残ってます!?」
俺を介抱しようとするお姉さん。そんな我々に近づいてくる者が居ることに気がつき、目前のお姉さんのスカートで口を拭い、その場にサッと立ち上がる。様々な経験が俺を強くしていたのだ。
「ちょっ……どうして!? なんで私のスカートでゲロを拭いたの!? なんで!?」
「そこのお主……! ボトルマスターだな。我と勝負せよ!」
お姉さんの背後から現れた、一見すると武士風だが、よく見ると武士のコスプレっぽい感じが色々なところに出ている、ちゃんと見ると普通のおじさんが、俺達に挑戦状を叩きつけてきた。
「あぁん……?なんだぁ?またおじさんマスターかよ」
悪態をつく1号に、キッ!と視線を送るおじさん。既にボトルを開封して、指を突っ込んでいる。
「ククッ……モンスターの分際で我を愚弄するのか。良かろう、お主らは確実にあの世に送ってやる! 発現せよ! 我の最強モンスター、火豚!」
おじさんが指を引き抜くと、ボトルから溢れ出した七色の光に、不思議な美しい光を宿した細かい流星群が被さり、地面にこぼれ落ちる。そこには、全身から炎を発している……というより、全身が燃えている感じの豚のようなモンスターが出現していた。おそらく……これはモンスター……なのだろうか?
「ブッ、ヒッ、ヒイイインッ!ブギャアアア~ッ!!!」
悲鳴を上げて地面を転げまわる火豚。これ、アツアツに焼けて痛がってるんじゃ……? 辺りを美味しそうな匂いが包み込んでいく。あっ、涙……? 涙を流しているよ……!
「知っての通り、我が有名モンスター『火豚』は全身から灼熱の炎を発するアツアツモンスターだ!我はこの個体と猛烈な修行を繰り返し、炎の勢いを数百倍に強める事に成功した!」
「数百倍の火力で、豚さんの全身から脂が噴出して、ジューシーに焼きあがって、お、お、おいしそうな匂いっ……あああっ!!! た、た、たまりませええん!!」
「あち! あちぃ! 危ねえな! なんだこの豚、こっちに寄ってくるんじゃねえよ……転げ回って火をつけてこようとしてんのか?」
「あんまり危険さを感じないでち。むしろ、かわいそう……?」
悲痛な悲鳴を上げ続ける豚に、黒い液体が飛んでいく。哀れに思った3号の口から放たれたイカスミだ。じゅわああっ!と音を立てて、豚の火が消える。しかし、少し遅かったのだろうか……もうもうと立ち上った煙が消えた後に残ったのは、美味しそうな匂いの豚の丸焼きであった。
美味しそうな外観。素晴らしい香り。このような物を目前に出されて、彼女がどうにかならないわけが無いのだ。そう、うちの豚さんである……。
「ぶおおおおおおおお~ん!!! イカスミ豚肉っ!? すごくすごくすご~く美味しそうで、ぶわあぁあっ!!、私、もう我慢できないでぇすううううううっ!!!」




