109 怪物少女の闘争:準々決勝2回戦 祈りの上級女神プリエ vs ド変態の上級神アオーン
準々決勝2回戦が開始されて早々、観客席から大きなざわめきが起こり悲鳴や怒号が飛び交う中、祈りの上級女神プリエチームは、困惑した表情で自分たちの立つ闘技場で起こっている凄惨な光景を眺めていた。
「ああ、彼らに理性と知能を授け、お導きを。そして願わくば、彼らに後悔の機会を……!」
上級女神プリエが相変わらず素晴らしく神聖な感じに祈っているが、目の前の光景のインパクトに完全に負けてしまっている。
「むう。変態すぎるし、手が出せない。これは紛うことなき完全変態行為であるな!」
「うう~っ! こいつらも、レッツ・ダンシングが効かないぴょ~ん!」
「ばうばうばうばうーっ!」
陰嚢むきだしのおじさんやダンシング・バニー、更には飼い犬にまでドン引きされた顔で見つめられているアオーンチーム。いや、まぁ、チームと言っても裸のおじさん二人は、全身に何らかの油を塗りたくり、ライトに照らされて裸で包容しあっていた。
ねちょっ……! ねちょ、ぐちょぉ……!
「おうっ! おうおうっ! おーう!!」
ねちょ、ねちょ、ぐちょぐちょぉ……!
「だっ、駄目っ、みんなが観てるのぉっ!」
強烈そうな神バリアで周囲を覆い、中の自分たちの裸体や音声を観客席までお届けしているのだ。それも、どうやら大会運営の手によるものではなく、自力で勝手にやっているらしい。
『ちょっと!? 拡大映像と会場音声、切れないんですか!? さ、さ、最低で~す! ド変態の上級神アオーンチーム…… 本当に最低の連中だと聞いてはいましたが、こんなのを実況するのは、い、いやああああ~っ!!!』
実況のバニーさんからも悲鳴が飛ぶ。俺はこれまで散々お世話になってきた各種耐性スキルの効果のお陰で我慢できているが、これが無ければ、とっくにこの場から逃げ出そうとしていただろう。今から逃げ出しても良いんじゃなかろうか? まぁ、関係者以外は誰も入り込めないし、入ったら逃げ出せないらしいのだが。
この試合を観ていた、というだけで、職場や学校で周囲から距離を置かれてしまいそうな光景だ。闘技場を見つめていたレム姉さんが、チッ…!と舌打ちするのが聞こえる。
「あいつはド変態の上級神。少し前にも簡単に説明しましたが、神界でも有名な異常者です。夜道であれに出会ったら迷わずダッシュで逃げろ、昼間でもあれに出会ったら迷わずダッシュで逃げろと言われていました。なんで大会参加が認められたんでしょうね……?」
「お、おい……やべえぞ、あの戦士の股間のアレ……あのままじゃ、変態神の尻に!?」
「絵では見慣れた光景だ……けど、現実では無理なんじゃ…… ほ、ほああっ!? ほ、ほんとに入ったあああ!!」
どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!
「ぶおおおおお~ん!! これっ!! これは、ものすごいハードなやつでぇ~~す!!」
チャーミーが何故か大興奮し、現場に行きたそうに地団駄を踏んでいる。
俺は、ダンシング・バニーさんに悪いなと思いつつ、観戦を諦めて食料庫に向かった。フィレとの約束もあるので、なにか甘いものを作ろうと思ったのだ。トンタマで食べた料理を頭に思い浮かべながら、食材を調達する。
ゴールデン・トンタマホテルのコックさんが教えてくれたレシピを思い出し、鶏もも肉と蜂蜜、粒マスタード、薄力粉などをキッチンに持ち帰った。
「ホテルで食った時に、美味しくて驚いたんだよな、これ」
作り方は簡単で、下ごしらえした鶏肉に塩胡椒して薄力粉をまぶし、フライパンで皮側をしっかり目に焼き、ひっくり返して蓋をして蒸し焼きにしている間に、蜂蜜と粒マスタードに少量の醤油と水を混ぜてソースを作り、からめて焼けば、ハニーマスタードチキンの出来上がりである。パセリを添えて、めしあがれ!
「フィレ、約束通りトンタマで食ったやつを作ってみたんだけど……みんなも食べるか?」
「ええっ!? 本当にお優しいですね、マスターさぁん!!」
闘技場で巻き起こっている、もはやバトルなのか何なのかわからないやつを放置して、仰け反ってビクンビクンと痙攣している6号以外の皆がハニーマスタードチキンに手を伸ばす。
「うそっ!? うそうそ、これトンタマのやつでぇす!!」
「甘いのに妙に美味えんだよこれ。よく再現できたなぁ……?」
「トンタマの良い思い出だけが都合よく蘇ってくるでち!」
「パンにサラダと一緒に挟んで食べると、合う……よ!」
「ぶおおおお~ん!! この味っ、この味ぃ~ん!!」
「鶏肉なのに、しっかりお腹にたまる感じがします! 太っちゃいますね……!」
「昔行ったことがあるが、案外メシがうまい場所じゃったなあ……」
「ヌガー様も食べて下さいよ。何でなのか、結構おいしいんですよ」
「えっ、でも私、マスタードって苦手で……あれっ? 美味しっ……!!?」
割と皆にも好評で、結構な分量を追加で作ったのに、どんどん量が減っていく。
そういえば実況アナウンスが全く聞こえてこないけど、闘技場はどうなっただろう?と思って外を眺めてみると、ダンシング・バニー達が係員らしき人に抗議している最中だった。
「我々は、変態を観に来たわけでは無いのであるが……」
「こんなの、バトルじゃなくて、我慢大会だぴょん!」
「お気持ちは良くわかります。現在、上の者たちが対応を協議中ですので……」
神バリアの中……隔離された空間となっている中に置かれたソファベッドの上では相変わらず描写することが躊躇われる本気の変態行為が繰り広げられている。
どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!
「おうおうっ!! おうおうっ!! おうおうおうおうおう~~っ!!」
どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!
どしゅどしゅっ! どしゅどしゅっ! どしゅどしゅっ! どしゅどしゅっ!
「だ、駄目っ! これ以上は、俺っ、女神になっちゃう~~~っ♡♡♡」
その時、闘技場をものすごい勢いで駆ける者が居ることに気がついた。ダンシング・バニーの飼い犬、チベタンマスティフである。
勢いをつけて、アオーンチームのバリアに突撃していく。
『おおっと、今大会唯一の犬戦士が、突然の突撃で~す!! こんな事をしても跳ね返されるだけでしょうが、がんばれ犬戦士~!』
ところが、犬がバリアに触れると軽く閃光が走り、犬とバリアの両方がポーンと弾け飛んだのだ。
「キャイーン!!」
悲しそうな声を上げる犬だが、再び距離を取って、またしても突撃し始めた。
「あっ、わかった!!」
ハニーマスタードチキンを頬張っていたレム姉さんが、突然立ち上がって主張しだす。
「あの犬、金持ちがよく使ってる、飼い犬保護用の犬バリアが装着されてるんですよ!!」
「飼い犬保護用の犬バリアなんて物が存在するのか、この世界には……」
「もちろん大した性能じゃない防犯用ですが、別種のバリア同士は反発し合う事があるんです! そして、この大会には闘技場の場外に落ちたら負けっていうルールが存在するんですよ!」
「なんか、随分都合がいい展開に感じるけど、良いことだな。頑張れ、犬ーっ!」
頑張った犬によって転がされ続けた神バリア玉は、あっという間に場外に転げ落ちてしまった。
『ああっ、犬がやりました~っ!! 勝者、犬チームで~すっ!!』
「ばうっ!! ばうーっ!!」
ダンシング・バニーから極太の骨が与えられ、回転しながら尻尾を振って喜ぶ犬の顔が大写しで表示された。




