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暗殺少女の理想郷  作者: 白銀悠一
第一章 異能殺し
16/129

変革

 炎が発見されたのは、それから一時間後だ。達也が手配した救急隊が手間取った為、水橋達が回収した。

 その間、炎はずっと雨が降り続く中、放置されていたのだという。

 直樹が病院に駆け付けた頃には、炎は治療を受け終えて、ベッドに寝かされていた。

 意識はない。ヤバいかもしれない、という黒スーツ達の話し声が聞こえた。

 ただの高校生である直樹には具体的にどうなってるのかは分からない。ただ、彼女が弱っているということだけは理解出来た。

 病室に入る前に達也と出くわした。達也は直樹に声をかける。焦りを隠せない顔だ。


「直樹君……。君は無事だったんだな。良かった、君だけでも無事で」

 

 良かったと達也は言っているが、嬉しそうには思えなかった。直樹も同じ気持ちだ。

 鏡があれば、自分が達也と同じ顔をしていることが分かったことだろう。


「炎は……」

 

 病室の窓から、寝ている炎の顔が直樹には見える。とても苦しそうだ。


「……大丈夫だ、最高の医療チームを水橋君が手配してくれた。明日には目を覚ますさ」

 

 嘘だと、直樹は思った。ならばなぜ、達也はそんなに焦っているのだろう。答えは決まっていた。


「そうですか……俺は」

「炎についてやっててくれ」

 

 達也はそう言い残して直樹の元を去って行く。その顔に、ある種の覚悟のようなものを感じた直樹だったが、迫力に押されて口に出すことが出来なかった。

 病室のドアを開けて、炎の横に座る。眠る炎に直樹は声を掛けた。


「おい、炎。寝るには少し早いんじゃないか? まだ七時にもなってない。寝る子は育つって聞くけど、いくら何でも早すぎだ。そうは思わないか?」

 

 だが、炎は答えない。直樹は呆れたように笑う。しかし、悲しみとない混ぜになってぎこちない笑みが出来ただけだった。


「つーか、お前に病室って似合わないよな。お前はこんな所で大人しくしてるより、走り回ってる方が似合ってる。違うかな? 出会って一か月くらいしか経ってないけど、お前とはずっと長くいる気がするんだ。お前、強烈過ぎるよ。頭から炎出したりさ」

 

 直樹と炎は過ごした時間こそ短い。しかし、着実に友情が芽生えていた。

 何より、炎との出会い、いっしょにいた時は衝撃の連続で、直樹には深く印象に残っている。

 友情や他者を想う気持ちに時間など関係ない。


「早く目を覚まして、心を助けなきゃな。……たぶん、心の事だ。もう敵の元に向かってる。急がないとな……。なぁ……炎……炎……」

 

 自分の情けなさ、無力感に打ちひしがれながらも、直樹は炎の名前を呼び続けた。



 

 警官姿の男が病院の入り口から現れる。男はパトカーに乗ろうとして、一人の女性に妨害された。

 浅木が達也のパトカーの前に両手を広げて通せんぼしている。その顔は必死の一言だ。


「どくんだ、浅木」

「どきません」

 

 達也の言葉を浅木は無視した。


「一人では行かせません。以前もそうでしたね」

 

 浅木の言葉で、達也は昔を思い出した。そうだったな、と言葉をこぼす。


「あの時は……ああするしかなかった。今回も同じだ。炎を傷付けた犯人をこのままにはしておけない」

「なら警官隊を……」

「無理だな。警官達はもう言う事を聞かない。親父の手回しだ。俺に黙って脅される気はないらしい」

 

 こんなことならさっさと殺しておけば良かったか、とも思った。利用出来ないのなら父親を生かしておく理由は、達也にはない。


「なら、中立派を!」

「彼らには、炎と直樹君を守ってもらいたい。俺達の敵は一人じゃないからな」

 

 気名田が異能派だと見抜けなかったのは達也の失態だ。

 奴らは巧妙に一般人の中へ溶け込んでいる。

 それを見抜くのが自分の仕事だと言うのに、まんまと騙され炎がやられてしまった。

 もう子供達を前に立たせて後ろに座っているのはやめだ。既に大人失格だが、せめてのもの償いはさせてもらう。

 達也はパトカーに一歩、また一歩と歩く。しかし、浅木は頑として譲らない。


「行かせません! せめて、私もいっしょに」

「それは無理だ。君には後を頼む」

 

 達也は拳銃を取り出し、銃床で浅木の後頭部を殴って気絶させた。いるんだろう、と彼が問いかけると、柱の陰から、水橋が出てくる。


「浅木を頼む」

「了解した。だが、あなたを一人で行かせるわけにはいかない。私は異能者だ。戦力になる」

「それは無理だな」

 

 即座に見抜いた達也が水橋に言う。水橋はなぜ、と声を上げた。


「相性が悪いんだろう? 水は電気を通す。君は雷に対して無力だ」

 

 事実を言われて水橋が苦虫を噛み潰したような顔になる。達也は浅木を水橋に預けて、パトカーに乗った。


「君には二人の護衛を頼む。浅木もな。資料は俺のパソコンに全て記録されている。今後のことは浅木と相談して決めてくれ」

 

 任せた、と言って、達也はパトカーを発進させる。サイレンを鳴らしながら。


「……なぜ、いい人間から死んでいくのだ。なぜ、人は争うんだ!」

 

 水橋の叫びに、答えるものは誰もいない。



 

 パトカーを運転しながら、達也は昔を思い出していた。

 警察官になりたいと思った理由は単純で、テレビに出ていた警察官が格好良かったからだ。

 人の役に立ちたいというのも動機の一つだった。

 父親が警察官だったので、色々と勉強を教わり、キャリアへのルートも順調かと思われた。

 しかし、勉学に励んでいたある日、父親が汚職に勤しんでいたことを知る。

 父親の部屋でパソコンを盗み見たのが全てのはじまりだ。そこから、達也の歯車は狂い始めた。

 いや、元に戻ったとも言えるかもしれない。狂っていたのは今までで、本来のあるべき姿に戻ったのだ。

 異能者の出現による大混乱で、父親の汚職はどうでも良い小事となっていた。マスコミも、真相不明の異能者による事件を報道するばかり。

 そればかりか、警察官は犯罪者への攻撃に積極的になる。最初は自衛の為仕方ないと思っていた達也もあまりに過剰な先制攻撃には開いた口が塞がらなかった。事件を解明する為、警察は犯人を捕まえなければならない。どれほど相手が重罪を犯していたとしても基本的に方針は変わらない。殺すのはやむを得ない場合、命の危険が伴った場合だ。

 しかし、その常識は崩れ去り、新しい常識が社会に蔓延した。反対する者はごく少数。一般人にとって、犯罪者は目の上のたんこぶ、邪魔な害虫だ。

 もちろん、ある種、そういう側面は否めない。きちんと罪を克服する者もいればそうでない者もいる。しかし、殺してしまえば、事件の真相は解明出来ない。同じケースが発生した場合どう対処すれば良いか、どうやって発生を防ぐかどうか。そのような対策も取る事が出来なくなってしまう。

 病気に対して、対症療法を行うばかりで、肝心の治療を行わない。患者が病気に罹ったら、隔離して殺してしまえという訳だ。

 そのようなものを目にして黙っていられるほど、達也は腐ってはいない。父親の斡旋を全て断わり、汚職の証拠をかき集めた後、家出をして警察官となった。

 田舎の警察署で、警察官、犯人共々説得を繰り返し、現地の警察官は犯人を殺さないようになった。犯人の方も、説得し大事に至る前に解決できるようになる。

 元はそうやって来たのだ。異能者が現れても同じことが出来るはず。全てが順調に向かっていた。

 その日まで、達也はそう思っていた。

 縦宮中学という、地元の中学校が武装グループに占拠された。犯人は五名だが、一人一人、強力な異能を持つ異能者達だ。

 今までの実績を踏まえて、達也が交渉人に選ばれた。交渉は順調だった。

 彼らは無能者達に迫害を受け、不満が爆発した者達で、根っからの悪人という訳ではなかった。

 条件としては自分達の安全を保証してくれというシンプルなもの。突入作戦は必要ない。警官達を下がらせて、後少しで交渉成立に思えたその時、異能省が介入してきた。

 異能者の事件は異能省が担当するということになっている。送られてきた部隊は二つ。

 異能派と無能派の部隊だった。

 奴らは、達也の制止を振り切って、強引に突入しようとした。だが、二つの部隊は揉めた。

 あげく、勝手に争い始めた。刺激に敏感な犯人達がいる前で。

 校内から悲鳴と銃声が聞こえた。

 その時を待っていたかのように二つの部隊は突撃。

 見ていられなかった達也も学校内へと侵入した。

 そこで、彼は一人の男と出会う。右足が義足で杖をつく男。

 不思議な円盤を従えていた男。その男は達也に警官かと尋ねた。

 そうだ、と達也が答えると、一人の少女を頼む、と写真を手渡してきた。


「この子は?」

「狭間心。ただの……少女だ。彼女も囚われている。助けろ」

 

 男はそう言うと、校内を歩いてどこかへと向かう。達也は人質が囚われている場所と教えられた体育館に向かった。

 その日は卒業式で、生徒だけではなく多数の保護者もいた。

 体育館のドアを開くと、犯人の一人が立っていた。達也は両手を上げて、犯人の説得にかかる。


「こんなことはもう止せ。何も解決しない」

「こんなことだと!? 俺達の命がかかってるんだ!」

 

 犯人は必死だった。後で調べた所、やってもいない罪を擦り付けられていたようだ。


「安心しろ。俺が何とかする。外の部隊も下がらせる。人質には手を出すな」

「くそっ! 信用出来るか!」

 

 男は手を達也へと翳す。手から炎が発生し、発射態勢となる。


「止めろ!」

 

 その瞬間だ。その男がビニール袋のようにくしゃくしゃに潰れたのは。

 壁をぶち破って、異能派の部隊の一人が突入してきたのだ。

 犯人を潰した男は任務完了と笑みを浮かべながら言う。すると、近くの子供が男を見上げて、


「ば、化け物……」

 

 と言葉を漏らす。

 すると、男は苛ついたように少年を睨み付けた。


「今なんて言いやがったガキッ!」

 

 少年を念力で持ち上げて、その首を絞める男。体育館に悲鳴がこだまする。


「お前なんかなぁ……助けなくても良かったんだぞゴミめ! 俺達はお前達より優れてるんだっ!」

 

 少年は答えられず、苦しみ喘ぐ。このままでは男に殺されてしまう。

 そう直感した達也は腰に差してあったリボルバーを抜き、男目掛けて引き金を引いた。

 男と少年は倒れ、男は死に、少年はけほけほと空気を求めてあえいだ。


「警官ごっこはもう終わりだ……」

 

 大丈夫ですかと駆け寄ってきた浅木に、達也はそう言った。

 人質は生徒達が数名殺された以外、無事に解決したはずだったが、異能省が行った後処理で生徒達のほとんどと連絡が取れなくなってしまう。

 達也は全員殺されたのだと、推測した。社会の闇は人々の想像以上に深い。

 虐殺事件も警察内部に記録として残っているだけで、その事を口にしたら最後消される。

 達也がいた警察署ももうなくなってしまった。

 でも、人々はその事を知らない。都合のいい情報だけ見させられる、人形だ。

 唯一の救いは男に渡された写真の少女だけ発見出来なかったことだ。男の死体は発見されたが少女は行方不明。

 父親を脅して、異能犯罪対策部なる部署を作り上げた達也は、手始めにその少女を探すことにした。

 味方として、達也が火事から救いだし、絶望に打ちひしがれていた少女に協力を仰いだ。子どもに手を借りることを達也は情けなく思ったが、自分にとっても炎にとっても必要なことだった。


「君にはある少女を探し出してもらいたい。名前は狭間心って言うんだ」

「狭間心……心ちゃん、ですか……」

 

 小さな部屋で、炎と面会した。炎は施設に預けられており、機会があるたびに達也は面会している。


「そうだ」

「……人助け……ですか?」

 

 答えを求め、自分を見上げる炎。達也は彼女に向けて強く頷く。


「そうだ。人助けだ」

「こんな私でも……人の役に立つなら」

 

 言いながら、炎はゆっくりと立ち上がろうとした。達也は手を差し伸べる。


「いや……君にしか出来ない」

 

 炎が、達也の手を掴んで立ち上がった。




「ついたな」

 

 ビルの前でパトカーが止まる。気名田が隠れているとされるビルだった。

 達也は助手席に置いてあったポンプアクション式のショットガンを手に取り、ビルの中へ侵入する。

 ショットガンも腰のリボルバーも対異能弾に入れ替えていた。

 階段を昇り、最上階に辿り着く。昇った先の廊下に気名田はいた。


「……待ち構えていたのか」

「いや、お客さんが見えたのでね。出迎えなければ失礼だろう?」

 

 達也はカチャ、とショットガンを構える。


「教授のフリはしなくていいのか」

「必要か?」

 

 気名田は達也を小馬鹿にしたように笑った。達也は険しい表情を見せる。


「そうだな、必要ない。なぜ炎を狙った?」

 

 冷静に訊ねる達也に気名田は笑みをこぼしながら答えた。


「異能殺しを殺すとばかり思っていたのにお友達ごっこを始めたからだよ」

「そうか、よくわかった」

 

 達也は間髪入れずに引き金を引く。ショットガンから散弾が放たれた。

 だが、雷が発生し、全ての弾丸を焼き尽くす。

 くそっ! と毒づきながら達也はショットガンを撃ち続ける。

 だが、撃てども撃てども雷に妨害され、ショットガンの弾は全てなくなってしまった。


「そんなオモチャじゃ、私は傷つかない」

 

 勝ち誇ったように気名田は言い、達也に向けて雷を飛ばす。

 達也は横に跳んで避けてリボルバーを抜くと、早撃ちで一気に銃撃した。

 しかし。

 全ての弾丸は巻き戻しでもされたかのように、達也へと戻っていった。

 自分の銃撃をまともに受け、よろめく達也。手が血で真っ赤に染まる。歪む視界の中で、最後の抵抗と言わんばかりに気名田を睨み、床へと倒れた。


「バカな警官だ……」

 

 気名田は踵を返し、奥の部屋へと歩いて行った。



 


 目的地にパトカーが止まっていることを不審に思いながらも、少女は歩く。

 服は黒と赤色だった。正確には、黒い服に血が付着している。黄金色の拳銃が暗闇の中輝いた。


『心! 無理よ、撤退して!』

「うるさい」

『心!』

「うるさいっ!」

 

 心は携帯の電源を無造作に切る。怒鳴りはしたが、相棒の気遣いは痛いほど分かった。

 でも、止まれない。気名田を放置は出来ない。

 奴を放置すればいずれ、隠れ家も襲撃されてしまうだろう。そうすれば彩香にも危険が及ぶ。

 逃げられる保証はない。守りに回れば殺される。殺される前に殺すしかない。

 身体の傷はある程度回復した。デバイスも後二回程度なら使えるだろう。

 いや、捨て身の三度目を含めるのを忘れていた。

 階段を昇りながら、戦略を思案する。しかし、あの男にどうすれば勝てるのか。

 不意を撃つ暗殺が一番理に適っている。敵が異能を発動させる前に鉛玉を叩きこめばいい。

 だが、それは相手も理解している。狙撃を赦す事はないだろう。

 ならば、正面から対峙して戦うしか心の選択肢はない。奴らは心にすら想像のつかない残虐な方法をいつもおこなってくる。時間をかけることは出来ない。

 階段を昇り切ると息も絶え絶えな様子の警官が倒れていた。かろうじで生きているようで、心を見るや、待て……と声をかけてくる。


「残念だけど、あなたはもう助からない」

「知ってる……そのことじゃない……。君はもう……戦う必要はない……」

 

 気名田の元へ向かおうとした心は歩みを止めた。


「どういう……?」

「君は……俺を知らないが……俺は君を知っている……ある男に頼まれた……君を、助けろと」

 

 心は驚愕の表情で壁に寄り掛かっている達也に近づいた。


「どんな、人?」

「杖を……ついた男だ」

「おじさん……」

 

 茫然と呟く心。一年前の縦宮中学の事件で、心を庇って死んだ男だ。


「俺は……君を……一年間、追ってきた……。君の行動、暗殺の動機、殺された対象……。全て調べて、君がどんな人間か……理解したよ……」

 

 ゴホッ! と血を吐き出して、達也は咳き込んだ。


「君達のような……子供が、手を汚す必要は……ない。逃げても……何もしなくても……誰も責めはしない……」

 

 心には見えないが、達也には心の他にもう一人、赤髪の少女が見えていた。炎と心に、達也は言葉を語っていた。

 だが、心は首を振って否定する。


「例え誰も私を責めなくても、私が私を赦せない。でも……ありがとう、気遣ってくれて」

「待て……心……炎……」

 

 ドサッと、後ろで達也が崩れ落ちる音が心に聞こえたが、心は振り返らなかった。



 

 場面は変わって、炎の病室。

 直樹はずっと炎に対して声掛けを続けていたが、炎は目覚める様子はない。

 うなだれている直樹の元に、水橋が焦った様子で駆けこんできた。


「大変だ! 角谷彩香から連絡があった。心君は気名田の元へ向かったらしい!」

「そんな……勝てるんですか?」

 

 尋ねる直樹に対し水橋は口を閉ざす。それが答えだった。


「くそっ! 炎……」

 

 直樹が炎に呼び掛ける。

 自分が何をしているのか、よく分かった。病人に鞭を打つ行為。

 でも仕方ないじゃないか。俺には……何も……。


「くそっ! あの時と同じじゃないか!」

 

 せっかく覚悟を決めたのに、何もできない自分。直樹は自分のあまりの情けなさに、叫んだ。


「結局俺には何の力もない! 何も出来ないじゃないか……!」

 

 涙が零れ、炎の手に当たる。すると、炎が声を発した。


「……そ、んな……ことないよ……直樹君……」

「炎!?」「炎君!」

 

 医者を呼んでくると、水橋は病室を出て行く。

 炎は、朦朧とした意識ながらも、直樹に言葉を述べる。言葉にのせて、想いを伝える。


「直樹君は……すごい……よ。目には……見えないけど……本当……だよ……」

「そんなこと……ない。俺には結局何も出来なかった。炎が傷ついて、心も無茶をしているって言うのに、ここで座るだけでっ……!」

 

 直樹が涙をこぼしながら、叫ぶ。炎は困ったような顔をして、直樹の手を掴んだ。


「全く……なんで、わかってくれないのかな……。そんなに……何もない……って……言うんなら……私が……力を……貸してあげる……」

 

 炎の手が直樹の手を握る。


「だから……元気出して……ね……」

「炎……? 炎!」

 

 炎の手から急激に力が抜けた。慌てる直樹を病室に入ってきた医者が無理やり退ける。

 ガタンッ! と椅子から転げ落ちた直樹はチクショウ! と三度叫んだ。

 すると。

 その拍子に、直樹の手からほのおが燃え上がった。


「こ、これは!?」


 直樹の叫び声が病室に響き渡る。

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