第5話 初勝利!
「お、多分あれだな」
テロテロが祠みたいな小型の建造物を見つけてそう言った。中に入ってみると地下への階段がある。
「近かったわね」
スイカの言う通りだ。町から5分くらいの距離にあった。
「よし、とりあえず入るぞ。ミョンチー、前衛任せた」
「わ、わかりました」
~最寄りのダンジョン~
区分 :ノーマル
タイプ:地下墳墓
人数 :3名以下
難易度:☆
階段を下りてみると一本道が続いていた。壁には松明が一定間隔に並んでいて、ゆらぐ灯が妙な妖しさを演出している。
「よし、進むぞ。奥に行けば敵が居るという話だ」
最後尾のテロテロに押されるように俺たちは通路を進んでいく。そして小部屋にたどり着いた。分岐とかは特に無かった。手抜きダンジョンかよ。
「スライムよ!」
スイカが声を上げた。指さす先には一体のスライム。床の上でプルプルと体を揺らしていた。
「落ち着け、距離はある! ミョンチー、攻撃だ!」
「は、はい!」
ヤバい。緊張する。
あのスライムはどう見ても地球の生物とは別物の何かだ。粘菌とかとも違う。だって顔があるもの。スライムというモンスターを一躍有名にした某ゲームみたいな奴だ。
つーかリアルで見るとキモイな!
っていうかどうやってスキルを使うんだ? 魔法名を唱えればいいのか?
試しに指で鉄砲の形を作ってみる。
「ダ、ダークバレット……!」
俺がそう唱えるとボウッという音と共に黒い弾が発射された。
出た! ほんとに出た! ファンタジー!
俺は今猛烈に感動している!
俺の魔法はまっすぐスライムへと飛んでいき、そして普通に命中した。
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命中!
恐怖:成功
低速:成功
暗闇:成功
拘束:失敗
封印:失敗
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うわっ!? 視界の端になんか出た! ダメージログか!?
「効いてるぞ! そのまま斧でとどめを刺せ!」
「勝てるわよ!」
斧、斧か。どうやって出すんだ? 念じるのか? 出てこい!
俺の手に斧が現れた。マジで出た!
「スキル『突撃指示』!」
テロテロの声が聞こえたと思ったら俺の体が一瞬光った。なんだこれ!? 振り返ってみるとテロテロが杖を俺に向けていた。
「俺のスキル『突撃指示』は味方一人の筋力と速度を一時上昇させる! そしてもう一つのスキル『魔女の手慰み』は魔法の効果を上昇させ消費魔力を抑える杖の召喚だ! これで勝てるぞ!」
お、おお! なんか知らんが勝てる気がしてきたぞ!
今こそ俺の真価が発揮される時!
唸れ、俺の武器!
「てーい!」
俺は斧をスライムへと投げつけた。いや、だって近づくの怖かったんだもん。
「投げるの!?」
スイカがツッコミを入れる間にも斧は回転しながら飛んでいく。そしてスライムの体を見事両断して俺の元へとUターンしてきた。
スライムの体は光の粒となって消えていった。おっしゃあ!
だが俺は大事なことを見逃していた。
回転する斧が、俺めがけて飛んで来る
「ぎゃあああああああ!?」
足がすくんで動けない俺。とっさに手を前にして顔をそむけた。
次の瞬間俺の手は勝手に動き、神懸かり的な正確さで斧をキャッチしていた。多分スキルの効果だろう。
死ぬかと思った……。
「投げるとは思わなかったがよくやった。ナイスだ」
「こっちに斧が飛んできてちょっとびっくりしたわよ」
声をかけてくる後ろの二人。
二人に褒められて俺は少し楽しくなって来た。
このまま3人でダンジョン攻略を続けるのもいいかもな。俺はそんな事を思ったのだった。