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11.決着、その後……

 俺たちはとにかく走り続けた。

 どのくらい走ったのか。

 すでにミノタウロスの凶悪な気配は感じられない。

 ここまでくればもう安全だろう。

「誠、ここ……」

 完全に息が上がっている比奈子が喘ぎながら言った。

 比奈子の言いたいことが、俺にも分かった。

 俺たちは最初のハイキングコースに戻ってきていた。

 見慣れた光景に、俺は全身から力が抜けてしまい、走るのを止めてその場でへたり込んでしまった。

 俺と比奈子はしばらくのあいだ、言葉を発することすらできなかった。

 周囲はまだ明るかった。

 不審に思った俺は腕時計を確認する。

 午後五時。

 ミノタウロスに遭遇した時が午後五時で、そこで時計は止まっていたはずだった。

 しかし秒針がふたたび時間を刻み始めていた。

 俺たちがミノタウロスに襲われてから森をでるまでの時間が、まるまるなかったことになっている。

 まるで夢でも見ているようだった。

 しかしそれが夢ではないことは、俺や比奈子の服や顔が血でべったりと汚れていることや江口涼太郎と藤島里菜の姿が見えないことからも明らかだった。

 俺たちは近くの公衆トイレで服と顔を洗った。

 血を完全に落とすことはできなかったが、少なくとも道ですれ違った人が驚いたりはしない程度には目立たなくなった。

 俺たちは無言で帰路についた。

 俺は家に着くと部屋で着替えると、シャワーを浴びた。

 身体中がむず痒かった。

 皮膚の下を、大量の虫が這いまわっているような感覚だった。

 俺は、ミノタウロスの血を浴びた。

 俺の身体に何が起きているのか。

 腕が痒い。

 爪を立てて掻くとズルリと皮膚が向けて、その下から太い毛が何本も生えてきた。

 あのミノタウロスは、もしかしたら元は人間だったのではないか。

 ぼんやりとしてきた頭で俺はそんなことを思った。

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