録二拾荷
中庸を重んぜよ、その果ては何か。
はてな答えうる凡夫はいない。
無尽蔵に伸びるその手は自粛も知らず、母をも犯し、殺す。
その因子は何なのか。
欲なのか。
満たせば満たすだけ満たし尽くし、満たし尽くせない欲なのか。
衝動なのか。
駆られれば駆られるがまま刈り尽くし、刈り尽くしつつある衝動なのか。
誰もわからない。誰もわからない。
自らを幽閉する檻を創りあげた者にも
無自覚のまま一生を牢の中で過ごす者にもわからない。わかろうとしない。
わかろうとしないのはわかりたくないから。
抽象をいくら練ろうとそれは妄想。空虚な因果。神は不在。虚無の知に喜びを覚え、現を抜かし我が生命すら喰らおうとしている。
然し鍵は折られた。否、鍵はない。乗りかかった船でヒトとして、私の味を感じず生きなければならないのだろう。余る便利が行き交う世界で。