夏の思い出達
『夏の思い出達』
車は隆の待つ地元の駅に向かっている
三人は、毎度の様に車の中で歌を歌ってはしゃいでいた。
「もう明日、夏休み終わりだけどみんな宿題ちゃんとやったの?」
正子が言った
「ちゃんとやったよ」
もうみんな宿題も終えてあり、いよいよ明後日からは学校が始まる
「あーあやだな学校」冬馬君が言った
「後一ヶ月夏休みあったら、最高なのにな」大喜はタメ息をつく
多網も頷いている
正子は苦笑い「学校だって、面白いでしょう」
車は駅に着き、冬馬君が、隆を見つける。
隆は改札の所に立ってキョロキョロしているではないか。
「おーいこっちだよ」
隆は冬馬君の声に気付き、こちらに来て車に乗った。
「ただいま 何処に食べに行く?」
「うーんあんまり考えてないんだけど」と正子
「回転寿司なんかどう?」冬馬君が思いつき
「良いねそれ」と、みんな大賛成
一同は回転寿司を食べに、いざ出発~~。
車の運転は、隆に代わり駅から10分くらいの所にある回転寿司屋さんに着いた。
車を停めるやいなや、子供達は走って階段を登り店に入って行く
「回転寿司だと、またないですぐ食べられるから良いね」大喜は笑顔
みんな席に座り流れてくる、お寿司をとっていく、多網の食欲のまあ凄い事。
口に入ってるのに次から次にとってみんなを笑わせ。
隆が正子に「帰り運転してくれない?」と言いビールを飲んでいた。
回転寿司は色んなメニューがあって子供達を飽きさせない
「あーっお腹一杯」
子供達も、もうお腹一杯大満足である
「じゃあそろそろ帰るよ」正子が言った
帰りの車の中で子供達はいよいよ、夏休みの終わりを感じ始めていた。
「実際まだ終わる実感ないけど、明日みんなが帰る頃に、いよいよ終わりかって、感じるんだろうな」と冬馬君。
みんなタメ息をつく
明日、楽しかった夏休みが終わる
冬馬君は夜の街の景色を車の中からボーッと眺めていた
あー本当に楽しかったなぁ。
なんだか気持ちは切なく、明日からの日常の学校生活に戻るのが少し憂鬱な気持ちも正直あった。
本当に、この夏休みが楽しかったんだ。
家に到着して、みんなリビングルームで、アイスを食べながらテレビを観てくつろいでいる。
途中テレビでは、あの清香に似てる人が出てるCMが流れ冬馬君をドキッとさせた。
暫く胸のドキドキは続き、清香の事を考えていた。
21時を過ぎる頃には三人はお風呂をすませ二階にあがる
「もう最後の夜、今日はねないぞ」冬馬君が言う
「俺も」大喜も賛同し
多網も頷いている。
三人は、大人達にばれないように、静かに布団の中で色々夏休みの思い出を語り合っていた。
「いよいよ、夏休み最後の夜中の語り合いだね」大喜は絶対寝ないぞと言う意気込みを込めて言った
「夏休みは毎日の様に語り合いが出来ておもしろかったなぁ」冬馬君が懐かしむ。
「でも、僕らは沢山良い思い出 出来たよね 最高の夏休みだった」
「確かに」と大喜
多網が力強く頷いている
そして、何故だか三人は握手を交わした
「夏休み色々とありがとう」
三人の絆は夏休みでより深まった感じがした
結局、三人は布団の中で寝ながらずっと話をしていた。
いつまでも いつまでも話ていたかったので、みんな眠くなっても眠らないように、ずっと粘り強く起きていたのだ。
もう寝て起きたら、いよいよ夏休みも終わりの日、そして皆お互いの家に帰って行く
長らく一緒に過ごした三人は、家は近いながらに別れが寂しかった
学校が始まれば、お互い今のように頻繁に会わなくなるのも分かっていた。
朝日が出る頃、さすがに眠気に負けて三人は眠ってしまう。
目を覚ました頃には、なんと夕方だった
正子が言うには、何度起こしても三人共全然起きなかったらしい
正子が作っていたカレーを食べて、みんなの家に車で送りに行く事にした。
みんなは帰る支度をし始めている、なんとも言えない切ない気持ちになった。
「じゃあ多網の家に先に行くよ」
ブウウウゥン~
車の中で、旅行に行く前とかと気持ちが全く違うねと、言っては笑った。
多網の家が見え
「多網着いたよ」
「色々どうも」多網はそう言い車のドアを開ける
多網は、降りぎわに冬馬君と大喜に「学校しっかりな」
多網の意外な言葉に、二人はビックリしつつ この瞬間だけは年上なんだなぁと感じた。
多網はいつまでも手を振っていた
冬馬君も大喜もいつまでも手を振っていた
「遂に多網も帰っちゃったね」
「うん次は、いよいよ俺か」大喜も寂しそうだった。
考えたら夏休み中、一番一緒に過ごした大喜
夏休み中ほとんど、朝から夜まで二人一緒だったから、一人になるのはとても寂しかった。
車は大喜の家に着く「冬馬色々ありがとう じゃあな」
大喜は冬馬君の目をしっかり見つめ、車を降りた
大喜もずっと、家の前に立ち車が見えなくなるまで、ずっとこちらを見つめていた
冬馬君は家に着き、部屋のドアを開け違和感を感じる。
何故なら夏休み中、部屋にずっと居た大喜も多網も誰も居なく、部屋がガランとしてるからだ。
本当に帰っちゃったんだなぁ
本当に終わっちゃったんだなぁ
何か、ぽかんと胸に穴が空いた様なそんな感じだった
机に座り、しばらくボーッとしていた
明日の学校の準備をしては、夏休みの思い出を思い出していた
台風の夜に観た怖い番組
美しい自然の中でのキャンプ
醤油の焦げた匂いと活気にあふれ、人々が盛り上がっていたお祭り
死にかけた事
夏の夜空を彩った花火大会
青い空の下の海水浴
熱海旅行
みんなが家に泊まっては過ごした日々
そして清香との出会い
全てが冬馬君の宝ものになった
はぁー楽しい夏休みが終わり
明日から学校やだな~と苦笑い、冬馬君はタメ息をつく。
その時、目の前の窓に目がいく
そこにはらボロボロになった、あのテルテル坊主がまだニッコリ笑ってぶら下がって居る
冬馬君はそれを見てニッコリ笑い
明日から頑張るかとまっすぐ空を見つめた。
窓の外では、セミ達が最後の元気をふりしぼり歌を歌っている、まるで自分を応援してくれてるかのように
夏の楽しい思い出の日々はこうして過ぎて行った。
部屋の窓には、てるてる坊主が風になびかれ、いつまでも元気に踊っていた。
終




