第60話 幕間:ケムシンと人探し
クエストが終わった翌日。町のとある路地裏にて。
「なあ、今日ちょっと別行動でええかな?」
そろそろ難易度5のダンジョンに挑戦してもいいだろうとマップを眺めていたミョンチーへと、おもむろにケムシンがそう言った。
「俺は構わないぞ? 何かするのか?」
「まあちょっと、昔の知り合いに会いに行こうと思ってな」
ケムシンはこの世界に来てそこそこ経つ。昔は別のパーティーに属していた事もあった。そのことを知っているミョンチーは特に疑問を持つこともなくその要望を受け入れた。
「わかった、じゃあ俺は適当に時間潰しとくよ」
「ありがとなあ」
季節は初夏。天気は良好。普段はミョンチーと行動を共にしているケムシンはこの日、ある思いを胸にひとり行動を開始したのだった。
「ゲッシ―?って人は知らないな。他に聞いてくれ」
「そっか、ありがとな。呼び止めてすまんかったわ」
探し人の名はゲッシー。その人物を探して、ケムシンは集会所で聞き込みを行っていった。
「知らないな」
「ごめん、他のパーティーの人とはあまり話さなくて……」
「最近来たばかりなので他を当たってください」
なぜわざわざ聞き込みを行うのか。知り合いなら直接本人の姿を探せばいいはずである。だが、ケムシンがそれを行わないのにはとある理由があった。
ケムシンはその人物の事を、名前でしか知らないのである。
聞き込みを続けるもハズレばかり。集会所には出入りしていないのか、ケムシンがそう思い始めた頃、ようやく手掛かりを知る者が現れた。
「ああ、ゲッシ―さん? 前に少し話したことあるよ」
「ほんまか! その人に会いたいんや。どこに居るか知らへん?」
「いや、僕もそこまで親しい訳じゃないから……」
「そうか……」
「あ、でも。確かあの人ホワイトホームってパーティーに入ってたと思う。今もそうかは知らないけど」
新たな情報を元に聞き込みは続く。
「ホワイトホーム? もちろん知ってるよ!」
「ほんまか! 教えてくれ!」
「大統領の住んでる家でしょ? 誰でも知ってるよ! 常識だよね!」
「……なるほど! ありがとう! 助かったで!」
「ホワイトホームなら知ってるぞ。前にうちと合同でボスに挑んだ事がある」
「ボス攻略パーティーやったんか。今もあるパーティーなん?」
「この前のボスイベントまでは間違いなくあったぞ。今は……どうだろうな。最近はパーティーの解散とか新規立ち上げが激しいからな」
「ゲッシ―? 知らん知らん。ホワイトホームなら知ってる知ってる。知り合いがそのパーティーに居るよ」
「おお、ほんまか。そのパーティー今どこか知らへん?」
「知ってる知ってる。無量塔良助のダンジョンに挑むって言ってたよ」
「ムラタリョウスケのダンジョンやな?」
「そうそう」
「ありがとう! 助かったわ!」
そして、
「村田良助のダンジョン……どこや……?」
ケムシンはマップとの睨めっこに陥っていた。
「漢字が違うんか? 村田、村多、……邑田? 亮介?」
否、無量塔と書いてムラタである。が、ケムシンにそのようなマイナー苗字の知識は無かった。
ダンジョンが見つからず困ってしまったケムシン。だがその時、ある考えが彼の脳裏に浮かんだ。
「教会で出待ちすればええんや……!」
転生者がよく集まるのは集会所。だが全員ではない。逆にめったに寄り付かない者も一定数居る。
だが教会ならどうか。クソ神父が居るからか、あまり転生者が集まる事は無い。だが死んだ際や回復する際は必ず全員が教会を訪れるのである。
ケムシンは早速教会へと向かったのだった。
「樋口君、どこに居るんや……」
ケムシンが相手の名前しか知らない理由とはそう、その相手が生前の知り合いだからである。ケムシンはその知り合いがこの世界に居る事を、イベントの偵察作戦の時に偶然知ったのである。
~樋口錬也のダンジョン~
区分 :ボス
タイプ:刑務所
人数 :8名以下
対象者:ゲッシ―
ボスの姿は対象者の生前のもの。同姓同名の他人ではない事を、ケムシンはボスの顔を見て確信していた。




