せくろす!
「おーい。さりな」
「もうなんなん。天パ」
女子高生の私と、天パのおっさん。
推定30代じゃないでしょうか。
「たしかにおれは天パやけどな……」
ビルの前、立ち止まって頭をかりかりするおっさん。
この人、名前言わないし嫌だわ。
「あ、そうそう。おれのことは、てるちゃんで。よろしくね?」
コンビニの袋を右手であげ、うふふという気持ち悪い笑みを浮かべた。
「……何で今……」
「今思い出したんや」
いかにもボケてましたみたいな、そんなのがいやなんだよね。
「んじゃ、てるで良い?」
「あ、呼び捨てしてくれるん?」
「えー、じゃあなんて呼べばいいの?」
「て・る」
うざいわ、まじであんた……。
「はー……分かった。じゃあ呼び捨てしたげる」
彼はありがとうと言い、路上で私の太ももにキスをした。性犯罪の一種。
「スリルがあるけん、こういうことやってしまうんなぁ……」
キツい天パが私の前に現れる。
チリチリ髪を根こそぎ掴んでやった。
「あほ!」
「やん、そんな怒らんといて?帰ろうや」
手を引っ張ってビルの前を後にした。
太ももについた唇の感触が嫌なくらい気持ち悪い。
こいつとの出会いは、隣人として出会ったんだ。
で、ニートだって。
やばいし、きもいし。
女子高生が好きなんだって。
もうただの隣人だから。
「さりな。可愛がってあげる」
「可愛がんなくていいよ」
「そんな遠慮せんでもええやん」
「……するわ!」
アパートに戻るだけでもこんなにうるさいだなんて。
「可愛がるんは、帰ってからかな?」
「逆に私が可愛がってあげるから感謝しなよ」
で、このコンビニの袋にはこいつのおごり、入ってます。
「……えーん」
彼の泣き声は無情にも、可愛らしく。
チューしたいくらいだよ、この唇にね。
アパートに入り、彼の部屋でお世話になる。
「てるちゃん……」
私、この部屋に入ると変わるんです。
えっちに、なっちゃうの。少しだけ。
ブラウスのボタンを細い指でプチプチと外していくの。てるちゃんにいやなくらいに見せて……
興奮した?
目に付く中心部分は、テントを張っちゃった?
てる……てる……
縛ったろか。
「ね……てる……」
そう言ったら、てるは顔を赤くしてうつむいた。
「それより、プリン食べよ。2人部分買ってきたんやって。なー?」
「……いらないからね。ていうかもう、変態だから、元気になっちゃったよね?ソコ」
「そりゃ、なるに決まっとる」
この人、アニオタでAV女優の写真も大量らしい。
スマホの写真フォルダはもうパンパンらしい。
美とエロスで全てを構築なんて、いやん!
「あ、なんかええの当たったわ」
「スマホゲーガチャやろー、どうせ?」
「おぉ、よく分かっとるな」
タバコをくわえて、火をつけないてる。
くわえたまま喋ってるから、こっそり隣で火をつけた。
「ん、ありがとう」
灰皿はもうタバコの吸い殻しかない。
汚いな、そういう目で見ていたら……。
彼は上目づかいで私を眺めていたのです。
パンツを見る視線か、私の顔かどっちか分からないけど。
「どこ見とん?」
「吸い殻の数々」
「あぁー。めっちゃあるやろ。これでも1日2本やからね」
「そう」
1日2本でよく耐えられるね。ニコチン中毒なら止まらないと思うけど。
「タバコ吸い終わったら、キスしたげる」
「え?」
裏返った彼の声。もう一度ゴホンと咳払いした。
「何言ったん」
「タバコ吸い終わったら、キスしたげるって言った」
その厳つい顔に似合わない、膨らんだ唇に。
「ほんま?じゃあ歯磨きするわ」
「せんでいいよ。そのまましたげる」
ほら……ね。
タバコを吸い終わった彼は、いやらしい目で私を見てキスを待っているかのよう。
頬を手で触れ、キスを思いっきりして。
最近覚えたDの付くキス。
舌をこじ開けようとしてもなかなか開かない。
「このキス、なんなん……まじ」
「ディープキスだよ。AV見てんなら分かるよね」
「分からへんし……」
「……あほてる」
「この絡めたキス見るたび、何やって思うんやけど」
自分の唇を指さし、あははと笑うてる。
「……それが、ディープキス。覚えといて」
手を握り、分からせるようにしてみせた。
「オッケー、了解」
天パを根こそぎつかんでぐしゃぐしゃっとした。
「……じゃあ、もう性欲処理はいいね?」
「あ、それはいかん。やってもらう」
去ろうとした手を引かれて逆になんだかドキドキした。
「もう。分かったわ」
強い力が手首に伝わって、熱い……。
変態てるにはこうした方が良いよ、多分
「えへ……こっちおいで、てる?」
彼の前で両手をさしだして、首を傾げてにっこりとした。
超にっこりして、笑った自分は女子高生最強と思った。
「あーん、可愛いな。さりな」
ぎゅっと抱きしめられ、もう一度覚えたてのキスをした。
甘くて甘いキスをした。
それはそれは拙いディープキスでありながらも。
「な……ひとつになろ?」
止められん、みたいな顔をした彼。
「もう……ひとつって何よ?」
「身体を重ねるっていうやらしい意味」
「はー……しょうがないなぁ」
仕方なく、この人のために脱いだ。
嫌々、身を重ねるために……。
むき出しの肌、興奮で嬉しがる彼。
「パンパンだもんね?もうそこ」
中心部分を手のひらで、可愛がってあげる。
蹴ったら痛がる急所を、むふふと笑って弄る。
何でオトコはすぐに、急所を蹴ったら痛がっちゃうの!
何か出来てるから痛いの?
「さりな……もっ、やばいわ、出る」
「まだ、だめだよ。大人しくして」
そこからは、てるをもっと可愛がって、私は濡れて、ひとつになった。
彼のニートらしくない姿についてた、変なリボン。それを天パの頭につけてあげた。
何度もこすりあう。そのたびにてるは手慣れてるって思う。
さすが、AVを見ているだけあってとてもやばい。
「制服も十分えっちだけど、裸もえっちだね……」
「この変態ニート……」
「はい。おれは変態です。ニート脱却したいです。助けてください」
そう言った彼をぶん殴った。
「いてっ!」
そして制服を身につけて、彼は喜びながらお礼を言った。
「性欲処理、ありがとう。おれが男子高校生だったら確実にさりな狙ってた」
「ふ、ふーん。まぁとりあえずどういたしまして」
ぺこりと頭を下げた。
もうこいつうざいわ、と半分嫌々思いながら。
私はがちゃ、とドアを開けててるの部屋を後にした。
いつもはてるのことを天パと呼んでたのに、ちょっと親近感……
いや、無い。
あるのは、名前があるだけでもいいねという感情。