大人たちとの対決 01
そのうち、よろめくような光がぼんやりと、そのうちにふたつずつ並んで、木々の影を上ってくるのが見えた。
遅れてエンジンのむせび泣きが耳に届いた。
どうも、軽トラックらしき車が三台ほど、続けざまに上ってくるようだ。
ミワたちは、幹の隙間から灯りが近づいてくるのを見守っていた。
そのうち、少し離れたところで車は停止した。
エンジンはかけっ放しのようで、遠雷のごとき低いうなりが重い空気の中響いている。
コンクリートをぱたぱたと叩いて、懐中電灯が大きくふらつきながらいくつも近づいてくる。
「おおい、そこにいるのか?」
どこかで聴いた声だ。
灯りのひとつがまともに目に飛び込み、ミワはたまらず顔をそらした。
「そこにいるのは、何人だ?」
「誰がいるんだ?」
続けて聴こえた声で、ミワも気づいた。
元白鳥の自治会長・桑原と、団地の梅宮町内会長、それに元白鳥小の篠原教頭も駆けつけたようだった。他にも三つ四つ、後から灯りがついてきている。
一番後ろには、赤色灯が点滅している。パトカーも一台、混ざっているようだ。
「もうだいじょうぶだ、降りてこい」
桑原の声が優しくなった。
「何人、そこにいるんだ?」
今度の声は教頭のようだ。
小学生たちが、不安げにミワをみた。
正直に答えていいのかどうか、ミワにも分からない。
ミワについてきた子たちもそのようだった。
やはり同じように、ここに率いてきたミワと、倒れたままのケンイチをみている。
ミワはごくりとつばを飲んで大声で叫んだ。
「朝まで、降りないから」
はるか足もとから、どよめきに似た声が聞こえる。非難めいた声もした。
「オマエ誰だ」
聞いたことのない声が、そう問いかけた。
「他所の小学生もいるんだろ? 親ごさんが心配しているんだ、すぐ家に帰すから、ここに降りてくるよう言いなさい」
「すぐ雨も降ってくるぞ」
桑原の声が重なる。「早くそっから降りて来なさい」
固まった小学生たちが、落ちつきなく身じろぎしている。
「ねえ、もう帰ろうよ」
「オトナも来たから、もうだいじょうぶだよ」
「雨」
誰かの声と同時に、ぽつ、とミワの頬にも細かい水滴が当たった気がした。
「早く降りて来なさい、家まで送るから」
大人たちは明らかにいらついてきたようだ。
奥の方でしゃがみこんでいた一番小さいらしい女の子が、ぽつりとこう訊いた。
「ねえどうしてあの人たちはここまで上がってこないの?」




