UNO大会 01
ヤベじいに話を聞いてもらっただけで、かなり心の重石は取れた気がした。
しかし、物知りで地元にも詳しいヤベじいでも、ミワがどうしたら良いのか、すぐ答えは出ないようだった。
「電話にな、その、目玉と文字が出た、っていうのは……」
ミワのスマホをぐるぐると手のうちで返しながら、つぶやいている。
「今まで直接、あのバアサンから何かされた、っていう話は聞いたことはないしな」
でも呪ってやる、ってしょっちゅう言っているんでしょ? とミワが強い口調で問うたが
「まあ、あのバアサンはたぶん毎日そう言ってるだろうし」
と、煮え切らない返事だった。
それから意を決したように、顔を上げた。
「俺がちょっくら、行って来るから」
目玉ババアと直接対決すると言う。
「ミワちゃんとケンイチは残っておれ。結果はすぐに知らせるから」
何を話すのか、どういう態度に出るのかミワが聞く暇もなく、ヤベじいは立ち上がって外に出て行った。
「だいじょうぶかな……」
ミワは意味もなく部屋の中を歩き回る。
「あの人、誰ともまともに話をしないんでしょ? 大丈夫かな、ヤベじい」
「まあ、じいさんのことだから、やばかったら走って逃げてくるさぁ」
ケンイチは呑気に出してもらった冷茶をすすっている。
しばらくしてから、ヤベじいが何とも言えない表情をして帰ってきた。
「どうだった目玉ババア」
ケンイチが立ち上がりかけたのを制してから
「まあ、相変わらずだったがね」
ヤベじいは頭を掻いている。苦笑いなのだろうか。
しかしすぐ真顔に戻る。
「菅田吉乃さんのことは、驚いてたな。まさか、と」
「でもあそこに、カラスがいたんです!」
ミワは急に思い出した。
カラスが、道案内をしていったのだ、病室の窓べまで。
「あのうちのカラスじゃ、なかったんですか?」
「ああカラスね」
ヤベじいはまた頭を掻いている。
「バアサンが可愛がっているのとは違うだろう。あのうちで見たの、その辺のヤツよりちょっと小さいだろう?」
「……」
確信がないが、そう言われればそんな気もしてきた。
カラスなんて大きい小さいなんて無くて、どれも同じだと思っていたから。
「それに羽も少し曲がっていて遠くまでは飛べないんだ」
「カーコが? そうなんですか?」
「カーコか、確かにそう呼んでるな。巣から落ちたのをバアサンがずっと育ててるんだ」
しばし遠い目になってから、それはともかく、と、ヤベじいがミワに向き直った。
「菅田さんのことは自分のせいではない、とバアサンはきっぱり言い切ったよ。自分は、子どもには害をなさん、ってさ」
俺は呪われたけどね、とケンイチが不服そうに口を尖らせる。
ちらっとケンイチを見て、ヤベじいはまたミワをみる。
「心配なのは、ミワちゃんだ。スマホの画面については、心当たりがあったみたいでニヤニヤしてたがね……
『代わりが来た』って菅田さんが言ったのが、気になるって」




