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death happy end?

「あなた、話があるの」

 


「帰ってきて早々話かけてくるんじゃねえ!」

 


「聞いて! 大事な話」

 


「飯を食ってからだ…。いや、もうウンザリだ。酒飲んで寝るわ」

 


 パシ!

 


 おや、呪い術中に愛の術中にこんな行為をするわけがないのに…便鱈(びんたら)本太良(ほんたら)の妻、穂詩(ほし)は夫の頬に平手打ちをしましたね。おかしい、これも愛情が為せることなのでしょうか?

 


 そういえば、私、シークレットワイズは恋愛の経験がない。突き詰めれば全てに対して愛がありません。生まれ育った環境がそうさせたのは言い訳がましいですが、嘘でもないと思います。常に社会に溶け込んでは人とは距離をおいていましたから。家業が悪魔使いですからね。

 


「ウンザリは私の方よ! アナタは一度たりとて私を振り向いてくれたことがない! 私達夫婦でしょ? あの時の誓のキスはなんだったの?」

 


「あ、あれは…」

 


 自分が術中にかかっていてその時だけ愛があったという類は言えないでしょうね。

 


 彼女は間髪を容れずに絶叫するかのように声を高く張り上げます。

 


「最初は可哀想だと思った」

 


「な、なんのことだ?」

 


「聞いて! 私も愛したのは始めの一ヶ月間だったの」

 


 はて、穂詩さんは永遠と愛の呪縛に繋がっているのに妙な台詞を。

 


「いい? 聞いて! どこかで私たちを見ている下衆な悪魔使いさんも!」

 


 !

 


 なんだって! 私に気づいているだと。刹那、私はある悪魔を睨み続ける。

 


「ベルフェゴール…貴様、裏切りましたか?」

 


「いいや」

 


「だが、ただの人間に悪魔の力を看破できることはありえません」

 


「神に近い人物とでもいおうか、別の悪魔を使役する人物がいる」

 


 同業者か? しかし、こんな昔から術破りをしていたなんてどういうことでしょうか…。

 


「穂詩という女だ」

 


「彼女は並みの人間」

 


「だろうな…。しかしだな、私の術中に本当の愛とやらに芽生えたようだぞ。そして執拗に悪魔の事を聞きたがるのでな。ある契約を条件に悪魔の秘密を私が知る限り教えた。何故かと? お前と同じ余興だ」

 


「そして、そのことを私に告げることは契約に必要なかったと?」

 


「そういうことだ」

 


 む、やられましたね…。ベルフェゴールめ! 私もまた八年間踊らされた道化ということか…。で、どういう展開になるというのでしょう。悪魔を使いこなせない悪魔使いの末路は破滅でしょうね。

 


「出てきて、ベリアル」

 


 彼女が言うと何処に隠れていたのかおそらく地獄と地上を直結して現れました。大きな海蛇の顔にそこから口がわれて人の姿になりきれない頭部と臀部に顔がある悪魔が出現しました。

 


「お前! 何処に他の男を隠していた…? 人間か?」

 


「あなたの好きなライトノベルにも出てきたんじゃない? 悪魔ベリアル」

 


「あの、小型サタンとか魔王の一柱とかのか?」

 


「ふん、ようやくこんなことで私とまともに話をするなんてね」

 


「それどころじゃねぇ! 後ろの大きな蛇って地獄に直結する口をもつレヴィアタンか? そんなデカ物アパートが壊れないか? 弁償できないぞ…」

 


「大の男が持つ危機感がそれ? いい? 私は最後の告白をしたいがためにこの場をこの場を設けたの」

 


「最後の告白だ~?」

 


 むむ、私もこの二人を最後には分かれるように仕向けるつもりでしたが…。先を越されたというより最後とはいったいなんでしょう。恐らくはベリアルの契約に直結しているのでしょうが…。

 


「今まで悪魔使いに操られている振りをしてこのベリアルと契約してはね除けてきたわ」

 


 その、ベリアルはキキキキとしか笑っていないです。喋りたがらない悪魔によく出る仕草ですが、この悪魔は詭弁が得意らしいですね。論もしたくないやり取りということでしょうか? ただ、偉大な悪魔の一柱なので願えば万能的叶う力量のようです。

 


「ベリアルとは本太良、あなたに私の書いたライトノベル読むこと! そして、私の愛の告白に答えることを叶ったら命を捧げると契約したわ」

 


 地上を見ていた私達、シークレットワイズとベルフェゴールは顔をあわせた。

 


「ちなみにあなたと穂詩さんの契約は?」

 


「あれか? きまぐれだからな、他の悪魔に狙われても助けないという内容だ」

 


 ベルフェゴールはどうでもよさそうに答えます。

 


「バカか? なんてことを…俺なんて捨てて、他の男とくっつけばいいだろうが!」

 


「バカね! 操られた振りではなくて、本当に愛してしまったのよ。どこが好き? それは全部」

 


「ななな、どうして俺なんかと一緒にいるとは思っていたが本気で好きなのか?」

 


「ええ」

 


「同情とか動くのが面倒だからくっついていればいいや! とかじゃないのか?」

 


「最初はそうだけどあなたを振り向かせるということに夢中になったの。それにあなたが隠していた八年前以上のラブレター」

 


「ばばば、ばかななんでそれを見つけた?」

 


「隠せる場所なんてこの狭いアパートにほとんどないでしょ? あなたのキモオタク小説のヒロインが私を投影したみたいね。主人公ことあなたが何度もラブコールしているわね。そして振られて終わっているし」

 


 穂詩さんは怒っているし、笑ってもいる。はつらつとしている。こんな穂詩さんは久しぶりに見ます。そして、卑屈な表情をしていない本太良氏も…。

 


「これは、面白い場面を観させてくれますね。この夫婦は」

 


「ふん、こんなやりとりは腐るほど観たな」

 


 ベルフェゴールはあまり楽しそうではない。私は愉快に思えたのだが。

 


「あなたのラノベ失格! 私の方が数倍面白いから読みなさい! そして、最後に私に告白しなさい!」

 


「ど、どういうことかわからんが読む、読むよ!」

 


「よし!」

 


 そういうと彼女は本太良氏に小説の原稿を渡し読もうとする。私も天の国から覗き見をします。

 


 内容は本太良氏と変わらない学園もののファンタジーとラブコメだが穂詩さんのほうが確かに面白い。

 


 しかし…。

 


「彼女の文才能力はベリアルによってはね除けたのでは?」

 


「いい? 聞こえている悪魔使いさん! 余計なことをしなくても私には文才はあるのよ」

 


 いや、参った。これもまた筒抜けでしたか…。完敗です。

 


「で、これをよんで本太良! 私をどう思う?」

 


「好きだ! 今まで疑念で埋まって何も感じなかったが、改めて惚れ直した。好きだよ」

 


「よし!」

 


 だが。

 


 最後に残っているのはベリアルとの契約だけですね。

 


「想いはとげたようだな。ケケケ。では命は貰っていくぞ」

 


「ええ、いいわ」

 


「ま、まってくれ、このどうしようもない俺の命を持って行ってくれ!」

 


「本太良…」

 


「ケケケ、契約上無理な話。こういうやり取りはどんなに繰り返しても楽しいものだな。それとな、元旦那よ」

 


「なんだ?」

 


「命には重さがあるんだよ。お前のでは軽すぎるから儲からない」

 


「そうだよな…ロクでもない俺じゃ…」

 


「そんなことはない! でも、あなた、私にはここが限界だから先にあっちの世界に行くね」

 


「悪魔との契約で死ぬなんて地獄行きだろうから、俺は悪いことしてそっちにいってまたお前と出会うわ。そして、やり直そうな」

 


「それ、B級の発想」

 


「そうか? 才能ないな俺…。比べて、お前のラノベは面白いよ」

 


「でしょ? ふふふ」

 


「ははは」

 


「別れ話は終わりか? じゃあ行くぜ」

 


「待ちたまえ」

 


「なんだ、誰かと思えばベルフェゴールじゃないか。それと…」

 


「シークレットワイズと申します。あなたが冥府つれていく命は私では役不足ですかな?」

 


 ベリアルはキキキと笑った。

 


「最近の人間の有名人じゃないか、上玉だ! いいぜ! といいたいが契約があるしな」

 


「問題はない。私と主の契約でベリアルに力ずくでも代役を交換しろとせがまれるのでな。私と争うのとお前の詭弁術で契約を誤魔化して主の命を手に入れるのでどうだ?」

 


「ベルフェゴール! それのった!」

 


「では、ベリアル行きましょうか?」

 


「でも、いいのか? 地獄の辛苦は計りきれないぜ」

 


「代々、我が一族は地獄行きです。それが早まっただけのこと」

 


「あっさりとしているな。あんたは地獄でやっていける口だぜ? ケケケ」

 


 ベリアルの軽口に乗りながらちょうど良く地獄に通じるレヴィアタンが口を開けているのでそのなかへと向かいます。

 


「悪魔使いさん、あなたはそれで本当にいいの?」

 


「おやおや、危害を加えていた私に心配してくれるのですか? この私の腐れた人生が悪事で復縁という善行になったことがですね。なんだかそれで満足してしまいましてね。どうでもよくなりましたよ。幸せになってくださいね」

 


 その後、夫婦二人はやかましく私を止めようと叫んでいましたが、私は気にすることなく地獄へと命をささげました。

 

 

 

 

 

 

 

 


 そして、地獄の風聞で耳にしたのは穂詩さんの小説が書籍化したこと。

 


 あの最後の日に穂詩さんは職場に行かず出版社に呼び出されて行っていたそうです。小説の賞はとれないが才能を感じ取られて別作品を書いてみないか? だとか…。それが書籍化したみたいですね。

 


 本太良氏は本気で仕事をサボっていたようですが…。

 


 フフフ、誰がピンポイントでこんな噂を流したのでしょうか? 私は、今氷漬けされてそれどころじゃないというのに。

ということで、予定通り三部で完結しました。一日でやるには思ったよりしんどい あと、思ったより最低な話になりませんでした。 力不足ですが、良い経験だと思いました。

楽しい話ではないですが(多分)最後まで読んでいただいたら幸いです。

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