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剣聖と覇拳

試しに書いてみました。

ではどうぞ!!

あちらこちらで戦火が上がっていた。

どこもかしくも大規模な戦いが繰り広げていた。


ーーあちらこちらに折れた剣や槍が刺さり


ーーそれらと同じ数ぐらいの死体も転がっていた


それもそのはず、今日は連合王国軍と魔王軍との最終決戦なのである。長年に渡って膠着状態が続いていたのだが1人の勇者の参上によって連合王国軍に徐々に優勢になりつつあった。


そのため今回の戦いは連合王国軍が魔王軍の本拠地に攻め込んでおり、魔王軍に引導を渡すであろうと思われていた。



各地で最後の戦いが続いている中でこちらでも最後の決戦が始まろうとしていた。


そこには銀髪の男性と赤髪の女性が周りに味方を立たせずにお互いただ1人で立っていた。


「来たわね、“剣聖”ウェン」


最初に口を開いたのは赤髪の女性であり、名をエンラという。

姿こそ人間の姿をしているがれっきとした魔族であり魔王軍の幹部の一翼を担っている。戦い方としては彼女自身の身体能力を活かした近接戦闘を得意とする武道家タイプである。

そしてその戦い方と荒々しい性格から付けられた二つ名は“覇拳のエンラ”であった。


「ええ、貴方との決着をつけに来ました。

“覇拳”エンラ」


とエンラに呼びかけられ答えたのがウェンである。

今回の連合王国軍の勝利の立役者である勇者パーティの1人であり、自分の身丈と同じぐらいの長さの刀を使っている。彼はその刀の腕と謙虚な性格から“剣聖”と呼ばれている。


「まさか本当に1人で来るなんてね。あんた私が仲間を連れて来るなんて考えなかったのかしら?」


「正々堂々を良しとする貴方なら事前に自身が言った事は必ず守ると思いましたからね」


「フン、随分と私の事を信頼してくれているじゃない」


「まぁ貴方とは一番対決しましたのでそれなりに貴方の性格やらを理解しているつもりです」


ウェンとエンラは勇者パーティと魔王軍が戦う場合には必ずといってもいいぐらい戦っている。

そのためお互いどの様な性格なのかを充分理解していた。


「……あんたみたいな性格の人間ばかりだったらこの戦いもこんなにも長くならなかったかしら」


「奇遇ですね、私も貴方みたいな性格の方々が魔王軍に沢山いてくだされば……もし貴方と私が同じ軍でしたら親友になれていたかもしれませんね」


ーーお互い属している軍が敵では無ければ遅くまで互いに稽古をして、稽古後は町の居酒屋で酒を一緒に飲んでいる関係だったのかもしれないーー

そんな感情がお互いの心を過ぎった。



「だけど現実は王国軍と魔王軍でしょ?

ーー私が言いたい事分かるわよね?」


とエンラは拳を構えた。

その様子を見たウェンは自身が持っていた刀を抜き、エンラに向けて構えた。


「ええ分かっていますとも。

ーー剣士ウェン、いざ参ります!!」


「“覇拳”エンラ行くわよ!!」


ーー永きに渡った因縁にお互い終止符をうつため

今、最後の戦いが始まろうとしていた。






キン!! キン!! キン!!


「炎脚!!」


シュッ!!


「甘いですね、風刃!!」


スパッ!!


お互いの技が肉薄していた。

流石互いのその軍の中でも上位にいるだけあってお互いの技は中々決定打とはならなかった。


「あんたこそ随分甘い攻撃してくるじゃない。

そんなんで私に勝てると思ってるのかしら!!」


「えぇ無論この程度で倒れるとは思っていませんとも!!

ではこちらはどうですかーー風剣!!」


ウェンはそう言うと刀を大きく振るい、風の衝撃波をエンラに向かって放った。彼女はその衝撃波をかわしながらも笑っていた。


「いいじゃない!! いいじゃない!!

燃えてきたわ好敵手!! ーーバーニングラッシュ!!」


とエンラは拳に炎を発生させてそれをウェンの方に向かって無数に放ってきた。

ウェンはそれを刀を使いはらいながらもはらいきれなかった炎をよけていた。


「くっ、流石魔王軍幹部次席の事はありますね……

簡単には勝たせてくれませんか」


「当たり前じゃないせっかくこんな本気が出せる好敵手とやりあえるのよ? すぐに終わっちゃつまらないでしょ?」


「……ふっ、貴方も私と同じですか。

だからこそこの勝負にやる気が出るものですね!!」


「行くわよ!!」


「こちらもやらせていただきます!!」



それからしばらく経った。

だがしかし2人の戦いに決着はつかなかった。

お互い、技を繰り出しては相手が繰り出した技を避けておりその駆け引きがずっと続いていた。


「ねぇウェン」


「何ですか?」


「そろそろ決着つけないかしら?」


「いいですね、私も今同じ事を考えていました。

いい加減飽きてきましたしね」


「フン、じゃあ最後に私の最大の技で決めてあげる」


「では私も自分が撃てる最大の剣技をお見せしましょう」


と言うとエンラは自身の拳に力を溜めて、ウェンは刀の持ち方を変えてそれぞれ最大の技を放つ構えをした。


「「行くわ(行きます)好敵手!!」」


お互い地面を蹴り、相手の方に向かった。


「神もろとも全てを灰にしろ!!」


「明日を導く光のように勝利を照らせ」


「レーヴァティン・コロナ!!」


「奥剣・八咫烏!!」



ガン!!

ーーお互い持っている最大の技を相手にぶつけた。








「くっ……流石あんたね……」


エンラは悔しそうにそう呟いた。

彼女は片膝を地面につけ、血だらけの手をもう片方の手で押さえており、先程のお互いの持てる最大の技を放った勝負はどうやらウェンの方に軍配が上がった。


「いえいえ、貴方も充分凄かったですよ。

今回は紙一重で私が勝てただけです……ふぅ……」


と勝ったウェンも最大の技を放ったためか体力は立っているのがやっとだった。


「フン……紙一重って良く言うわよ……あんたらしいわ」


と言いながら今回の勝負で始めてエンラは笑った。

負けたのは悔しいがこの好敵手に負けたのならしょうがないし、悔いはないと思うと不思議と笑いがこみ上げてきたのであった。


「一応お聞きしますが、まだやりますか?」


ウェンは確認のためにエンラに尋ねた。


「いや、私の負けでいいわ。あんたに負けるなら悔いはない……あぁとうとう負けたか……」


「良かったです、流石にこれ以上戦うとなると私も身体がもちませんからね……」


「ねぇウェン」


「どうしましたかエンラ」


「これから私をどうするつもりかしら?

敗者だから勝者の言うことは聞くわ。

欲しければこの首あげるわ」


とエンラは自分の首に手を当ててそう言ってきた。

すると彼はいつもの様に優しい微笑みを浮かべながら


「いやいや貴方程の腕を持っている方を殺すなんてもったいない事はしませんよ。私達と一緒に人間と魔族が手を取り合って行ける世界目指しませんか?」


「あらら意外ね。貴方以外は私に恨みを持っていそうなのにね?」


「私の仲間の勇者が言っていたんですよ。

“これからは過去のいざこざは無しにして仲良く手を取り合って一緒に未来を築こう”と。

私はそれに共感して彼の仲間になったんですよ」


ウェンは今まで何度も魔王討伐の誘いを様々な者から受けてきたが一回も首を縦に振らなかった。誰も彼の気持ちを動かす事は出来なかったのだ。だがこの勇者は違った。


「……あんた以外にそんな考えを持っている人間がいたなんてね。ある意味驚きだわ」


「今の仲間達は全員、彼の思想に共感して揃いました。

ーーだからエンラ、貴方も私達に力を貸してくれませんか?一緒に未来を切り開いていきましょうよ」


とウェンはエンラに手を伸ばした。

その手を見た彼女はやれやれといった感じで


「まっ、敗者は勝者の言うことを聞くわ。

このエンラ、あんたらに力貸すわ」


その手を握り立ち上がった。


「あっ、その……立てますか?」


ウェンは彼なりに気を使ったのだがエンラはその発言を聞くとムッとした表情を浮かべた。


「……普通怪我させた本人がそれ言うかしら?」


「すみません……」


エンラが若干不満そうに言っているとウェンは申し訳無さそうに言った。戦場では強い割にはこういう時に気の効いた言葉を言えないのが彼である。


「いいのよ別に。ちょっと肩借りるわ」


「分かりました」


と2人はゆっくりとさっきまで戦っていた戦場から離れていくのであった。





ウェンがエンラに肩を貸しながらしばらく歩いていると


「もういいわ」


「いいのですか?」


「まぁ元より足は怪我してなかったし、これからは自分の足で歩いて戦場を出れるぐらいはできるわ」


と言うとエンラははウェンの肩から手を離すと普通に歩き出した。彼女の説明通り、手には怪我を覆ったが足には怪我をしていなかったのでそこまでのことでは無かったと思ったウェンであった。


「そうですか、なら良かったです」


「ところであんたの仲間達もまさか幹部に降伏を呼びかけているのかしら?」


エンラは思い出した様に言ってきた。


「えぇ多分そうだと思います。

なんせそれこそ殺してしまったら彼の考えに反しますから。できる限りは降伏を勧めますが、どうしてもの場合は決着が着くまで戦いをするのでしょうね」


ウェン以外もそれぞれ幹部級の連中と戦っているが事前に話し合いで降伏を勧める事を決めていた。

なると今頃彼らも同じ様に戦っているか、もしかしたら既に勝負に決着がついているのかもしれない。


「あんたも大概だけどあんたの仲間も大概ね……」


「皆さん良い方ですよ

ーーなんて話をすれば……」


と前の方から王国の兵士達が一斉にこちらをやってきた。


「ウェンです。他の皆さんは?」


「……」


「どうか致しましたか……皆さん?」


だがウェンの問いかけに反応せず、何故か彼らは武器を持ちながらウェン達をを取り囲む様に隊列を作ってきた。


「……ウェン、これがあんたが言っていた“良い方”かしら?」


エンラが皮肉を込めて言ってきた。


「いえそんなはずでは……。

皆さん、これはどう言う事ですか?」


と兵士の中から1人隊長格みたいな人物が出てきて、ウェンの質問に答えた。


「ウェン、お前に反逆罪の罪で捕らえる」


「何……?」


「お前を含む勇者一行は魔王軍と共謀して王国を崩壊させようとしていただろう」


「私達が……!? そんな事するはずがないでしょう!!」


いつもなら滅多に声を荒げないウェンであっても今回ばかりは荒ぶって感情的に声を出していた。


「お前達は今回の魔王軍討伐の機に乗じて、我らが王の首を取ろうとしていたと証言が出ている」


「そんな証言を誰がしたんですか!!」


「勇気ある証言者をわざわざ罪人に話す必要は無い。

ーー何よりもお前は魔王軍の幹部が生きているではないか? お前程の実力があればそんな奴殺せたであろう。

まぁ元から手を組んでいたなら生きているのに納得出来るかもしれないがな」


と隊長格の人物が嘲笑う様に言ってきた。


「あんた話を聞いていれば言いたい放題言って……!!」


「エンラ、落ち着いてください。

私は彼女が死なせるには勿体ないと思ったから殺さなかっただけですよ」


「ほぅ、それは本当か? その女に誑かされたのでは?」


「貴方……口を慎みなさい!!

いくら何でも彼女に失礼でしょう!!」


「まぁ我らにはどうでもいいのだが。

ーーどうせここで死ぬのだからなぁ!!」


「……あんた達、ウェンをさっき捕まえるって言ってなかったかしら?」


エンラが睨みつける様に言うと男はやや怯えながらも


「あぁそれはだな、王からの命令で

“見つけ次第殺してもよい”

とご命令をいただいたのでな

ーー城に持ってくるものは“生死問わない”そうだ」


「……待ちなさい、他の皆はどうしたのですか?」


ウェンは他の仲間達の安否が気になった。

自分がこういう状況に陥ったのだから他の皆もそうなっているに違いないと思ったからだ。


「あぁ奴らな……全員捕まえた。

ーーまぁ捕まえる際に少しいざこざがあってな

“しょうがなく”殺した」


「嘘、ですよね……」


「こちらとしては全員に王の裁きを受けさせようとしたのだがあっちがめちゃくちゃ抵抗してくるものだから仕方なくだがな、これは正当防衛だ」


「あんたらやってること魔族より酷いわね……!!

自分達の仲間を裏切ってよくも平気でいられるわね」


「フン、奴らなど仲間などと思ったことは無い。

今では罪人なのだから完全に敵になったがな。

ーーやれ」


「ーーエンラ!!」


「えっ?」


とウェンは急にエンラに地面に押し倒した。


「ち、ち、ち、ちょっとあんた何してんの!?

ここ戦場って分かってーー

ってウェン……あ、あんた?」


「……お怪我はありませんか……? くっ……」


そこには左腕からおびただしい量の血を流しながら彼女の上から覆いかぶさっているウェンの姿がいた。

彼の横には彼の腕の出血の原因にだろうと思われる槍が刺さっていた。


「あんた大丈夫なの!?」


「わ、私はな、なんとか……エンラは?」


「私はあんたが庇ってくれたから無事だけど……」


「なら良かったです……痛たたた……」


「ハハッ!! やはり剣聖ウェンは魔王軍の幹部と繋がっていたという噂は本当だったか!! ほらみろ幹部を庇って自分が怪我をしているぞ!!」


「あんたら仲間にこんな事して恥ずかしくないの!?」


「罪人に情けをかける必要はあるわけないだーー」


「ーー風圧斬……!!」


ビュン!!


突如2人を囲んでいた隊員数人が強風によってなぎ倒される様に飛んでいった。

声の方を見ると怪我をしていない方の腕で刀を構えているウェンがいた。


「何を勘違いしているのか知りませんが貴方方は私を傷つけただけで勝ったつもりのようですがまだ私は負けていませんよ……!!」



「ウ、ウェン!! あんたやめなさい!!

怪我しているのよ!!」


「ーー逃げてください」


彼は彼女の見ずにそう言った。


「えっ」


「貴方なら今の状況に乗じてこの場から逃げれるでしょう。私は……もうこんな感じですからね」


とウェンは自分の片腕を目で見て自嘲気味に言った。


「だ、だけどあんたは……」


“逃げれないじゃない”と言いかけたが


「最後に綺麗な女性を助ける事が出来たなら既にあの世に行ってしまった仲間達に胸を誇ることが出来ます」


「……」


「だから貴方だけは逃げてください。

貴方が安心して逃げれるだけの時間稼ぎは致します」


「……」


「ほら行ってくださいエンラ」


「断る」


「いやいや何を言っているんですか!?

でないと貴方も死にますよ!!」


ウェンとしてはさっきの発言は結構勇気を振り絞ったのだがその発言はいとも簡単に拒否された。

……彼にとっては怪我をしたことよりも自分の勇気を振りしぼった発言を拒否された方が精神的にショックであった。


「私が助けられたまんまあんたに死なれるのは癪に触る。

というかムカつく」


「それぐらいいいじゃないですか!?」


「だからあんたも逃げるわよ!!

ーー炎連脚!!」


と彼女は足から炎の衝撃波を飛ばして先ほどウェンの攻撃によって穴があきかけた場所にいた隊員数人を飛ばした。


「お、お前ら狼狽えるな!! 敵はたった2人だぞ!!

この状況を逃すな!!」


「行くわよ!! しっかり捕まっていなさい!!」


と言うとエンラはウェンを担いだ。


「えっ!? ち、ちょっと一体何をするんですか!?」


「逃げるに決まっているじゃない

ーーヒートバウンド!!」


エンラがウェンを掴んだままそう叫ぶと、彼女の身体は空高く飛び上がった。


「跳んだ!?」


ウェンは今、自分の身に何が起こっているのか分からず困惑していた。


「さっきまで魔力が足りなくて使えなかったけどやっと使えるだけの魔力は回復したわ。

ーー舌噛むわよ!! 行くわよ!!」


と空高く飛び上がった勢いそのままで空中を勢いよく移動する2人。


「2人を逃すな!! 追え!! 各隊散会して奴らの着地点を取り押さえろ!!」





「ここまで来れば安心かしら……」


「だといいですが……ここは……?」


2人が現在いる場所はさっきまで戦闘を行っていた平野から離れた場所にある森の洞窟であった。


「ここは元魔王軍の拠点よ。魔王軍がここを捨てた後は私が勝手に使わせてもらってるわ」


「そう言えばこんな場所ありましたね……

ーーくっ……!!」


突如ウェンは苦しみ出した。


「ウェン!?」


「すみません……安心したら怪我の痛みがぶり返してきました……」


さっきまで極度の緊張状態であったため自身が怪我していたことを忘れていたのだがひとまず安心出来る場所に着いた途端、怪我の痛みが蘇ってきた。


「ま、待って薬持ってくるわ……確かここに……あった」


とエンラは見つけた薬でウェンの怪我に対して治療をしていくのであった。




「……助かりましたエンラ」


「全くよ、私に感謝しなさい」


「今日だけで貴方には沢山助けてもらいましたね……

まさかほんの数時間前まで敵だった貴方に」


「私も驚いているわ。

……ねぇあんた」


「何ですか?」


「あ、あんたの仲間の事は……その……えっと……」


「あぁ……そうですね……」


と暗い顔をするウェン。

何せ今まで一緒に旅をしてきた仲間が王国に裏切られて自分以外殺されてしまったのだ。そんな話を聞いて平常でいられる程、彼は強くない。


「で、でもまだ死んだって決まった訳ないじゃない?」


「さっきの隊長格の人間がつけていた剣は勇者が持っていたものでした、それ以外にも私達を囲んでいた連中の何人かは私の仲間の武器を自慢げに持っていました」


「でも武器を捨てて逃げた可能性も……」


「彼らに至ってそんな事はしません。

勇者の彼が自慢の剣を手放すとは考えられませんので。

なるともう彼らは……」


「……」


「知ってますかエンラ」


「な、何をかしら?」


「勇者を始め全員私よりも年下なんですよ」


「えっ……そうなの? あんたも若そうに見えるけど……」


「25の私が最年長で、それ以外は20歳になったばかりかまだ20歳になっていない者もいました」


「まだそんな若かったの……?」


エンラも彼らを戦いの中で幾度も見てきたが全員が同じぐらい若いとした認識しておらず彼の発言に驚いていた。


「えぇ、みんなこの戦いが終わったら何をしたいかってよく話していましたね。武力や魔力で常人離れしている彼らもただの未来に希望を持っている若者だったんですよ」


よく彼らは道中、お互いがこの戦いが終わった何がしたいのかを語り合っていた。そんな彼らが夢を語っているのを見るのがウェンにとっては楽しみの1つであった。


「ですが……!! 王国はそんな彼らを裏切った……!!

皆が笑っていける世界を目指していた彼らを王国は全員が戦いによって疲弊しているところを狙って……!!」


「ウェン……」


「元から私達をよく思わない方々はいるのは分かっていましたが……だからといってこんな仕打ちは……!!

あまりにも酷くて酷すぎる!!」


いつもは優しく滅多に怒らないウェンが声を荒上げてしまうぐらい激怒していた。それ程までに仲間に対して酷い事をしてきたのが許せなかったのだろう。


「怪我の治療ありがとうございますエンラ」


そう言うとウェンは自身の刀を担ぎ直すと立ち上がり洞窟を出ようとした。そんな様子を見たエンラは止めに入った。


「ちょっと待ちなさいって、あんたどこに行くつもり?」


「どこにって……決まっているじゃないですか。

ーー私の仲間にこんな酷い仕打ちをした方々に復讐するんですよ、それが私の最後の戦いです」


「復讐するって……あんた今の状況分かってるの?

あんた1人に対して敵は国1つよ。

どうみたって勝ってこない」


「えぇ……それがどうしましたか?」


「どうしましたかって……あんたね……!!」


「私にはもうこれぐらいしかやる事が残ってないんですよ。止めないでください」


「なら私も行くわ」


「エンラ……? 何を言って……貴方は私についてくる必要はないはずですが……」


「もう魔王軍も壊滅状態みたいだし、元々私はあんたに負けた身だからあんたに付いて行くわ。何よりも……」


「何よりも……?」


「ーー今のあんたを見捨ててはおけないわ。

私自身あんな不意打ちをしてきた王国に恨みはあるし」


「……感謝します、エンラ」


「いいわ、別に。

これからは同盟相手として頼むわ“剣聖”ウェン」


と手を出してきた。

それに対してウェンはその手を握り返しながら


「こちらこそ宜しくお願いします。“覇拳”エンラ」



ーーこの瞬間、“元”勇者の仲間と“元”魔王軍の幹部の同盟が成立したのであった。




楽しんでいただけでしょうか?


もしそうであれば幸いです。

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