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転生特典に雷魔法チートを要求したら最凶最悪のボスが誕生してしまった(詐欺)  作者: 源平氏
第一章 だから俺は生まれ変わりたいと思った
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第42話 

「本当は……、私も、ミョンチー様のパーティーに入りたいです……」


 泣きながらそう吐露するマオ。俺はそれに笑顔で答えた。


「言えたじゃん。本当の気持ち」


 手を差し出しマオの手を取る。ぐずぐずしては居られない。周囲は乱戦。他の奴らが来る前に早くここから逃げ――







「虹ビーム!」







 反応が遅れた。転生者達と使い魔の軍勢の戦い、その喧騒に紛れて放たれた魔法。背後から飛んで来たそれに気づいた時にはもう遅かった。


 7色の光の束がマオの胸を貫いた。


 マオがゆっくりと倒れていく。



「マオ!?」


 そんなっ、クソが!


 俺はとっさにマオを支えた。胸にこぶし大の穴が開いている。そこから大量に血が溢れ出していた。それが体や俺の腕を伝い地面へと広がっていく。


「マオ! おい! マオ!?」


「……危なかったです」


 マオが薄目を開けた。


「危うく、ミョンチー様を転生者の敵にする所でした」


「何言ってんだよ! 早く治さないと! 回復手段はっ!?」


「持ってません」


 そんなっ!?



 俺は傷口を手で覆った。くそ、血が止まらない!


「ですがこれで良かったです。私を逃がしたらミョンチー様の居場所が無くなります。ミョンチー様はこれから自身の転生に協力してくれる人を集めなければなりません」


「そんなのどうでも良いんだよ! 誰かじゃない! マオが良いんだ!」


「その言葉だけで十分です……」


 マオの体がどんどん冷たくなっていく。そして手足の先から徐々に光に変わっていった。




 マオがボスだと知った時、俺は嫌な予想をしてしまった。


 マップに映っているボスダンジョンの数はおよそ100。イベントに参加してる転生者の数と同じくらいだ。なら、もう転生した転生者のボスダンジョンはどうなった?


 日に日にこの世界にやってくる転生者。転生後もボスダンジョンが残るのなら、この世界にはもっと多くのボスダンジョンが溢れているだろう。


 だから多分、転生した奴のボスダンジョンは無くなるのだろう。


 もしもマオの対象者が転生すれば、マオはダンジョンごと消えて無くなるのだ。





「チクショウ! チクショウ……!」


 マオが徐々に消えていく。そんな中、俺はそんな言葉を絞り出す事しか出来なかった。


 マオが口を開く。


「あなたと一緒に冒険出来て……楽しかった……です」


 マオの体がどんどん光の粒になっていく。


「馬鹿野郎……これからも一緒に行くんだろ? お前は俺たちのパーティーの一員なんだから」


「――! はい」


 最期にマオは、笑ってそう答えた。そして割れるように光に変わり、消えてしまったのだった。





「ごめんミョンチー! ケロンチョ止められんかった!」


 ケムシンが駆け込んできた。鎧が解除されている。一度死んで復活してきたのだろう。


「マオちゃんは!?」


 俺は首を横に振る。


「そんな……嘘やん……」


「チクショウ……」


 俺は、それしか言えなかった。






「やったぞおおおお!」

「ボスを倒した!」

「ガチャを引けるぞおおおお!」


 周囲から歓声が上がった。先ほどまで居た使い魔が消えている。転生者達が狂喜乱舞していた。


 そして俺の後ろにも喜んでる奴が1人。


「やった……、やったやったやった! やった! ついにあのボスを倒した!」


「ケロンチョ……! てめえ!」


 俺は振り返ってそいつを睨んだ。


「やだなー、そんな怖い顔しないで下さい。ボスを倒せたんですよ? ガチャが引けて嬉しいでしょ? もっと喜んで下さいよ」


「ふざけんな! あいつは生きたがってた! それをお前が殺したんだ!」


 分かってる。ケロンチョの言い分は間違ってはいないと。俺達は転生者。ボスと戦うのは必然だ。


 でも、マオには心があった。あいつはNPCなんかじゃない。そんな簡単に殺していい奴じゃない!


「じゃあなんです? あのボスを倒せないまま、転生出来無いままの人が居ても良いって言うんですか?」


「それは……」


 正論だった。俺は言葉に詰まる。


「それに、私があれを倒す事は神が認めているんですよ」


「何を言って……」


 その時、不意にケロンチョの体を光が覆い始めた。


「ようやく、ようやくです。ここまで半年もかかってしまいました」


「なんだ……それ……」


「見るのは初めてですか。これは、まあ簡単に言えば、転生前に流れる特殊演出です」


 転生前の、ってまさか……


「お前なのか……! お前がマオの対象者なのか!?」


「TSというやつです。あなたと同じですね」


 そんな……、マオはこんな奴のために死んだっていうのか!?


「さよならです。遠野さんもせいぜい後は頑張って下さい」


 ケロンチョを包む光が強くなっていく。




 そして





「これは何の騒ぎですかな!?」


 クソ神父が教会から出て来た。



 町を見回すクソ神父。控えめに言ってひどい有様となった町を見て、クソ神父に青筋が浮かんだ。


 なぜか皆一斉に黙った。


 クソ神父がこちらを見た。光っているケロンチョはさぞ目立っていたことだろう。


 クソ神父がこちらに来る。


「ケロンチョ殿、なぜ転生しそうになっているのですかな?」


「ボスを倒しただけですけど?」


「……ミョンチー殿、ケムシン殿、何があったのですかな?」


「ボスが町に来てて、こいつが皆を率いて殺しやがった」


「ボスが町に? ……なるほど、ケロンチョ殿のボスですな?」


 目を細めるクソ神父。


「無効」


「は?」


 ケロンチョがあんぐりとした。


「この転生は無効ですぞ。正規の手段ではありませぬゆえ」


「……ふ、ふざけないで! なんで転生出来無いのよ! ちゃんとボスは倒したでしょ!」


 慌てるケロンチョ。それがお前の素の口調か。


「ダンジョンでボスを倒さなければ駄目ですぞ。こんな大人数で倒しては試練とは呼べませぬ。趣旨に反しますゆえ」


 試練?


「なんでよ! ボスが町に居るのが悪いんじゃない! あなたたち運営側の責任よ!」


「まったくもってその通り。ですのでスキルの配布は無効としない事でお詫びとしますぞ。それと今後はボスがダンジョンの外に出る事が無いようメンテナンスもしますぞ。皆さまそれで文句は無いですな?」


 周囲を見回すクソ神父。


「まあ……、スキルが貰えるなら」

「そうだな」

「私は一向に構わん」


 転生者達が頷く。



 納得出来無いのはただ1人。


「なんでよ! そんなので納得出来る訳無いでしょ!」


 騒ぎ立てるケロンチョ。こうなっては文句を言うしか出来る事は無い。そんなケロンチョにクソ神父はため息をついた。


「それからケロンチョ殿。あなたには罰を与えますぞ」


「はあ!?」


「システムのバグを利用し不正に転生を計るなど言語道断。ケロンチョ殿は今後半年間、ボスを倒しても転生不可としますぞ」


「な!?」


「あなたはやりすぎたのですぞ。では失敬」


 言うだけ言って、クソ神父は帰っていったのだった。




 これが春のボス祭りの終幕、その顛末だった。


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