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第45話 小さな襲撃者


 俺たちが居るこの町は、広さでいえば結構狭かったりする。中心部である教会周辺こそレンガ造りの建物が並んでいるが、少し離れるともうあばら家ばかり。いかにも昔の農村といった感じだ。


 漫画みたいに町が城壁で囲われているという事もない。申し訳程度の木の柵があって、外はそのまま畑だ。それがダンジョンの隙間を縫うようにいびつな形で広がっている。


 家の数から考えて町の人口は500~600人くらいだと思う。町の外にも小さな集落があったりするが、それを入れてもせいぜい1000人程度じゃないだろうか。



 と、その程度の予想をするくらいには、俺とケムシンは今まで町を掃除して回って来た。


 そして現在、俺たちは教会前の広場で石畳のレンガを引っぺがすという作業に没頭している。


 なぜなら石畳が破壊されているから。


 マオの正体がバレて戦場となったこの広場は、乱戦により相応の被害が出てしまった。ある所はひび割れ、ある所はえぐれて地肌がむき出しとなり、ある所は土魔法により石のトゲが生えたままになっている。


 割れたレンガを1枚1枚抜き取っていく俺たち。剣を手に入れるための労働として、クソ神父から広場を元に戻すよう言い渡されたのである。



「ケムシン、ここもだー」

「了解やー」


 砕けたレンガを見つけたのでケムシンを呼ぶ。走って来たケムシンが召喚したクワをレンガの継ぎ目に刺し込んだ。ゴボッと音がしてレンガが掘り起こされる。



=======================

怒りの農民(ランク2)

 クワを1つ召喚し扱う事が出来る。

 土属性相手に威力特攻。

=======================



「ほんと、すげー簡単に取れるな」

「楽でええわあ」


 引き抜いたレンガは1か所にまとめている。その山はすでに腰の高さくらいにまでなっていた。



「ふう、これで割れたレンガは大体抜き取ったか?」

「結構穴だらけになってしもたな」


 俺たちの前には虫食い状態になった石畳が広がっていた。



「この後どーするんスかね?」


 レンガの山を見てそんな疑問を口にしたのは転生者のシリルさん。ボス祭りではスピード班として活躍していた人物だ。彼女も剣が目当てで清掃に参加したらしい。


「ひとまずダメになったレンガを集めておけとしか言われなかったしなあ……」

「じゃあ終わったって報告しに行くか?」

「そうっスね」


 クソ神父に指示を仰ぐ事にした俺たち3人。とりあえず教会に戻ろうと歩き出した俺たちだったが、



「うっ?」



 ケムシンが突然頭を抱えてうずくまった。そしてカランカランと何かが転がる音。


「どうしたケムシン?」

「何か頭に当たって……」

「石が飛んできたっスよ!」


 石?


 シリルさんが後ろを指さした。その方向を見ると、そこには1人の少年。


「お前ら転生者だな! 成敗してやる!」


 そう言って少年は石を投げて来たのである。


「危なっ」


 避けるシリルさん。その石はうずくまっていたケムシンの顔に直撃した。


「ブゲッ」

「死ねー! 亡者ども!」


 左手に抱えた石を次々投げてくる少年。


「ちょ、なにするんスか」

「うわっ!」

「あかんて! 危ないって! ブッ!?」


 なんだ? 俺たちが何したっていうんだ?


 ステータスのおかげで耐久力が上がっているとはいえ、人に石を投げつけられるのは精神的にかなり堪える。悪意を叩きつけられてる感がすごい。


 だが俺たちは何度も修羅場を潜り抜けて来た転生者。すぐに冷静さを取り戻しそれぞれ襲撃に対処した。


「ここは大人の対応や! まずは話し合って……」


 飛んできた石がケムシンの右目に直撃した。


「目が! 目があああああ!?」

「ケムシーン!」


 痛覚が無くても反応してしまうのはもはや人間の本能だろう。転げまわるケムシンを俺はあわてて介抱した。


 そんな俺たちの前にシリルさんが立つ。


「こうして一緒に働いたのも何かの縁。2人は私が守ってみせるっスよ!」


 おお! なんて頼もしいんだ! さっきから石を全て避け切ってるシリルさんならキャッチする事も可能なのだろう!


「あっ」


 シリルさんの避けた石がケムシンの左目に直撃した。


「目が! 目がああああああああああ!!?」

「ケムシーン!?」

「すみませんっス! 攻撃が来たら避ける癖が!」


 両目に石を受けたケムシンの顔にはパンダみたいなあざが出来ていた。


「よくもケムシンさんを! 敵討ちっスよ!」

「ちょ、シリルさん! ダメですって! 相手は子供ですよ!」


 あとケムシン死んでないから!


 飛び出そうとするシリルさんにしがみつく俺。TSしてて良かった。これで俺が男のままだったら事案になるところだった。


「バーカバーカ! お前らなんか転生者ー!」


 持っていた石を投げ切った少年はそのまま逃げていったのだった。




「何だったんや……」

「転生者って悪口なんスか?」

「さあ?」


(なあマオ、あの子って現地人だよな?)


 とりあえず確認。シリルさんがマオにどんな印象を抱いているか分からないので脳内でやり取り。


『現地人で間違いありません。推定年齢は9歳です』


 この町の人って、転生者にあまりいい感情抱いてないのかなあ……。


 考えても襲撃の理由は分からず……


「ケムシンさん、顔腫れてるっスね」

「……とりあえず教会に行くか」

「痛くは無いけど回復はせんとな」


 俺たちは教会に戻ったのだった。





 が、


「クソ神父ー」

「どこやー?」

「出ないと目玉をほじくるっスよー」


 しーん……


 呼びかけたが返事はなし。外出中だろうか。


 その後しばらく待っても神父は帰ってこなかった。


「どうする?」

「帰ってくるまで待つ?」

「探した方が早いっスよ」


 クソ神父を探して教会を出る俺たち。ん? なんだか外が騒がしいな。


「あっ、あれ!」


 シリルさんが広場を指さした。そこには、


「石なんか投げやがって。殺されたいのか?」


 先ほどの少年と、その胸倉をつかむ2人組の転生者が居た。



 わーお……面倒事の予感。




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