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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物屋敷
107/150

107 怪物少女の闘争:準々決勝1回戦 複製の上級女神ヌガー vs 破壊の上級女神メス その①

 早々に驚くべき事が起こった。なんと、レム姉さんを無能ちゃん呼ばわりした挙げ句に女神ビームらしき技で報復され、耳だけの姿になって俺の前に現れていたバニーさんの実況者が、完全復活していたのだ。


『さあ、今日はクウォーターファイナルバトル・準々決勝戦で~す!』


 ぴょんぴょん跳ねてうさ耳を揺らしながら、元気いっぱいの明るい声を発し、会場を沸かせている。


 レム姉さんの闇討ちで無残に死んでしまったのだとばかり思っていたが、おそらくあの闇討ちは、女神ビームで軽~くうさ耳を刈り取っただけなのだろう。


「そうさ。うさ耳を……。軽く、刈り取った、だけ……」


 耳が復活している所を見ると、そもそもレム姉さんが鞄に詰め込んでいたあの耳は作り物のうさ耳だったのかもしれない。語尾が「ぴょん」でない所から察するに、実はなんちゃってバニーさんだったのかもしれないし……。


 まぁ、仮に死んじゃっていたのだとしても。選手以外が死んでも、皆、復活するという事なのだろう!


 いつもどおりに俺の恐怖耐性スキルが大活躍する中、闘技場への道が開き、観客席の熱気が伝わってくる。


「よし、作戦通りに、まずは防御を固めよう」

「了解だぜ、そりゃっ!」


 全員が発するエネルギーが相互に組み合って、目に見える程の防御壁が構築されているのを感じる。目の前に表示されている数字は4億%を超えており、メス爆弾ならば400万発に耐えられる筈。はたして何ならばこの防御壁を貫けるのだろうという鉄壁っぷりだ。


 昨日の話し合いで決まったことは、とにかく防衛に徹し、仮に散開する場合は必ず二人以上でバリアを貼りながら行動する事。これで即死退場は無くなる筈だが……。


「昨日確認した通りですが、更に強力な兵器を使ってくる事を前提とした方が良いでぇす。先にあの戦士たちを攻撃したとしても、衝撃で爆発するかもしれませぇん。あの戦士たち、ずっと爆弾を背負ってるのも怪しいんでぇす。兵士の心臓の鼓動音が無くなると爆発する爆弾なんてのも存在しましたからね」


 フィレの分析を聞いていると、この戦いは一筋縄ではいかない感じに思えてくるのだが、目の前に表示されている防御力の数字は本当に頼もしい。


『さあ、まずは、毎日どんなときにでも突然始まるカミカミチューブの生放送で、マニアックな神様達にお馴染みですね! 複写、複製、何でもコピー! 複製の上級女神ヌガーちゃんチームが入場してきました~!』


 わあああああああああああーっ!!

 ヌガー様~っ! ヌガー様~っ!

 脱いで~っ! 脱いで~っ!


 観客席からの熱い声援が聞こえてくる。声援なのか怪しい声も聞こえてくるが、多分声援である。


『対するチームが入場してきました~! そう、初戦から闘技場を大破壊! まさに破壊神としか言いようのない、そのツンツンした態度から一部では姫扱いされている、毎度おなじみ破壊の上級女神メスちゃんチーム!』


 筋骨隆々の戦士二人が、爆弾リュックを持って登場する。その後ろから姿を表す女神メス。


 破壊上級女神メスは、一昨日と変わらない姿をしていた。ボンテージ姿っぽいファッションなのだが、確かに少し姫っぽいフリルやリボン等で彩られている。しかし……。


「おいおい、見ろよ。爆弾ビッチの連中、全員の尻が虹色に光ってやがる!」

「目つきがおかし……い。あれは、何してくるかわかんない……ね」


 どう見ても、あの光り方は……タンザナイトの洗脳魔道具だ。


「大会運営側は、洗脳魔道具を取り締まるつもりはないのか? そもそも、どうしてあんな物が会場に入り込んでいるんだ?」

「開催要項で説明されていた、持ち込み禁止品に含まれていないからだと思いますが……」


 眉をひそめたレム姉さんが困惑を隠せない口調で続ける。


「何故あんな厄介な品が、この隔離された闘技場に入り込んでいるのか、に関しては、謎ですとしか……? 一体誰がどうやればそんな事が出来るのかすら……?」


 先程から念のために筋骨隆々の戦士二人に対してルアが電撃を飛ばしているのだが、予想通り全てメスの強力な女神バリアで防がれてしまっているらしい。爆発の瞬間には解除されるのだろうが、それでは遅いのだ。


 今は、とにかく防御に徹するしか無い。


「アハ、ハ、ハハ……! メス爆弾2! 及び、メス爆弾X! 同時に起爆準備、開……始!」


 正気を無くしているか、意識を乗っ取られているのかわからないが、上級女神メスが大声で筋骨隆々の戦士たちに命令すると、二人は戸惑う事も恐怖を露にすることもなく、狂気に満ちた表情のままでリュックを降ろし、中身を取り出す。


 表面に大きく『2』と『X』と書かれた、色違いの爆弾が設置され、二人の手にはスイッチが握られている。


「やっぱりです。初戦のメス爆弾とは別物が出てきました……!」

「なあ、あいつらが同時に自爆して退場したらよ、あの爆弾ビッチは自動的に負けなんじゃねえの?」

「そもそもあの上級女神、あの爆弾の威力に耐えられないんじゃないかの?」

「虹色の光に心を惑わされてるんでち……!」


 ふと、怪しげな空気を感じて振り返り背後を確認すると、周囲をカメラが飛び回るヌガー様が、どう見ても戦闘とは関係のない怪しげな道具を取り出しながら、着衣のチャックを降ろし、ほぼ全裸……全裸に近いのだが辛うじて見えてはいけない部分だけは隠しているいつもの姿になり、お顔を赤らめて俺には理解できない謎の喜びを感じている場面だった。


「ヌガー様!? 今、割と真剣な場面なのだけど、そういうのは後にできないの!?」

「ばかなのっ!? これまで私と付き合ってきて、まだわからないっ!? 今、我々ヌガーちゃんねるチームは大ピンチ! これから目の前で起こるであろう、きつい、きつ~い大爆発をバックにして、私の新作セクシーリンボーダンスを大公開すれば、視聴者数やチャンネル登録数、寄付金も跳ね上がってしまう筈なのよ~~~っ!?」


 色とりどりのライトにパァッ!と照らされ、仁王立ちしながらさわやかな笑顔で独自の正論を語るヌガー様。


 だ、駄目だ。この人は…… もう駄目かもしれない!


 次の瞬間、目の前が真っ白に染まった。そう、メス爆弾の爆発が始まったのだ。


 皆で張っている防御壁によって、その威力を正確に窺い知る事は出来ない。だが、目の前に表示されている数字……防衛能力の残量は、予想より早く減っていく。


 時間の流れを異常に遅く感じてしまう。今、ついさっき爆発したばかりの筈。しかし、残りはもう、1億を切りそうだ。


 こんな短時間で、これほどまでの莫大な防御力を消費させてしまうだなんて、一体どんな性能の爆弾なのだ?


「見て、見て! びっくりするくらいの、だいばくはつ~っ!!」


 信じられないことに、ヌガー様はこの状況で本当にリンボーダンスをし始めている。いや、しかし、バリア外の現在の状況で、生放送の放送電波とか、お茶の間に届くのだろうか?


 防御壁の外の光景はゆっくりと暗くなり、吹き荒れる瓦礫や業火で包み込まれ、そしてそれもゆっくりと煙の中に消えていった。


『う、う、うわ……うわあああっ!? これ、何が、どうなっちゃったんですか~!?』


 実況のバニーさんが、驚愕の声を上げたのが聞こえた。何しろ、俺にも何が何だかわからない状況で、周囲は瓦礫と火と煙だらけだ。とりあえず仲間全員の無事を確認し、煙が晴れるのを待った。


『こ、これは酷い~っ! 酷すぎる、と言って良いでしょう! 闘技場が……それどころか観客席やチーム専用小屋のギリギリまでもが、ほぼ完全に破壊されつくされています!!』


 ウサちゃんの解説の通り、闘技場は、ほぼ完全に破壊されていた。俺達が立っていた場所以外は大きく抉られ、火の海だったり、マグマ状だったり、瓦礫の山と化している。恐るべき事には、闘技場を包み込んでいたバリアを何枚も突き破って、観客席の寸前にまで被害が及んでいた。


「これはさすがに……爆弾ビッチも筋肉おじさんも、みんな吹っ飛んじまったみたいだが……?」

「ぶおおお~ん、め、め、滅茶苦茶でぇす……食べられるものが残っていませぇん!!」


 呆然とした顔の俺達が防御を解除したタイミングで、係員達が破壊された闘技場に入ってきて、検査をはじめた。恐らく、上級女神メスと戦士の死亡確認をしているのだろう。


 その時。装備からの警告で、煙に紛れてすぐ近くに誰かが立っていることに気がつく。目線の先には……満身創痍の上級女神メスが立っていた。一体、どんな手段を使ってあの爆発を耐えたのか!?


 メスの顔は、歓喜のあまりか、はたまた洗脳されて歪まされているその心の姿を指し示しているのか、大きく歪んでいる。


 足元には何処から出したのか、小型の爆弾を設置済みの状態だ。その手には、爆弾のスイッチだと思われる物が握られており、スイッチに指を伸ばそうとしていた!


「…………つか、ま~え……た!」

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