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第56話 罪と罰

「俺たちから見て、転生者っていうのは大罪人なんだ」

「大罪人?」

「うん。地獄で罰を受ける人って意味のね」


 ジョン君の説明は、そもそも俺たちをどう認識しているのかという部分からスタートした。


「ここが地獄って事っスか?」

「そうだよ。この世界が転生者が罰を受ける場所で、そして転生者にとっての異世界だと俺たちは知っているんだ」


 この世界の人々は自身が地獄の住民だと知っているらしい。なぜなのか。もしかして……


「ジョン君たちも、生まれる前は転生者だったのか?」

「違うよ?」


 違うんかい。


「転生者が転生するのはこの世界にじゃないよ。俺たちは偶然ここで生まれただけ」

「なんで生者が地獄に居るんだ?」

「さあ?」


 そこまでは知らないのか。なぜ地球に生まれたのかと聞かれて答えられる奴は居ないのと一緒か。


「転生者がこの世界に来た理由なら知ってる。自殺したんでしょ?」

「……知ってたのか」

「うん。最期まで生きる努力を続けろ、っていうのが神さまの教え。だから、自殺は俺たちにとっては最も犯してはならない禁忌なんだ」

「そうか、だから大罪人……」

「そう。転生者は悪さをしようとしても神罰が下るから危なくは無いけど、それでも皆あまり関わろうとはしないのはそういう理由」


 それで町の人は皆あんな態度なのか。


「転生者って食べる事も寝る事もできないんでしょ? 転生者になりたくなかったらよく働きよく休めって神父様もよく言ってるよ。俺も子供の頃はよくそう怒られた」


 なんとなく予想できてたが、やっぱり俺たちって反面教師にされてるのか。



「悪さ出来ないって言っても、町の物は壊したりできるっスよね?」

「石畳の事なら、多分わざとじゃなかったからだと思うよ」

「そうなんスか?」

「だってレンガでも上歩くと少しは削れると思うし」


 なるほど。砂1粒分削れたからって神罰喰らってたら石畳歩けなくなるもんな。消耗品も使えなくなるし。意図的かどうかが判定基準になるのは、まあ納得はできる。


 実際町で戦った余波で石畳壊れてるしな。


「他に転生者が神罰喰らう事って何か知ってるか?」

「うーん……神の恵みを勝手に取ったら駄目らしいよ? 勝手に転生者に依頼出しても意味ないって聞いたことがある」

「そうなんスか。私たちなら取り放題だと思ったのに」


 何に使うつもりだシリルさん? 商売でもするつもりか?


「普段自分たちの力で暮らしてるからこそ神さまが時々恵んでくれるんだよ。最初からアテにしてる人には何もくれないよ」

「厳しい神なんだな」

「そう? 普通だと思うけど」

「まあ……それもそうか」


 地球でも神頼みしても別に救われる訳じゃなかったもんな。たまにでも実益がある分こっちの神の方がありがたい位だ。詐欺野郎だけど。



「この世界って神が作ったん?」


 お、今まで静かに聞いていたケムシンが核心に切り込んだな。果たしてジョン君の解答や如何に。


「え、何その発想?」


 え、何その反応?


「皆の居た世界ではそうだったの?」

「あーうん、そういう説もあったぞ」

「俺らの神さまはそんな話聞いたことないな。この地に安寧をもたらしてる守り神としか……」


 え、土地神なの? 生き方云々どこ行った?


「なんで土地の守り神が異世界の俺らに罰与えてるんだ?」

「さあ?」


 ジョン君もそれ以上は分からないようだった。




「とりあえず町の人の態度の理由は分かったな」


 たしか地球の歴史では宗教には民衆をコントロールする役割があったはず。この世界でも俺らをダシにして仕事に熱意が向くようにしているのだろう。そうなるように仕向けているのは……クソ神父か? ほかに教会の人見た事無いんだよな。


「謎も増えた気がするっスけどね」

「クソ神父にいろいろ聞いてみるか。この世界の成り立ちとか」

「あ、無理っスよ。私の仲間が質問攻めにしてもクソ神父何も教えてくれなかったっスから。必要になったら教えるの一点張りで」

「ええんとちゃう? やる事は変わらんし」


 確かにダンジョンを攻略するという事は変わらない。でもジョン君の話を聞いたことで少しは五里霧中感が薄らいだ気がする。今まで推測でしかなかった事もいくつかはっきりしたし。


 俺たちがダンジョンを攻略しないといけないのは、それが自殺に対する罰だから。食べる事も寝る事も遊ぶ事もそれ以外も、生きる上での楽しみを俺たちから取り上げ、そして生を渇望させる。


 ボスが前世の姿でしかも本人が望んだチートを持ってるのも、多分当てつけなのだろう。


 なんて皮肉の利いた罰だよこんちくしょう。前世の罪を払う(物理)ってか? 詐欺神め。


 いつか絶対こんな世界から抜け出してやる。俺はそう決意を固めなおしたのだった。


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