第19話 春のボス祭り、開催!
デップリンとホスディアが去った後。
俺は、原っぱの上で体育座りをしていた
「はぁー……」
ため息がそよ風と共に流れ消えていく。空は青かった。俺の心は曇天だった。
「ミョンチー、どないしたん? 元気ないな」
「……デップリンの事が、頭から離れなくてさ」
三人がかりで追い出されたデップリン。一人とぼとぼと去っていく後姿を見て、俺はある種の同情を抱いていた。
「俺さ、デップリンを追い出すのが決まった時、少しざまあって思っちゃったんだ」
「あれを追い出したのは仕方ないで。ミョンチーのせいや無いよ」
「そうじゃないんだ、ケムシン。複数人で一人を責め立てる事に、俺はさ、優越感みたいなものを感じてたんだ。多数派である事への安心とでも言えばいいか」
「ざまあくらい俺も思ったで。それくらい普通やって」
「俺さ、中学の時いじめられてたんだ。クラス全員が俺をいじめてた。俺はなんでそんな事するんだって、自分ならそんな事はしないって、そう思ってた。自分は他の奴らとは違うって思って自分を慰めてたんだ」
だがどうだ。多数派に回った俺は、あいつらと同じ事をしているじゃないか。
「そのクラスメイト達は正当な理由があってミョンチーをいじめてたんか? ちゃうやろ? デップリンを仲間にしなかったのは正当な判断や。自分を卑下したらあかん」
「……でも」
「でもじゃないで! 今こうしてミョンチーは心を痛めとる! 立派や! 誰でも出来る事やない! 普通は自分を正当化したがるもんや!」
びっくりした。急に叫ぶから。
「それに、ミョンチーが優しい事くらい、今までの付き合いの中で何回も見せつけられたで。俺の事も助け出してくれたやろ?」
「ケムシン……」
やばい、涙腺がゆるんでる。自分を肯定してくれるだけでこんなにも嬉しいなんて。
……ケムシンにあまり心配かけられないな。
「ありがとな、ケムシン」
俺は上半身で助走をつけて一気に立ち上がった。
「よしっ! 取り合えず次のダンジョンについて考えるか!」
「了解や!」
ステータスはお互い悪くないものを引く事が出来た。次はランク4に挑めるな。
ゴーン、ゴーン……
「なんか聞こえへん?」
「聞こえるな。鐘の音かこれ?」
「町の方からやな」
俺たちがそう言っていると、目の前にウインドウが出てきた。
「うわっ、なになに……春のイベント開催?」
ゲームかよ!? 元からゲームみたいだけど!
「詳細は教会で説明って書いてあるで」
「行ってみるか」
「やな」
俺たちは鐘の音に誘われて町へと入っていった。音の出どころは教会だった。クソ神父が教会のてっぺんにあるでかいベルを鳴らしていた。
「なんだなんだ?」
「イベントだと!?」
「うるせえ!」
「何事だ!?」
「なにやってるんだクソ神父!」
教会前に行くと、すでに他の転生者たちも集まっていた。俺たちは流れるように少し離れた所に陣取る。
クソ神父がベルに手を触れて音を消した。同時に静まり返る転生者たち。クソ神父はてっぺんから俺たちを見下ろしながら、おごそかに口を開いた。
「転生者共がゴミのようじゃ」
「死ねー!」
「ぶっ殺すぞジジイ!」
「くたばりやがれー!」
なぜ開幕煽るんだあのクソ神父は。
クソ神父がスッと手を上げた。今度こそ何かあるのかと黙る転生者たち。
「ルール説明」
「「「なんのだよ!?」」」
いや多分イベントのだろうけど!
「ボスダンジョンの人数制限解除。死んでも戦闘中に復帰可能。戦闘に参加していれば戦死者でもスキルガチャの対象。ただし全滅すれば参加判定はリセット」
え? ……えっ!?
「イベント中はボスを倒しても転生は無し。イベント中はアイデムはロストせず。倒されたボスはイベント終了まで復活せず。期間は明日のこの時間まで。ベルで合図しますぞ」
ざわざわ、ざわざわざわ!
え、つまりこういう事か!?
1.ボスダンジョンも普段は最大挑戦人数が設定してあって
2.しかも普段は死んだら途中復帰出来なくて
3.普段は討伐後に生き残ってないとガチャが引けないというのが
全部解除!?
「春のボス祭り開催ですぞ。Fight!」
ファイじゃねーよ! 唐突すぎて皆ざわざわしてるぞ!
「え、これもう開始なの?」
「ファイッ!」
「スキル……ガチャ……!?」
「ファイッ!」
……ざわざわ、ざわざわざわ!
「う、うおおおおおお!」
「ガチャだ! スキルだ!」
「ボスを倒すぞおおおおおお!」
こうして俺たち転生者の、長い長い24時間が始まったのだった。




