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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物屋敷
102/150

102 怪物少女の闘争:六回戦 黒歴史の上級神ヒス vs 大勝利の上級女神ヴァルリア

 荒れた闘技場の上は、どういう仕組みなのか、今回も即座に綺麗になっていく。ゾンビ女子中学生たちから垂れ流された謎の粘液も消え失せて、実際にはどうなのかわからないが、見た目は清潔そのものだ。


「闘技場の掃除……何度見てもすごいんだけど、これって一体どうやってるんだ?」

「ああ、気になります? 執行委員には時間の上級女神が居るんですが、女神スキルが時間操作なんです。闘技場だけ時間を逆行させれば、あっという間に元通りなんですよ」


 レム姉さんがプリンをちゅうちゅう吸いながら答えてくれた。このプリンも大量に用意されていた物だが、吸ってもよし、食ってもよしの凄いプリンだ。製品名は(ゴッド)プリン。


「すげえな~! そのスキルがあれば掃除要らずじゃねえの?」

「良い事ばかりじゃないのよ。時間退行した物はその概念自体が激しく劣化してしまうから。とはいえこの闘技場は特別製で、もう何千年も使われてるらしいけど……」


 何だか良くわからない説明だが、神様のスキルというやつも万能ではないという事か。


 個人が神様を名乗る中二病全開な新興宗教にハマり、俺に謎の薬物投与を続けて幻覚を見せ続けている連中のやる事だから、もっと完全完璧なのかと思っていたのだが、案外弱いところもあるのかもしれない……。


『さあ、皆さん! 続いてのバトルは、まだ若いのに上級神となり、最早歩く生き字引としか言い表しようがない、この世で起こる事の全てを記録し覚えていらっしゃる、黒歴史の上級神ヒスさまチームと、もしかしたら彼女が存在しなれば、世界で起こる全ての戦いにおける勝利が色褪せてしまうのかも? おなじみ大勝利の上級女神ヴァルリアさまチームの、キャラとしては対照的な二人の対決となりま~ちゅ!』


 黒歴史の上級神ヒスの見た目はいかにも歴史大好きなマニアです!という感じの、灰色のローブで身を包み、分厚いメガネがチャームポイントな若い男性で、まるで学生のような雰囲気だ。覇気のような物を全く感じない。


 一方、大勝利の上級女神ヴァルリアは、防御力など皆無そうなビキニアーマーで殆ど全裸を晒しながらも、その身体よりも巨大な剣を振り上げており、常に太陽の光を背負っているような眩しさを感じさせる。しかし、天下の往来で全裸と言えばボトルマスターかヌガー様になってしまっている俺の目には……。


「はっ、はわわ……! 何卒、宜しくお願い致します……」

「ウフフッ! 見て! この私、勝利の女神が微笑んでいる! つまり、勝利は常に我と共にあるの!」


 双方の戦士も対照的だ。ヒスの戦士は全員ボトルマスターのようだが、なんと驚くことに服を着こんでいる。信じられない。嘘だろう? 服を着ているだなんて、そんな馬鹿な……。全員がヒスと同じようなマニアっぽい感じで、ローブで頭を隠している。同類な俺とは友達になれそうな雰囲気だ。


 一方、ヴァルリアの戦士は全員がヴァルリアと同じ格好だ。全員が巨大な剣を持ち、ビキニアーマーから零れ出る肉体が眩しい。要するに殆ど何も着ていないも同然の格好だが、ボトルマスターではないようだ。陽気そうな彼女たちと俺とでは絶対に接点が生まれないだろう。


「あの裸みたいな恰好の女性戦士は全員、剣士かな? それにしても、裸なのになあ……」

「表で裸なのにボトルマスターじゃないだなんて、ヌガー様以外では久しぶりに見たかもしれねえな」


 モンスターボトルを開封し、モンスターを開放し始めるヒスチーム。それを見たチャーミーが驚き、バッ! と立ち上がって大きな鳴き声を上げた。


「ぶおおおおお~ん!? チャッ、チャーミーの、ファーザーでぇす~ッ!!!」


 そういえば大会開始前に少し顔を合わせていたことを思い出した。ヒスチームのボトルモンスターは、10人のふくよかなおじさん達。全員が四つん這いで、どうやら豚人間のようだ。


「ぶおおおおお~ん!! 我が最強の娘、チャーミーよ!! ファーザーの戦いを、見届けてくれぇ~~っ!!」


 不意にファーザーの叫びが闘技場に響き渡り、チャーミーはいつになく真剣な表情で戦いの場を見つめ始めた。


「ファーザーの真剣勝負でぇす……! チャーミーは、しっかり心に刻みまぁす!!」


 そこから始まった恐るべき戦いを、チャーミーは心に刻めたのだろうか?


「どうして!? 私たちの剣技は、神鉄の鎧ですら切断するというのに!?」


 鍛え抜かれた女戦士達の剣は、豚人間達のぷよぷよで柔らかそうな素肌に、何故か全く通用しなかったのだ。


 確かに強烈な斬撃を受けた筈なのに、みみずばれのように赤くなっただけの肌をポリポリ掻いて、あれえっ? こんなもんなの? という顔をする豚人間達に、幾度となく繰り返される斬撃だったが、全てが無駄だった。


「ぶおお~ん……! うーん、とりあえず脱がして無力化しようか!」

「賛成だブー!」


 そして、満を持して始まった、ただ万歳して突撃するだけな豚人間の、恐るべき肉圧による蹂躙……!


 スポーン! ポン! ポンポーン!


『お、おお……これは何という事でしょう? 大勝利の上級女神ヴァルリアさまチームの戦士たちが、黒歴史の上級神ヒスさまチームの戦士たちの意外な強さに圧倒され、何故なのでしょうか……あっという間にビキニアーマーが吹っ飛んで、素っ裸になりまちた~~っ!?』


 3人の女戦士は丸裸となり、豚おじさんたちに囲まれながら闘技場の床で蹲って、何とか大事な部分を隠している。


「どうしてこんな事に!?」

「こんな恰好じゃ、戦えないよぉ!」

「なんたる屈辱! くっ……! こ、殺せっ……!」


 その様を、さて困ったなあ……? こいつらどうすんべえ……? という顔で眺める豚人間達と女達の前に、ヴァルリアがゆっく歩み出て、その顔に満面の笑みを浮かべながら、巨大すぎる剣を構えた。


「ウフフッ! みんな、大丈夫よ! 見て! この私、勝利の女神が微笑んでいるの! つまり、勝利は常に我と共にあるのだから!」


 ヴァルリアの構えは、一見すると適当で、雑な物だった。着ているビキニ鎧や持っている大剣は、戦士たちの所有物と同じものに見える。しかし、溜め込まれているであろう力、そこから漏れ出している力の強さは普通ではない。積年の経験、戦いの蓄積が体に染みついているのだろう。見ているだけで、次の瞬間には首を跳ね飛ばされ、あっさりと自分の命が無くなっているような、そんな錯覚を覚えてしまう。


 闘気のような物が吹き出したり、周囲の空間が歪んだりはしていない。そんな漫画的な表現では済まされない圧倒的すぎる殺意は、ヴァルリアの笑顔や風体からは一切感じ取れない筈なのに。


 ヴァルリアの瞳が、スッ……と閉じられた。


「「「 はっ、はわわーっ!! 」」」


 顔を突き合わせていると、恐怖も強まるのだろうか? ヒスとボトルマスター3名は、頭を抱えてその場に蹲ってしまった。その姿を見て、レム姉さんが不思議そうな顔をする。


「神バリア張ってれば、大丈夫な筈なんだけどなあ……?」


 次の瞬間。ヴァルリア自身は全く動いていないように見えたのだが、何かを劈くような音と共に、豚人間たちが全員吹っ飛んで倒れ込む。直前に蹲った事で斬撃から逃れたのだろうが、ヒス達のローブも切り裂かれ、怯えた表情が拡大表示されている。


「あっ、あのボトルマスター達……なんか見覚えがあったのだけど、ヒスくんの通ってる学校の子達じゃないの!? 神よ、全員が神のチーム!!」

「そんな事より、なんでちか? 今の……。一体、何が起きたんでち?」

「私にも全く見えませんでした……」


 焼き魚を片手にその場で立ち上がり、わなわなと震えながら、ファフニルが口を開く。


「やべえぞあの上級ビッチ……! 今の一撃、いや一撃じゃなく数百撃って所だが、あんな超高速で切り刻まれたら、いくら豚人間だからって……」

「ぶおおおっ!? ファッ……ファーザァー!?」

『す、すごい! 大勝利の上級女神ヴァルリアさまが、その恐るべき剣技を披露されまちた! 黒歴史の上級神ヒスさまチームのボトルモンスターたちが全員倒さ……あれ?』


 俺たちの心配に何の意味があったのだろうか。ぴょんぴょんと軽く飛び起き始める豚人間達。


「ぶおお~ん、驚いたぞ、何をするんだね君は!」

「ぶお~っ、いっぱいミミズ腫れになってる! 痛いんだよ、これ!」

「ぶお~ん、怒ったぞー! みんな、こいつも脱がすぞぉー!」

「脱がそう! 脱がそう!」

「「「 ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおお~んっ!! 」」」


 嘘でしょ!? という顔をするヴァルリアに突撃し始める豚人間達の肉圧で、ヴァルリアの巨大な大剣とビキニアーマーが吹き飛んでしまいそうになったが、上級女神の底力なのだろうか? 足首のビキニアーマーだけは何とか維持することが出来たようだ。つまり、すっぽんぽんである。


「やーい! すっぽんぽんでブーッ!」

「すっぽんぽん女神でブーッ!」

「な、なんという事……よりにもよって豚人間に、この私が……!?」


 何とか乳首と股間を隠しながら、ヴァルリアが叫ぶ。おじさんに囲まれたその姿は、もはやエロゲーに出てくる類のものだった。


「なあ、レム姉……豚人間ってあんなに強かったっけ? チャーミーの親父はそこそこに強かった筈だけどよ……? あんな無茶苦茶な生き物じゃなかった筈だけど……」


 レム姉さんが女神アイを使って観察し、瞳をきらめかせながら答え始めた。


「これは、ヒスくん達の作戦勝ちかも。あの子達、豚人間達の強化の為、自分たちの防衛すら殆ど切り捨てて、4人の力を全振りしてたみたい。隠蔽技術もなかなか凄くて具体的な強化内容まではわからないし、ヴァルリアも認識出来てなかったみたいだけど」

『なんという番狂わせでしょう! たった今、大勝利の上級女神ヴァルリアさまが、ご自身の敗北を宣言されまちた~! よって、勝者は黒歴史の上級神ヒスさまチームとなりま~ちゅ!』


 うわあああああーっ!!!

 ぶおおおおおおおおおお~~~~ん!!!


 観客の歓声と豚人間達の雄叫びが闘技場に響き渡る。




 そういえば、チャーミーは父親が戦う姿をしっかり観ることが出来たのだろうか? なんだかあまりバトルという感じでは無かったが……。椅子に座っているチャーミーを見ると、確かに視線は闘技場のほうを向いているのだが、試合を見ている感じではない。「ねえ、チャーミー……?」声をかけた俺だが、チャーミーは顔面を紅潮させ、全身からありとあらゆる体液を流し、特に口からは大量の唾液を垂れ流し、細かくふるえながら、何処か別の空間に存在している食品を見つめて、小さな声で「我慢……我慢……我慢……我慢……我慢……我慢……我慢……我慢ん……我慢んん……我慢んんんんっ……」と繰り返していたのだ。俺は恐怖のあまり失禁しそうになって恐怖耐性スキルで我慢するいつものやつで何とか平常心を保った。

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