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序
誰もそこからは、逃げられない。
あの場所に引っ越した時からずっと……そうずっと、ワタシは気づいていた。
昔、よく遊びに行ったお父さんの実家で、ワタシはよく聞かせてもらったものだ。
元白鳥が『白鳥村』だった頃のお話を。
たいがいは、おじいちゃんから。それから、お盆や暮れのお餅搗きやお正月、お葬式や法事の時に集まってくる、ここ出身の親戚のお年よりの人たちから。
あと、泊まっている間だけ友だちになる、近所の子どもたちから。
白鳥村には、なぜか不思議な伝説や民話、言い伝えのたぐいが多い。
特に、大山のお話が多かった。
そしてたいがいが、ちょっぴり……ううん、けっこう、怖い。
たとえば、