第13話 そして次のダンジョンへ
ケムシンの作戦、それは、
・しばらくは動ける程度の致命傷を自分に与える
というもの。そして
・死ぬまでの無敵時間内に悪魔を倒し切る
というものだった。控えめに言って、常軌を逸している。
「ああああああああああああ!」
絶叫しながら自分の腹に刺さった剣を抜くケムシン。傷口が開いたことにより血が溢れ出た。そして数秒後、ケムシンの全身を光が包みこむ。
「ケムシンさん!?」
「だ、大丈夫やっ!!」
光が収まった後には、全身を隈なく鎧で覆われたケムシンの姿があった。
「行くでぇ! 時間がないっ!」
「りょ、了解!」
俺はケムシンを追い抜いてヤギへと突進した。やはりケムシンの動きが遅い。いつ時間切れになってもおかしくなかった。
急がないと!
俺は斧を振りかぶる。俺の攻撃を感知しヤギが悪魔化した。身構える隙を与えず斧を叩きこむ。
「メ゛エ゛エ゛エ゛!?」
悪魔が絶叫する。俺は悪魔に蹴りを入れて斧を引き抜いた。
「もう一発!」
回り込んでフルスイング! 背中に命中!
「ン゛メ゛エ゛エ゛ッ!」
悪魔が腕を振り回した。クソっ! また斧が抜けない!
「ミョンチーちゃん!」
そこにケムシンが正面から突っ込んだ。悪魔の爪を受け鎧が金属音を鳴らす。だがケムシンはよろめいただけでそのダメージには耐えていた。
「ダメージ無効が効いとる! 正面は任せえ!」
「はい!」
ケムシンがしがみ付いている間に斧を引き抜いた。紫色の血がドパッと出る。だがケムシンに比べたらまだ浅い。
もっと!
もっとダメージを与えないと!
こうしている間にもケムシンの鎧の隙間からは血が流れ出ている。元々受けていた傷からの失血は無効化の対象じゃないんだ。
ケムシンが悪魔と正面きっている間は俺は背後から攻撃し続けられる。ケムシンの努力を無駄にする訳には行かない!
もっと早く! いや、もっと効率よく!
「アキレス腱!」
狙いたいのは首だ。でも体格的に狙いにくい。だからまずは立てなくする!
「もういっちょ!」
「メ゛エ゛エ゛エ゛!」
「危ないでっ!」
ドン!
悪魔が後ろ蹴りをした。俺の左肩が抉られ腕が吹っ飛んでいく。
「このっ! お前も切腹しろやあ!」
片足立ちでバランスを崩した隙をつき、ケムシンが剣を突き立てた。そのまま取っ組み合いになり倒れる二人。
悪魔の頭が下がった。
「ミョンチーちゃん早く! もう死ぬ! 目が霞んできた!」
「メ゛エ゛エ゛エ゛!?」
絶好のチャンスだ。今なら首を狙える。いくら悪魔でも首を落とされれば死ぬはずだ。そうでないと困る。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ケムシンの絶叫が響き渡る。急がないと。斧を奴の首に振り下ろすんだ。早くやれ俺。
痛い……、痛い痛い痛い痛い痛い!
痛いっ!!
腕が! 肩が! 無い!? 俺の左手はどこに行ったんだ!?
肩があった場所から血が噴水のように噴き出している!
違う!
ケムシンの努力を無駄にしないんだろが!
「うああああああああ!」
俺は絶叫と共に立ち上がった。
右手は動く! 斧も持ってる! まだやれる!
「くたばれヤギ頭ああああ!!」
俺は、悪魔の首へと斧を振り落とした。
「やった! やったでミョンチーちゃん! 俺もついにステータスゲットや!」
「おめでとうです!」
あの後すぐに出血多量で死んだ俺とケムシンだったが、何とかその前に祭壇でステータスを引く事が出来た。
「これが俺のステータスや!」
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名前 ケムシン
ステータスロット
・魔法剣士見習い(ランク2)
筋力:☆☆
耐久:☆
速度:☆☆☆
魔力:☆☆
器用:☆
スキルロット
・猫の目(ランク1)
動体視力が上がる。
暗闇でも目が見える。
・歩く棺桶(ランク4)
致命傷を受けた場合、全身鎧を装着する。
この鎧は追加のダメージや効果を無効化する。
余剰ステータス
なし
余剰スキル
なし
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そしてこれが俺の新ステータスだ。
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名前 ミョンチー
ステータスロット
・不器用貧乏(ランク2)
筋力:☆☆
耐久:☆☆
速度:☆☆
魔力:☆☆
器用:☆
スキルロット
・貧乏性な木こり(ランク2)
片手斧を1つ召喚し扱う事が出来る。
投げた斧がブーメランのように戻ってくる。
・嫉妬深い射手(ランク3)
闇魔法「ダークバレット」を放つ事が出来る。
余剰ステータス
・窮地のネズミ(ランク1)
余剰スキル
なし
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「やっと……やっとダンジョンをクリアできたわああああ」
「な、泣くんですか!?」
ケムシンまさかの男泣き!
「だって、だって途中で見捨てられるかもって、ずっと不安で」
「何言ってるんですか。ケムシンさんが居たから、だから勝てたんですよ! ケムシンさんが必要なんです。これからもずっとです!」
「ミョンチーちゃんめっちゃ喋るやん」
またコミュ障発揮しちゃうぞ?
「本当にありがとうな! 俺めっちゃ頑張るから! これからもミョンチーちゃんの役に立つから!」
「一緒に頑張りましょう!」
楽しかった。すっげー嬉しかった。ケムシンと一緒ならきっといつかボスだって倒せる、そんな確信が俺にはあった。
「ミョンチーちゃん! 俺新しいステータスの性能試してみたい! ダンジョン行こう!」
「賛成!」
そうして俺たちは次のダンジョンへと、足を踏み出したのだった。
「ケムシン殿、剣がもう無いようですが宜しいのですかな?」
「「あ……」」
……まずは清掃活動からだな。
俺たちはすぐさま掃除に取り掛かり、そしてまた剣を2本手に入れたのだった。




