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むかしばなし

 其の一・オオタル


 大山には滝がいくつかあって、その中の一番大きな滝は『オオタル』とか『オオタキ』とも呼ばれている。

 オオタルの裏側には洞窟があって、入口はとても狭いのだが底無しだという。そこには血吸いコウモリ(一説には人喰いカラス)が住みついていて、洞窟に入った者は生き血を抜かれて(または目玉をくり抜かれ)二度と出て来られない。



 其の二・津久根島(つくねじま)神社


 大山の中腹に、津久根島神社という小さな神社がある。

 もちろん誰も住んでおらず、神事のたびに近くの禰宜(ねぎ)がやってくる。

 しかし江戸時代の初めまでは、ここに黒装束の一族が代々住みついていたのだと言う。

 地元の人たちはかなり昔から彼らを『クロシュウ』と呼んでいた。

 神社に住み着いている彼らはしかし神事を執り行うことはなく、人が集まる時には揃って更なる山の奥に姿を消し、誰もいなくなるとまた出てきたのだそうだ。

 彼らがいつ頃どこから来たのか、どんな連中だったのか、いついなくなったのかについては詳しく知る者がいない。

 ただ、彼らが昔住んでいたという境内近くに、小鳥の羽や骨が沢山散らばっていたのを見たという人もいる。



其の三・豆腐石


 大山の滝近くには、自然と四角くなった石がたくさん見られる。大きさは一抱えほどというものが多く、黄色っぽいものからだいだい色のものまである。

 売れば金になると思った連中がいくつも拾って帰ったが、たいがい病に倒れたり思わぬ事故に遇ったり家が不幸になって潰れる。

 または、その連中が他の女子どもに害をなし、結局は自身も滅びてしまう。

 村のごうつくばりで名を馳せた権蔵という男が、いくつも拾ってきて大八車で売りさばこうとしたが、あまりの重みで木橋が落ち、権蔵は車の下敷きになって溺れ死んだと言う。

 大むかし、山には多くの修験者が入って修業をしたと言うが、彼らが山で遭難したり、修行の最中亡くなったりして、黄色い石に姿を変えたという話もある。

 津久根島神社の付近にも豆腐石が多いところがあって、クロシュウのなれの果てではないか、とも言われている。



 其の四・サクラヤマのぼれ


 地元でよくやる遊びに、『サクラヤマのぼれ』というのがある。

 まず鬼がふたりいて、ひとりはみんなを追いかけて捕まえる。

 もうひとりは地面に描かれた大きな丸、『サクラヤマ』と名付けられたすぐ近くに陣取っている。

 捕まえる時に鬼は「トリとーった、サクラヤマのーぼれ」と声をかける。

 捕まった子たちは、地面に描いた『サクラヤマ』に詰め込まれる。

 丸に入れられた子たちが多くなると、縁に近い場所にどうしても寄ってしまうことになる。

 そこを、更に鬼のどちらかが「取った!」と触ると、その子が次の鬼になる。

 逃げ回っている子のうちの誰かが、サクラヤマに捕えられた子どもの誰かに触れることができれば、その子は外に出ることができる。

 その時、『雨止ぁんだ』と叫んでタッチする。

 しかし、見張りの鬼に捕まってしまったら、丸の外から助けに来た子も捕えられてしまう。


 サクラヤマ、と呼ばれる場所が実際、津久根神社からあまり遠くない山の上にある。

 山の中なのに、石垣が積まれた上が広場程度に平らになっていて周りに桜が植えられている。 

 元々、何かの建物があったらしいのだが、不浄の場としてしか、みなの記憶に残っていない。


 遊びはそこの故事に由来しているらしい。



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