第29話 強行偵察
「えー、会議の結果、ボス討伐は一時中止することになりました」
新人のマオを連れて教会前に着いたら、壇上でケロンチョがそう宣言したところだった。途端にざわめきだす転生者たち。
「どういうことだ!」
「説明しろホモ野郎!」
「納得いく理由はあるんだろうな!」
「不信任決議すんぞ!」
暴言まで飛び出す始末。どうすんだこれ? どうなるんだこれ?
マオが俺の背中に張り付いてきた。後ろを見るとフードと俺の背中で顔を隠している。
「あの、マオさん?」
「恐怖。この人たちはなんなのですか。あの壇上の人物は何者ですか?」
ああ、暴徒寸前の男たちを見たらそりゃ怖いよね。
「えっと、ここの人たちは俺たちと同じ転生者です。一応仲間なんで、心配しなくていいですよ」
「……しばらくこのままでいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
なんだろう、親近感を感じる。人見知りの才能あるなこの子。
ギャーギャー。騒ぐ転生者一同。
「いいから聞け!」
あ、ケロンチョがキレた。
「私たちはたった一体のボスに! イベントの4分の1もの時間を費やしてしまいました! そして今は夜! 昼間のようには戦えません!」
ケロンチョが熱弁を振るう。
「夜の時間をどのように使うか。それにより得られるスキルの数も変わってきます。私たちは今までと同じように脳死で突撃してて良いのでしょうか? 違います!」
方針を変えるという事か?
「私たちは、勝てるボスを選ばなければなりません。先ほどのボスは勝つのが難しいボスでした。私は反省しました! 数の暴力が有効なボスを狙わなければ意味が無いと!」
近い順に攻略するのはやめるって事か。
「誰か! 自分のボスに勝てそうだという人は居ませんか!?」
しーん……
黒歴史の暴露を恐れてみんな押し黙った。
「居ないなら結構! 探し出すまでです!」
探す?
「今から夜明けまで、4班に分かれてボスへの強行偵察を敢行します!」
ケロンチョの説明は次の通りだった。
1.25人ずつ4グループに分かれてしらみつぶしにボスに挑む。
2.勝てそうなら保留。
3.朝になったら選出したボスに皆で挑む。
夜はボスの情報集めに徹するという事だな。
なおボスは夜でも昼間同様に行動できるのだそうだ。闇夜に紛れて不意打ちとかは無理らしい。
うーん、どうなんだろうこの作戦。分からなくも無いが、他に良い案は無かったのか? いや、俺もアイデアある訳じゃ無いが。
何人か反対する奴はいたが、そいつらの出した代案の方が酷かったため封殺された。
会議に参加してた(っぽい)30人がすぐに賛成したためその他多数も賛成に流れ、俺たちはケロンチョの指示に従うことになったのだった。
と言う訳でケムシンを探し合流! 一緒の班じゃないと嫌だ!
「あれ? 誰なん? その子」
「今日来た新人らしい。困ってそうだったから連れてきた」
「マオです」
「そうなんや。俺はケムシンや。よろしくなマオちゃん」
「B班あと2人で締め切ります!」
「A班満員でーす!」
適当に分かれていく転生者。乗り遅れてしまった。3人入れる所残ってないか?
「D班残り3人だ」
ホスディアがD班の班長になっていた。ステータスがランク5の人たちを差し置いてのこの地位。どんだけリーダーシップ発揮したらそうなるんだよ。すげえ。
「入る! 入ります!」
「俺らでラストやな」
「所属チームが確定」
俺たちはD班になった。
出発前にホスディアが演説を始めた。
「行くぞお前ら! 一番成果を上げた班には他の班から――」
お、なんだ? 何か貰えるのか?
「拍手が送られる!」
拍手だけかよ!
いや、金とかもらっても使い道ないけどさあ。
「他の班に勝ってドヤ顔したいかー!」
「「「おおおおおお!」」」
お前らそれでいいのか。
「D班、出動!」
俺たちは夜の郊外へと出発したのだった。




