第28話 新人
民家の壁沿いに進んでいた俺は謎の人物に遭遇した。建物の角に身を隠しながら表通りを覗いている。
なんだ? 誰だ?
ローブを着ている。背はそんなに高くない。体つきからしておそらく女の人。
そいつは物陰から顔だけを出してきょろきょろと周囲を伺っていた。ただし背後以外。なんだろう、真面目にやってる感はあるがすごいマヌケに見える。だってすぐ後ろの俺に気づいてないもん。
「あの……何してるんですか?」
防犯意識が沸いて俺は思わず声をかけてしまった。驚いたように振り返る相手。
目が合う。その顔に俺は見覚えがあった。昼間俺たちを見ていた少女だ。高校生くらいに見える。
「驚嘆……」
少女が口を開いた。驚嘆?
「私の完璧な潜伏を見破り背後を取るとは。称賛に値します」
「あ……どうも」
なんか褒められてしまった。
というか本当に何してるんだ? イベントに参加してなかったから現地人だとは思うが。
「あの……もう夜ですし、自分の家に帰った方が良いんじゃ?」
「残念ながら私は家屋を所持していません」
町の住人じゃないのか? ホームレス? まるで俺たちみたいだな。
なんかアニメとかでしか聞かないような喋り方してるし。
あれ、じゃあ……
「ひょっとして、転生者だったり、しますか?」
「転生者の定義が不明です」
予想外の返答が来た。転生者を知らないって事か? この町にそんな奴いるのか?
「……もしかして、最近この町に来ました?」
「肯定。本日の昼です」
「日本から来ました?」
「おおむね肯定。道中違う場所を経由しましたが」
確定。やっぱ転生者だ。
「あの、神父から説明聞いたりとかは?」
「未知の人物」
クソ神父の事も知らない?
まさか……
あのクソ神父、新人が来た事に気づかなかったんじゃね!?
あり得る。イベントが始まってから俺たちは滝のように教会で復活しまくっていた。その中に新人が紛れ込んだら見逃されてもおかしくなさそう!
「こちらからも質問。あなたたちは何者ですか? 何を行っているのですか? 観察を続けていましたが皆目理解できません」
かわいそうに。相当不安だったんじゃないだろうか。
クソ神父の説明は穴だらけだが、それでも無いに比べればこの世界の理解に天と地ほども差が出る。実際俺もこの世界に来た直後は混乱しかなかった。
放ってはおけないな。クソ神父のところに連れていくか? いや、あいつの説明はいい加減だ。俺の方がまだ詳しく説明できる、はずだ。
だがそれよりも。
「教会に集合ー」
「休憩終わりだぞー!」
「ケロンチョから話があるらしいぞ。全員集まれ!」
表通りが騒がしくなってきた。説明している時間はないな。
「あの、とりあえず一緒に来てもらえませんか?」
この子もイベントに連れて行こう。参加しないのはもったいない。
「今イベントっていうのやってて、詳しい説明は後でしますけど、とりあえず参加しといた方があなたにとっても良いと思うんで」
「……了解」
少女はいぶかしがりながらも俺についてきた。
「あ、俺ミョンチーって言います。えっと、あなたの名前、分かります? ステータスに書いてあるんですけど……」
「ステータスなら既に把握しています。私の事はマオとお呼びください」
「マオさんですね。あ、一つ大事な事があるんですけど……」
これは初対面の時に言っとかないとな。
「俺、男です」
「意味が不明」




