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暗殺少女の理想郷  作者: 白銀悠一
第二章 ニセモノ
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アイビキ

 夜も更けた頃、直樹は帰宅した。

 しんしんとした住宅街。遠くから虫の鳴く声が聞こえる。

 最近また帰りが遅くなった事を両親は心配していた。

 直樹は帰宅部でバイトもしていない。とはいえ高校生だ。帰りが遅くなることもあるが、こう連日続くと、懐の深い直樹の両親も心配するというもの。

 怒られるだろうな、と思いながら玄関に入ると、成美が出迎えてきた。


「お帰り」

「ただいま」


 直樹は靴を脱ぎ、自室へと向かおうとする。

 成美とすれ違う瞬間、直樹は妹の囁く声を聞いた。


「……ちょろまかしといたから」


 そう言って妹は風呂場に向かってしまう。

 ちょろまかした、の言葉通り、鉢合わせた両親は笑顔でお帰りといっただけだった。


(……今度はどんな嘘ついたんだろうなぁ……)


 成美は両親の説得も上手だ。言葉巧みにあることないことを言い、見事言いくるめてしまう。

 そんな妹のスキルに何度助けられたことか。我ながらいい妹を持ったものだ。

 

(心配かけたくないけど……仕方ないよな)


 以前、成美は変な事に首を突っ込むな、と言っていた。

 成美は直樹が何をしているかは知らない。しかし、人の気持ちを察する事が上手い成美は何となく直樹が尋常ではないことをしていると感づいているのだろう。

 妹が自分を心配してくれることは嬉しい。直樹が両親に怒られないのも彼女のおかげだ。

 まぁ、両親も別に直樹を嫌いで起こっているわけじゃないが。

 自分はいい家族に恵まれたな、と直樹は制服を脱ぎながら思う。

 しかし、炎と心はそうでなかった。

 いや、家族は良い人だったのだろう。心は家族写真を大事にしているし、炎は兄の事を話す時とても楽しそうだった。

 だが、双方の家族は何らかの悲劇に見舞われ、死んでしまった。

 しかも、心が炎の兄を殺し、炎の兄が心の家族を殺したというおまけつきだ。

 順序的に見れば――炎の兄が悪いのだろう。

 しかし、それはあくまで直樹が知りえる順序だ。

 その前に何かあったのかもしれない。もちろんそうじゃない可能性もある。

 結局、直樹が思いつくのは可能性の話であり、真実は分からない。

 メンタルを捕らえなければ真相は分からない気がした。


(でも、どうやって?)


 直樹は私服に着替えながら、思案する。

 メンタルのオリジナルの心さえも苦戦する相手である。

 素人に気が生えた程度の直樹でどうにか出来るのだろうか。

 それに、気名田矢那のこともある。


(いや、弱気になるのはもうなしだ。強気でいく)


 直樹は椅子に座り、くるくるペンを回しながら、分析する。


(しかし、まともに戦って勝てるのか? 炎も負けたし、心だって重傷だ。水橋さんは雷に弱いらしいし……。彩香は後方支援担当で、警察なんか使い物にならない)


 達也が生きてさえいれば、と直樹は思わずにいられなかった。

 あの人が生きていれば何かしらの方法を編み出してくれたかもしれない。

 もちろんこれは直樹の主観による評価なのだが、達也は直樹と炎が危険に遭わないよう様々な配慮をしてくれた。

 不備はあったし、危険な目にもあったが、達也は自分に出来ることを出し惜しみせず行っていた。

 それが原因で単身気名田に挑み、殺されてしまったのだが。


「俺も自分に出来ることをするしかないよな」


 直樹は口に出して、息を吐いた。

 その自分に出来る事を模索しているのだった。何か分かったように呟いたものの、全然方法が思いつかない。

 俺に出来ることとは何だ? 皆の力を借りて戦うことだ。

 性格まで真似してしまう厄介な異能だが、上手く使えればかなりの戦闘力を発揮できるはず。

 

(今ある俺の異能は……炎、心、水橋さんの三人……)


 炎の異能は万能で、直樹の戦闘の主体だ。移動や格闘戦に持ってこいの力。

 心の異能は言わば回復能力だ。炎や水橋とは違ういまいちしっくりこないものの、ダメージを受けたりしても傷を癒してくれる。

 水橋の異能は、水鉄砲を媒介にして放たれる水圧カッターだ。遠くの物を何でも射抜けるし、切り裂くことも可能だが、炎のものに比べて利便性は劣る。

 

(それでも、勝てないんだよな……。デタラメだぜ、あいつ)


 気名田矢那。直樹は接近戦を試みたが、あっさり殴り飛ばされてしまった。

 矢那の指摘通り高まり過ぎて声を出してしまい奇襲は失敗したが、仮に声を出していなくても失敗していたと思う。

 それほど圧倒的だった。

 父親である気名田は、直樹を舐めていた。

 その為に直樹には勝機があったし、炎の異能が上手く制御出来てないおかげで気名田の攻撃をあまり受けずに済んだ。

 しかし、あの矢那という女。彼女はつまらないなどと抜かしているが、隙がない。

 ぼーっと突っ立っているように見えて雷で身を守っている。

 銃弾による攻撃は無効化される。金属の類も無駄だ。

 勝ち目があるとしたらやはり、炎の異能なのだが――。


(でも格闘も出来るんだよな……。炎と二人で戦えば何とか……。そこまで甘くないか)


 あの余裕っぷりを見るに、二人で殴りかかっても少年漫画の噛ませ役になる未来しか直樹には想像出来ない。

 やはりダメなのだ、今のままでは。

 直樹はペン回し止めて、唸り出す。知恵を振り絞る。

 

(まだ何かやってないことはあるはず。……彩香の異能を借りるか? いや、矢那の思考を読んだって、あいつはこちらが対処出来ない攻撃をしてきそうだ。とすると……)


 そこで直樹は気づいた。

 まだ異能を貰っていない者がいるではないか。

 地味な異能だが、ないよりはマシだ。

 使いようによっては心が苦戦するメンタルですら何とか出来るかもしれない。


「……久瑠実。素直に異能をくれるかな……?」


 今の久瑠実ならちょろいか。気が引けるが緊急事態だ。致し方ない。

 明日、直樹は久瑠実に異能を借りることに決めた。



 久しぶりに一人で受ける授業は新鮮であり、寂しくもあった。

 直樹は頬杖を突きながら、授業を受けている。授業は世界史だ。

 18世紀のアメリカがどうとか、ジョージ・ワシントンは自由と平等をだとか、日本にいる自分にはあまり関係のないような事を教師が説明している。

 グローバル化の影響で、世界史を習っていた方がいいんだよと教師は言っていたが、本当に使うような場面が来るのだろうか。

 そもそも、自分は……自分達は自分の国ですらきちんと理解していないというのに。

 情報化社会になって、しょうもないことから大切なことまでネットで検索すれば簡単にヒットする時代。

 パソコンの前に座っていれば、物知りになった気分が味わえる。知識をネットワークから得られるのだ。

 まぁ、これは過剰な表現で、実際にネットを使っている人達全員がそう思っているとは言わないが。


(でも、便利なはずのネットも情報統制されてる)


 この国で今何が起こっているのか、理解しているのは一握りだ。

 幸か不幸か直樹もその一員だ。

 関わりたかったかどうか問われれば、関わりたくなかっただろう。

 だけど、異能者となった今、関わって良かったと思っている。

 何も知らないまま、殺されるのは嫌だ。

 何か罪を犯したわけではなく、自分と違うからという理由だけで殺されてはたまらない。

 それはきっと、異能者も無能者も隔たりなく思っていることだろう。

 一体、何が悪かったのだろうか。

 一番最初の異能者と言われているレイド・コステインか? それとも、その異能を怖がった無能者か?

 

(……きっと、誰も悪くないんだ。誤解が誤解を呼んで、こんな嘘みたいな世界になっちまった)

「では、直樹君。アメリカの独立戦争の理念について答えて下さい」

「はい。ええと……はい!?」


 何だそりゃ。そんなもん知らねえぞ! と直樹は混乱する。

 そう言えば、さっき自由だとか平等だとか言ってたな。直樹は聞こえた言葉をそのままそっくり答えた。


「ええと、自由や平等」

「ふぅむ。まぁ、それでいいでしょう。実際にはその言葉には様々な思惑が――」


 教師がうんちくを語り始める。この教師は詳しい部分がテストに出ることはない。

 単語さえ覚えていれば回答出来るある意味楽な教師である。

 まぁ、真面目に説明しろと言われれば、直樹に答えることは出来ないのでありがたい限りだが。


「……」


 直樹は、前方、右隣、右斜め前、左斜め前の席に順に見つめた。

 一番前に座る心は、数日前直樹が分からない問題に直面した時、メールで答えを教えてくれた。

 右隣に座る炎は感情表現が豊かで、見ていて飽きなかった。彼女の苦手な数学の時など一見の価値ありだ。

 右斜め前の久瑠実は、直樹が宿題を忘れた時写させてくれたり休んだ時ノートを取っていてくれた。

 左斜め前の席に座る彩香はまだ学校にちゃんと通えていない。相棒の身を案じてパソコンの前に座りっぱなしだ。

 せっかく、分かり合えたのだ。心達と。

 これから喧しい、そして楽しい日常が始まるだけだった。

 直樹はそんな彼女達に振り回されるはずだったのだ。


(関わり合いたくないとか思っていたが、俺は嘘つきだな。彼女達が来て、どんな日常になるか見てみたい)


 その為には、矢那とメンタルに勝たなければ。

 何としても久瑠実の異能を借りよう。そして、二人に勝利しよう。

 直樹は気合を入れて、ノートを取り始めた。



 放課後、直樹は超特急で久瑠実が保護されている立火警察署へと急いだ。

 目指すは署内の異能犯罪対策部だ。そこは異能省中立派の拠点ともなっていた。

 異能犯罪対策部という張り紙がしている会議室の中へ直樹が入ると、久瑠実がぱぁっと顔を輝かせる。

 

「直ちゃん!」

「よお、久瑠実」


 久瑠実は彼女らしからぬオーバーリアクションで直樹に抱き着く。

 いつもなら直樹は嬉し戸惑うのだが、今日の直樹は違う。

 真面目な顔で久瑠実の肩を掴んだ。


「なぁ久瑠実。頼みがあるんだ」

「頼みごと!? 直ちゃんの頼みだったら私は身体だって差し出せるよ!」


 嬉々として言う久瑠実。久瑠実は笑っているが、普段の彼女を知る直樹にとってその言動は不気味だった。

 しかし、このチャンスを利用しない手はない。

 直樹は若干の後ろめたさを感じながらも、お願いをした。


「……じゃあ、久瑠実。お前の異能を貸してほしいんだ」

「私の……異能を?」


 久瑠実の異能。透明になる力。

 姿が見えないというのはかなりのアドバンテージになるはず。

 真摯な眼差しで直樹が久瑠実を見つめていると、彼女は顔を赤らめながら口を開いた。


「いいよ、でも条件が……。聞いてくれる?」

「いいぜ、言ってみろよ」


 上目使いで見つめてくる久瑠実に頷く直樹。

 何が来ても応える気持ちだったが、久瑠実の条件は直樹を驚かせた。


「私と……デートしてほしいな」

「……ああ、いいよ」


 余裕を持って直樹は返事をした。が、その余裕はうわべだけだ。

 心中はえええ俺デートしちゃうの!? まじで!? というある意味高校二年生らしいものだった。

 

(く、久瑠実と……デートか……。そりゃあまぁ、妄想したことはあったけども)


 高校生になっても仲良くしている女子は久瑠実だけだ。故に、そのような事を想像してしまうのは男子高校生なら致し方あるまい。……それが男という悲しい生き物の性である。

 実の所直樹は心と和解してからというもの、炎や心と共に登下校している為、友人の智雄から見れば羨ましい限りなのだが、当の本人は気づいていない。

 

「本当! やったぁ、直ちゃんとデート~」


 嬉しそうに笑う久瑠実。

 これがメンタルに干渉されていない状態であれば良かったんだが。

 直樹は複雑な想いに駆られつつ、スキップしながら廊下へ跳び出て行く栗色髪の幼馴染を追いかけた。


 

 街中の至る所に監視カメラは設置されている。

 その内のいくつかが、黒髪の少年と栗色髪の少女が二人並んで歩く姿を映し出していた。

 この地区に土地勘のある者だったならば二人の着る制服が帝聖高校のものであることに気付いたことだろう。

 しかし、機械である監視カメラには、そのような判断は出来ない。する必要すらない。

 機械は機械として与えられた役目をこなすだけ。その情報を必要な者に提供するだけだ。

 カメラは無機質に、だが確実に二人を捉えていく。作られた目的を果たす為に。

 一人の少女もまた、自分の存在意義を果たす為に動き始めた。



「直ちゃん! クレープ屋さんだよ!」


 そう言って久瑠実は直樹の腕を引っ張って行く。

 直樹と久瑠実は帝聖高校の生徒御用達の寄り道スポットの一つ、立火商店街に来ていた。

 駅前のデパートという選択肢もあったが、そこは少し遠かったし、あまり寄り付かないデパートよりもなじみ深い商店街の方がいいという判断だった。


(……って言うか、デートって何をすればいいんだろう。リア充のみなさん、どうかデートのやり方を教えてくれませんか?)


 と直樹が心で念じるものの、誰も応えてはくれない。

 直樹は念思の異能を所持していないし、都合よくテレパス持ちがいるわけでもない。

 彩香の透視能力ならば直樹の心を盗み見れただろうが、彩香は病院に運び込まれた心にかかりっきりだ。

 そもそも彩香に直樹の念が届いた所で、リア充爆発しろと言われるのがオチだが。


「どれにしようかなぁー。直ちゃんはどれにする?」

「あ、ああ。俺は……チョコでいい」


 私もそれにしよっと。楽しそうに注文する久瑠実。


(……前に炎と来た時は……)


 炎は確かラズベリーだか何かを頼んでいたな、と直樹は思い出した。

 デートしている最中に他の女を思い出すというくそ野郎なことをしている直樹に、久瑠実がクレープを差し出す。

 ありがとうとそれを受け取り、頬張りながら二人で歩く。

 久瑠実と共に、色んな店の前を歩いていたが、彼女はどこに入ろうともしない。

 しかし、とても喜んでいた。直樹と歩くだけで嬉しいと言わんばかりの顔だ。

 そういえば、昔はここら辺で走り回っていたな。

 直樹が懐かしむと久瑠実も同じような事を思っていたようだ。

 クレープを食べ終えた久瑠実は、懐かしいねと微笑みかける。


「昔はここでもよく遊んだよね」

「そうだな。で、久瑠実はよく迷子になってたっけ」


 少しばかり欲望に正直にはなっているが、久瑠実は久瑠実である。

 久瑠実は恥ずかしいそうに頬を染めて、


「し、仕方ないでしょ。ここら辺結構複雑なんだから」


 この辺りは路地が入り組んでおり、慣れてない人間だと迷いやすい。大通りを歩いていればそのような心配はないが、下手に裏路地に入り込むと誰かに道を尋ねなければならなくなることもあった。


「そうだったな。もう慣れたけど……」

「小さい頃は迷路だったね。でも……直ちゃんはすぐ見つけてくれた……」


 久瑠実の言葉を受けて、直樹は昔の記憶を掘り起こす。

 そういやそんなこともあったな。ただし……。


「見つけたはいいけど、結局帰り道が分かんなくなったんだよな……」


 久瑠実の話を聞くと小さい頃の俺やるじゃんなどと思うのだが、実際には帰り方が分かんなくなり二人で泣き喚いたというエピソードまで付随してくる。

 小さい頃から俺情けねえなどと直樹が思っていると、唐突に久瑠実が正面から抱き着いてきた。


「うわっ!?」

「そんなこと関係ないっ! 直ちゃん、だーいすき!!」


 やっぱこの久瑠実は久瑠実じゃない。

 胸の柔らかい感触にほんのちょっとだけ喜びつつ、直樹は嘆息した。


 

「あー、楽しい! 今日はありがとうね、直ちゃん!」

 久瑠実とのデートは、ただ商店街をぶらぶらするだけで終わるかと思われた。

 しかし、直樹は楽しかったし(不意の抱き着きも含めて)、久瑠実も満足しているようだ。

 デートして正しいのか直樹には分からない。

 だから、もし、次にデートする機会があればちゃんと調べておこう。

 とは思うものの、自分には金輪際縁のないイベントのような気がして、直樹はため息を吐く。

 この際、若干の後ろめたさはあるものの、今の内に堪能しておくのもいいかもしれない。


(って、いやいや! そんなこと出来るか!)


 そんな不誠実な事出来るわけがなかった。直樹は誠実であり、へたれなのだ。


「直ちゃん、ちょっといい? やりたいことがあるんだけど」

「ん、何だ?」


 久瑠実はそわそわした様子で、直樹を見上げてくる。

 何をするんだろうなぁと思った直樹は、以前のヤンデレもどき久瑠実を思い出した。


「ま、待て! ホテルには行かないぞ!?」

「え? かくれんぼしようと思っただけなんだけど」


 な、何だそんなことか……と、直樹は安堵する。

 また包丁を取り出されたら敵わない。炎の異能で対処出来たが、あれは精神的にきつかった。


「ふふ、変な直ちゃん」


 今の久瑠実に言われたくないぞ、と心の中で反論した直樹に、久瑠実がルールを説明し始める。


「私を見つけられたら、直ちゃんの勝ち。私の異能も貸してあげる。でも、直ちゃんが私を見つけられなかったら……」

「見つけられなかったら?」


 久瑠実の瞳が一瞬暗くなった気がして、直樹はおそるおそる尋ねる。

 先程の暗い瞳が嘘のように久瑠実は笑った。


「内緒。じゃあ、始めるね」


 ブン、と音を立てて久瑠実が消える。直樹の目には彼女の姿は全く見当たらない。


「って、異能を使うのかよ!」


 周囲の視線が集まることも気にせず、直樹は大声で突っ込んだ。

 しかし、久瑠実から返事はない。もう隠れ始めているようだ。


「く、くそ。カウントした方がいいのか……ん……?」


 急に携帯が鳴る。

 届いたメールの差出人は不明だった。

 ただ、本文が書かれているだけだ。


『面白い。ワタシも参加する』


 という短い一文が。


「……っ! まさか……」


 慌てて周囲を見回す直樹は、白いパーカーを着ている心によく似た少女を見て取る。

 メンタルはニヤリと笑い、人混みに紛れて姿を消した。


「くそっ。連絡を……」


 直樹は携帯を開き、メールを送ろうとしたが……。


(いや、ダメだ。心と炎は怪我してるし、水橋さんと浅木さんには二人を守ってもらわねえと。……俺が何とかするしかないな)


 直樹は拳を握りしめて、久瑠実を探しに駆け出した。


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