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最後の助け 01

 みんなして、ようやくミワの家に着いたはよかったが、さすがに今度ばかりはUNOすらやる元気もなかった。

 ミワはすぐに、サエちゃんのうちに電話しようとしたが、彼女がとうとつに

「サエちゃん、おうちの電話番号しらない」

 とそうのたまわった。

 持っていたゲーム機で家族と通信ができるかもしれない、とスガオが言ったが、さすがにあのすれ違い通信を見てしまった後では、誰もゲーム機を開く気にもなれなかった。

 それに『消えて』しまった子供たちのことも、どうしたらいいのかミワにはまるで見当がつかない。

 警察に連絡しよう、スガオもそう言いかけて眉をくもらせる。

 確かに昨夜、パトカーも一台上っていたし、警官らしい制服も見かけた。

「オレらで何とかできる範囲でも、ないのかも」

 スガオの意見に誰も反論できない。


 結局、ヤベじいが山から戻るのを待つことになった。


 ミワが急に気づく。

「ミチエちゃんたち、それにスガオくんもおうちに連絡した方がいいんじゃない?」

「だいじょうぶ」代わりにルリコが答えた。

「みっちゃんたちは電話で、夏休み最後の打ち上げで、うちに泊まるって連絡してあるし」

 スガオもルリコの顔をみてから

「オレもルリコに言われて、うちに電話した、夏休みの課題が終わらないからヤベさんちのケンちゃんにみてもらう、って」

 でも課題一式家に置いたままなんだよね……帰ったら何言われるか……スガオの顔は雲っている。

 家に帰っても、たぶん課題なぞ手につかないだろうが。


 それでも、あのとっさの状況でルリコはやはり、ソツがない、たいしたものだ。

 ミワは改めて、ルリコの横顔に目をやった。


 ミワはありったけのタオル類をかき集め、みんなしてシャワーを順番に浴びることになった。

 まずはツヨシと姉のミチエとが入り、次にサエちゃんの身体はルリコが洗ってやった。

 ルリコが済むと次はスガオ、スガオはずいぶん時間がかかった。しかも湯の音も止んでいる。

 ツヨシに見に行ってもらうと、なんと、ため湯にして、風呂桶の中で爆睡していたそうだ。


 ケンイチはあっという間に済んだようだ。髪からぼたぼたと水を垂らしながら脱衣所から出てきて、ルリコに叱られていた。

「おにい、相変わらず頭拭かないんだから! 床が腐っちゃう!」

「はいはいすんません」

 ミワはくすりと笑う。


 ようやく、日常の欠片が戻ってきたようだった。


 急に、空腹に気づいた。


「何か食べる?」

 その質問に、ミチエの「たべない」という答えとケンイチの腹がぐう、と鳴るのが同時に響く。

 ミチエが思わず笑いだした。

「やっぱり食べた方がいいかな、何がある?」

「カップめんしかないけど、あと、カップやきそば」

「ぼく、カップめん」

「じゃあ、ツヨシと私とで、半分こ」

「朝からラーメンかぁ、もたれないかな」

 スガオはぶつくさ言いながらも

「オレはヤキソバ」と顔を上げた。

「ラーメンもヤキソバも、もたれ具合いっしょじゃないの?」

 ルリコに突っ込まれて、スガオは口を尖らせて反論する。

「スープがない分、もたれないの!」

「はいはい。あ、ミワちゃん、手伝うよ」

「ああ、いいって」立ち上がりかけたルリコを軽く押しとどめる。

「休んでて」

 ルリコはすなおにすとん、と尻をおとした。夜通し気を張っていたのだろう、すでに目がとろん、としている。


 結局、オーダーは四個となって、ミワは早速キッチンで湯を沸かし始めた。

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