第18話 追放イベント(追い出す側)
「デップリン、なにしとん?」
「姿が見えないと思ったら……」
「大丈夫ですか……?」
大樹のダンジョンをクリアした俺たちは無事ステータスを手に入れた。手に入れたのだが
「なにボサッとしてるんだ! 早く僕をここから出せ!」
デップリンが倒れた木の下敷きになっていた。挟まって抜け出せない様子。
「……」
「……」
「憐れだな……」
ホスディアがポロっとそんな言葉を零した。否定できねー。
「ホスディアさん、さすがに可哀そうなんで、助けてあげませんか?」
「俺もミョンチーに賛成やな」
「……お前達がそう言うなら構わん」
俺たちは何とかデップリンを引き出すことに成功した。
「ふうっ、モタモタしやがって。遅いんだよ」
「やっぱ一回死んどくか?」
ナイフを握るホスディア。うーん、気持ちは分かる。
「ハア? 意味分からないんですけど! っていうかさっきから何様ですか? 僕らに命令ばっかして! お前らもそう思うよな!」
「いやいやデップリン、ホスディアが司令塔するって作戦会議で決めたやん」
「僕は認めたわけじゃないし。なあ、次はホスディア以外がリーダーするのはどうだ? 誰が適任だと思う? 僕とか?」
その自信はどこから来るのだろう。なんなら少し分けて欲しい。
「あかんやろ」
「論外だ」
「それはちょっと……」
当然の議決。
「グループの輪を乱すんは、ちょっとなあ……」
「一緒にいるだけで害悪だ」
「……」
「な、なに言ってるんだよ! 僕は貴重なヒーラーだぞ! 僕が必要なんだろ!?」
俺は思い知った。仲間はスキル構成よりも人格で選ぶべきなのだ。ステータスなんて分かりやすい物があるせいでそれに気づかなかった。
「でもアンタ、自分だけ回復しとったやん……」
「お前に次など無い」
「……」
「なんだよそれ! 手伝ってやったのに!」
「多数決を取ろう。デップリンを追い出すのに賛成なら手を上げろ」
そう言ってホスディアが手を上げた。続いてケムシンも申し訳なさげに。デップリンはもちろん上げない。
3人の視線が俺に集まった。俺が手を上げれば過半数の賛成によりデップリンは追放だ。
デップリンが息をのんだ。すまん、擁護できない。
「賛成です……」
俺は、手を上げた。
デップリンはその後もゴネ続けたが、最後はホスディアに脅されるようにして出て行った。
「デップリンの事は気にするな。転生者にはああいう奴も多い。一々気にしても仕方ない」
「あの……すいません。汚れ役をさせてしまって……」
「俺こそすまなかったな。最後はお前に判断をゆだねる形にしてしまった」
「いえ……それよりホスディアさん、血、大丈夫ですか?」
ホスディアは全身血だるまだ。素振りは見せないが、めちゃくちゃ痛いと思う。
「問題ない。大半の傷はスキルで塞がっている。超越も済ましているから痛みもない」
「超越?」
「ああ、知らなかったか。三大欲求や痛みは一度乗り越えると感じなくなっていく。その状態を転生者の間では超越と呼んでいてな。ケムシンはもう超越しているようだったから知っていると思ってたが……」
「あー、そういえば切腹してからあんま痛み感じないと思ってたわ。眠気とかも来んな」
なにそれ恐っ。でも痛みがないのは戦いに集中できて良いな。でもやっぱ恐っ!
切腹、俺もした方がいいのかなぁ……。
「超越せずに転生できる奴もそれなりに居ると聞く。まあその辺は自由にしたらいいと思うぞ」
「そうやでミョンチー。無理にせんでええよ!」
……後でちゃんと考えよう。
「それとだ、もう一つ大事な話がある」
ホスディアが改まってそうきり出した。
「なんや?」
「なんですか?」
「俺もこのパーティーを抜けようと思う」
え!? なんで!?
リーダーとして頼り甲斐があると思ってたのに!
お、俺か? 俺が何か悪い事しちゃったのか!?
「俺の戦闘スタイルは二人と相性が悪い。見た所お前達はケムシンが守ってミョンチーが攻撃だな? それもケムシンが死ぬまでの短時間に倒し切るスタイルだ。時間をかけて削っていくタイプの俺では役に立てん。他のメンバーを探した方が良い」
「そ、そんな……。せっかく知り合えたのに……」
「そうやでホスディア。それにホスディアがおらんかったら俺ら長期戦出来んで!」
「ダンジョンの種類は無数にある。その中から自分たちと相性がいい物を選んで数を攻略するのが一番効率がいい。欠点を補うよりも長所で押し切れ。それにランク4からはダンジョンごとにパーティーメンバーが変化するなんてザラだ。俺よりいい奴くらい、簡単に見つかるさ」
淡々とそう説明するホスディアの意思は変わりそうに無かった。
「ホスディアさん……」
「またソロに戻るんか?」
「ふ、お互いしばらくは固定メンバーを探す事になるだろうな。名残惜しくなるから俺は先に行くぞ」
「あ、あの……ありがとうございました!」
「ありがとなホスディア! 世話になったで!」
「また会う機会もあるだろう。それまで達者でな」
ホスディアはそれを最後に自分の首を斬り教会へと死に戻っていった。そう帰るのかよ。確かに手っ取り早いけど。
こうして俺たちはまた二人に戻ったのだった。
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名前 ミョンチー
ステータスロット
・どう見てもE(ランク3)
筋力:☆☆☆
耐久:☆
速度:☆☆☆
魔力:☆
器用:☆☆☆
スキルロット
・貧乏性な木こり(ランク2)
片手斧を1つ召喚し扱う事が出来る。
投げた斧がブーメランのように戻ってくる。
・嫉妬深い射手(ランク3)
闇魔法「ダークバレット」を放つ事が出来る。
余剰ステータス
・不器用貧乏(ランク2)
・窮地のネズミ(ランク1)
余剰スキル
なし
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名前 ケムシン
ステータスロット
・バランス重視(ランク3)
筋力:☆☆
耐久:☆☆
速度:☆☆☆
魔力:☆☆
器用:☆☆
スキルロット
・猫の目(ランク1)
動体視力が上がる。
暗闇でも目が見える。
・歩く棺桶(ランク4)
致命傷を受けた場合、全身鎧を装着する。
この鎧は追加のダメージや効果を無効化する。
余剰ステータス
・魔法剣士見習い(ランク2)
余剰スキル
なし
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同時刻。教会にて。
「また、この季節が来ましたな」
神父が祭壇の祭具を並び変え操作していく。それにより祭壇が光を帯び、空中にデジタルチックな模様を浮かび上がらせた。
各地のダンジョンに向け命令コードが飛ばされ、システムのルールが変更されていく。
神父は聖典を手に神の像を見上げた。ステンドグラスからの光を背に、石像は神々しく佇んでいた。
ふっ、と神父は静かに笑った。転生者たちも活気づくだろう。
「春のボス祭り、今年も開催ですぞ」




