さすらい猫、100年の孤独(2)
さすらい猫は、魔女の魔法で
可憐で冷たい、少女の姿で
死ねないからだを引きずって、
街から街へと、さすらう運命。
冷たい雨が、降っている。
切り立つ岩場に、降りつける。
こわいくらいに、黒い海、
さすらい猫は、無論ひとりで、
波間に浮かぶ、鳥をみていた。
寄せては返す、波の音、
激しく砕ける、岸壁に
天が悔しむ、涙あり
流れ着く夢、吹き溜まり。
さすらい猫の、瞳には、
赤い怒りが、まだ燃えている。
罪を犯して、罰から逃げた
自分の昨日を、許せない。
誰かこの海、抜き手を切って、
生死を賭して、泳ぐ強者、
喉切り避けよと、叫んだ叫びは、
それでもそいつの、耳には届かず
眼で射抜きたいと、睨んだ眼からは
心の痛みの血涙、流れる。
冷たい雨が、血を洗う。
冷たい雨が、降り続く。
冷たい雨は、さすらい猫に、
キスするように、降りしきる。
白く尖った、冷たい、キスを、
隠しもしないで、降らせ、続ける。
さすらい猫の、夜明けには、
だれも、立ち会えない、運命。
さすらい猫は、苦笑い、
しゃがれた声で、むかしの歌を、
歌いかけたが、口、つぐむ。
さすらい猫の、歌声は、
他の者には、聞かせない。
さすらい猫の、歌声を、
聞いても良いのは、彼女だけ。
天へ昇った、彼女だけ。
冷たい雨が、降っている。
切り立つ岩場に、降りつける。
こわいくらいに、黒い海、
さすらい猫は、無論ひとりで、
波間に浮かぶ、鳥だけ、みていた。




