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暗殺少女の理想郷  作者: 白銀悠一
第六章 壊れる世界
118/129

決着の時

「第三ラウンドだと……何言ってやがる」

「丁度三回目なはずだ。何も出来なかった一回目、戦って負けた二回目、そして三回目は……俺がお前に勝つ」


 一戦目は炎が割って入ったからノーカウント。二戦目は直樹の敗北。三戦目で勝利出来なければ、直樹の正真正銘の敗北だ。

 だが、それはない。直樹には絶対に勝てる自信があった。なぜなら。


(みんなついているからな)


 直樹は力強く拳を握る。残る異能は心の再生異能。頼れるのは己の肉体のみ。

 否、それだけではないはずだ。


「異能は想いの力だ。俺にはたくさんの想いが詰まっている。仲間のな。だが、お前はお前一人分想いだけ、力を持つ者故の孤独だ。いや、それは言い訳か。力を持っていても、人と繋がることは出来たはずだ。お前自身が孤独を選択した」

「……あれだけ見事に負けておいて、えらそうに説教だと? 偉く出たな」


 当初こそ動揺を見せていたキングだが、平静を取り戻し直樹を睨み付けた。

 その瞳からは怒りと同時に感服したような色が写っている。


「しかし、驚いた。ホントにな。まだ立てるとは思わなかった。戦う理由が存在すらしないのに」

「理由ならあるし、負けてもいない。俺が負けじゃないと思う限り、俺が負けることはない」

「ルールにのっと」

「戦争にルールもクソもないだろ。あるのは名誉と人としての尊厳だけだ。尊敬される人間になるか、後世に渡って悪口を言われる人間になるかはその人次第。俺はどうせなら尊敬される人間になりたい」

「……何言ってやがる」


 言葉の意図がわからず直樹に訊ねるキング。

 直樹はだからさ、と、


「俺はお前に勝つが、お前を殺さない」


 甘い言葉を、信念を感じさせる確かな口調で呟いた。


「何だとお前」


 キングが苛立ちを隠さず憤慨する。当然だった。今から命のやりとりをする相手に不殺宣言をするなど、相手を舐めていると言っているのと同義だからだ。

 びりびりとした殺気を放ち始めたキングに、直樹は気にした様子もなく続ける。


「これが俺のやり方だ。今までずっとそうしてきたし、それはこれからも変わらない。人を殺しても何も解決しないからな」

「解決? もう既に取り返しのつかない状況なんだがお前、ちゃんと理解出来ているか?」

「してるよ。世界にはもう三人しかいない」

「三人だと?」

「ああ。俺と、お前。そして心だ」


 確証はない。だが、直樹は確信していた。

 狭間心は生きている。人のいなくなった世界の狭間で怯えている。

 だから、ガラではないが、自分は姫を救う騎士よろしく心を迎えに行かなければならない。

 最大の敵を打ち倒し、早急に合流しなければ。


「知ってるか? 女は待たせるとダメらしい。男はいくらでも辛抱強く待ってなきゃならないが、逆はダメだ。不機嫌になって帰っちゃうんだとさ」

「……お前、何を」


 気が狂ったのかと訝しむキングに対し、直樹はにやりと笑いながら言い放つ。


「さっきも言ったろ? 待ち合わせがあるんだ。……心は怒らせると怖いから、な!」


 足を踏み鳴らして走り出す。力強く足を動かしてキングへと奔る。

 炎の異能で飛ぶことは出来ない。直樹がキングの元へ辿りつくには走って行くしかなかった。

 雄叫びを上げて、拳を振り上げる。直線的な殴打。実にわかりやすい戦いの構え。

 対処の方法はキングにはわかりきっていた。いや、誰でもわかるだろう。既に直樹の戦い方を見切っていたキングでなくとも。


「ふざけんな。吹き飛べ」


 キングは右手を翳し、世界中の人間を殺しつくした漆黒の弾丸を発射した。

 直樹と同じように真っ直ぐに、それは直樹へと命中する。

 悲鳴すら上がらなかった。直樹は何を成すこともなく、第三ラウンドはキングの勝利に終わった。


「ハッ。あっけない。元よりお前が俺に勝つなんて不可能だったんだよ」


 もはや確認するまでもない、とキングが踵を返そうとしたその時、


「まだ俺は負けてない!!」


 死体が消滅したはずの男が先程と同様に拳を振り上げながら走ってくるのが見えた。


「なんだ……!? 何だよお前……」


 キングが動揺し狼狽し、その姿に目を見張る。直樹が生きていた、という事実にも驚きだが、それ以上の驚愕が、キングの表情に張り付いていた。

 それもそのはず。直樹は何やら白いオーラのようなものを纏い、ただ走っているだけとは思えない加速でキングの前へと接近したからだ。


「何だその白い光は――ッ!」

「俺が知るかーっ!!」


 直樹はキングに負けた時と同じ戦法のまま、直線的な戦い方を行った。

 右手で殴る。不思議な白い光を纏った拳で、キングの顔面を殴り飛ばした。

 予想出来ていたはずなのに、瞠目していたせいでまともに受けるキング。そこへ直樹は跳躍し追撃する。

 炎の異能を用いていた時よりずっと速く。


「うおおおお!!」

「ッ!? ぐ――」


 二戦目で、キングが直樹を弄んでいたことを彷彿とさせる。今度は直樹の番だった。

 直樹の想いがキングに勝る。一方的にキングを打撃していた。子どもが行う喧嘩のような動作で、世界を破壊出来る男をぼこぼこにする。

 今の直樹にはそれが可能だった。直樹は理論こそ気付けていないが、誰のおかげかは知っていた。


(心の異能! よくわからないが……)


 キングを殴り、蹴り上げながら思考する。

 心の異能の全貌はまだ不明だが、直樹は心の異能について、解釈の間違いを認めていた。

 これは間違いなく再生異能ではない。もっと別の、強大な異能だ。みんながみんな、誤解していたのだ。

 異能の持ち主である心さえも。生憎、異能は本人が本質に気付きによって性能が上下する。

 本人が自分の実力を認めない限り、自分の才能を自覚出来ない限り、異能が本領を発揮することはないのだ。


(心は特に学習せず暗殺者としての才能を開花させた、と言っていた。前調べもなくドローンを組み立てたり、高度なセキリュティで守られているはずのネットワークにハッキング出来たと彩香が。しかし、それは普通に考えて可能なことなのか?)


 殴りながら、直樹は思案する。キングは苦悶の声を漏らしながら反撃を試みようとしてきたが、直樹の連続打撃がその抵抗を許さない。


(いや、無理だろ。どれだけ才能があったとしても、まずは学習が必要だ。動物には遺伝ですべきことがわかっている奴もいるけど、ドローンの組み立てやハッキングのやり方が遺伝子記憶に刻まれていたとは思えない。銃の扱い方くらいはテレビやら漫画を見てればわかると思うけど)


 つまり――心は。

 自分の異能を使って、そのやり方を導き出したのだ。父の理想を引き継ぐため、彼女がそれを成すに足る暗殺者となった。

 必要な事柄を必要な分だけ。無意識の内に。

 世界の法則に自分を当てはめていたから、己で己の能力数値を定めていたから、それが限界だと錯覚して気付けなかった。

 メンタル達なら考え及んだのかもしれないが、彼女達も本質的には心と同じだ。オリジナルが誤解していたことをクローン達が理解出来たとは思えない。


(くそ! 気付くのが遅すぎた! これほどの力があれば……みんなを守れたかもしれないのに!!)


 歯噛みしながら、仇に拳を振るう。

 キングは弱者だと思っていた相手に一方的に殴られしばしの間放心していた。

 だが、その評価は誤りだった。直樹の中にある心の異能は決して弱者……否、強弱の範疇にあるものではない。

 直樹が殴る相手が破壊をまき散らすものならば、殴る直樹が持ち合わせる異能は。


「――可能性を生み出す異能ちからだ!」

「……が……ぁ」


 見事なアッパーカット。直樹はキングが自分を打ち倒したと同じように、同じ技でキングを打つ。

 宙に舞うキングの身体。落ちていく敗者の姿を直樹はしかと目に焼き付けていた。


「やったか……?」


 砕きかけのアスファルトを無様に転がる王。うつ伏せでダウンしたキングをしばらく見つめ、敵を倒したかどうか確認するため近づいた。


「……倒したか?」


 ピクリ、ともキングは動かない。

 勢い余って殺してしまったのではないかと不安に駆られた直樹だったが、すぐに杞憂だったことに気付かされる。

 なぜなら、


「まだ終わってないッ!!」

 

 とキングが突然起き上がり、直樹に向けて黒弾を放ったからだ。


「何っ」


 緊急回避を行おうとした直樹だったが、完全に不意をつかれたため避けられない。戦いとは非情で無情。

 どれだけ強かろうが想いを託されていようが、死ぬ時は一瞬で死ぬのだ。

 直樹は数メートルはあろうかという巨大な球体に飲み込まれた。


「ハ――ハハハハッ! 結局、負けるんじゃねえか」


 痛みに顔をしかめながら、キングは直樹がいた場所に視線を落として高笑いをした。

 キングしかいない戦場に笑い声が響き渡る。顔こそ笑みを浮かべているがどこか疲れたような、追いつめられているような声だった。

 しばらく笑い、急に笑声が止まる。

 あれだけ嬉しそうにしていたのに、笑顔が凍りつく。


「何だよ……何なんだよ」


 夜も更け、深夜から早朝へと移り変わる狭間、それはとても美しく光輝いていた。

 白。純粋でいて、全ての色を受け入れる懐の深い純白の。

 見る者を魅了する白光に包まれて、直樹は再構成された。


「ふざけるな! なぜ死んだのに生き返れる!?」

「単純だ。俺が死んだら誰が約束を守る」


 一度死んだ直樹は、何事もなかったようにキングへと忌憚なく視線を送る。

 実際に、大したことはない。直樹の死など、約束を守れないことに比べればどうでもいいことだった。

 今、彼が生きるのは全て約束を成すためだ。それ以外の事柄は余剰に過ぎない。


「デタラメだ……ッ!」

「お前に言われたくないよ」


 直樹は余裕の笑みすら浮かべていた。立場が完全に逆転している。

 直樹とキングでは、勢いが直樹の方が上だった。しかし、精神的に勝っているとはいえ、二人のどちらに軍配があがるのか。


「さて、これが最後だ。今度こそ決着をつけよう」

「……ッ! 言われなくとも!!」


 激情に駆られたキングが消える。

 瞬間、直樹の後ろに姿を現した。原理の不明なテレポート。常人なら反応すら出来ず即死する一撃。

 だが、直樹は余裕で対応出来た。


「何度見せられたかわからない……だろ?」

「ッ!!」


 キングが言ったのと同じセリフを述べて、直樹はキングの腕を掴んだ。

 掴んだまま、直樹が口を開く。相手の腕を封じながら、相手に向けて言葉を投げかける。


「単刀直入に言う。もうやめねーか? お前が言った通り、俺とお前には既に戦う理由がないぞ?」

「……ッ、あるぞォ!」


 ぐ、と腕に力を込め、ゼロ距離で直樹を吹き飛ばさんとするキング。直樹はそうか、と呟いた後、


「なら戦おう」


 シュッ!! という音を立てて消えた。


「何……!?」


 自らの十八番を奪われ、呆けるキング。慌てて直樹を探すキングは彼が言ったこっちだ、の一言で直樹の居場所に気付いた。


「後ろだよ、後ろ。自分はよく取るくせにわからないのか?」

「ッ! 調子に乗るなァ!!」


 しゃがんで、左腕による振り向きざまの乱暴な横薙ぎを避ける。

 キングは完全にペースを乱されていた。直樹がわざと挑発させるような口調で話していることにすら気づいていない。


(相手と一対一で戦う時は、怒らせた方がいい。余程の気長でない限り、行動が単調化するから)


 心の教えを守り、直樹はわかりやすい攻撃の数々を捌いていく。キングが直樹の動きを見切ったように、直樹もキングの行動を先読みしていた。

 キングが先手を取り、直樹が後手で攻める。

 紙一重で破壊拳を避けつつ、渾身の打撃を見舞う。

 殴る。避ける。打つ。躱す。回避。一蹴。

 しばらく続いた攻防も永遠には続かない。


「チックショウッ!!」

「――ッ」


 キングが漆黒の衝撃波を放ち、辺りに存在する全てのモノが消失した。

 直樹は瞬間移動で空中へ避けるが、その先にキングが現れる。キングの戦い方が単調ではなくなっていた。

 どうやら殴られ蹴られている内に冷静さを取り戻したらしい。


「オラァ!!」

「ぐ――!!」


 強烈な両手による叩きつけに、直樹はなす術もなく地面に激突する。

 衝撃で地面が砕け散るほどの剛腕に、直樹が息と共に血を吐き出した。

 内臓のいくつかがやられ、肋骨も粉々となる。すぐに再生はするが……。


「お前を倒して、俺が人類最後の勝者となる!!」

「う……っ!!」


 瞬時に立つことこそ出来たものの、体内ダメージによって揺らい隙に、キングは直樹に拳を振りかざした。

 殴り飛ばされそうになって、足で踏ん張る。歯を食いしばりながらキングを殴り返す。

 殴る。殴る。殴る。殴る。

 ひたすら、二人は防御することも躱すことも忘れて殴り合っていた。

 右で殴ったから左手で打つ。左手でぶたれたから右手で叩く。

 世界の在り方すら歪めてしまう異能を持ちながら、原始的な戦闘方法を繰り返していた。


「死ね!」「死ねない!」「くたばれ!」「約束がある!」


 拳の応酬がこのままずっと、永遠に続くかのように錯覚してしまうほど。

 それほど世界は静かで、誰も止めるものはいなかった。

 邪魔の入らない、古典的な闘争。殴れば殴られる。殴られるから殴り返す。

 一対一の殴り合いを繰り広げている内、だんだん空が白くにじんできた。

 夜明けが近づいてきたのだ。


「何で……立てる……? 何で諦めない……」

「言って……るだろ、何度も! 俺の命は俺だけのものじゃない!」


 壮絶なる潰し合い。直樹の顔は殴られるたびに修正され、キングの顔もすぐに元通りとなる。

 だが、二人の体力は確実に限界に近づいて来ていた。荒い息がその証拠。お互いが気力で抗っている状態だった。

 立っているのもやっとの状態で、それでも拳を振るう。子どもの喧嘩のように、互いの善意と悪意をぶつけ合う。

 直樹の心からはいつの間にか、キングに対する一切の悪感情が失せていた。むしろ、同情の念が湧き起こっている。

 直樹は血反吐をこぼしながら話しかけた。手は動かしたまま。


「大変……だったろ、今まで」

「な……んだと」

「お前は……いや、お前も同じなんだろ……? お前だって……救いたい人がいた。でも……ぐ、その人をお前は……守れなかった」


 キングの拳の威力が落ちる。直樹の推測は的中していた。

 生まれついての悪人はいない。善人もまた存在し得ない。

 キングだって、最初はこんなことをするような人間ではなかったはずだ。何色にも染まらない純粋な時期が存在していた。

 だが、環境が悪かった。悪意の満ちた場所に、キングは生まれ落ちた。

 丁度直樹とは真逆……生まれ育った環境に恵まれた直樹が、健康的に親の愛をたくさん受けて育ったように。

 あらゆる憎悪をぶつけられて、キングは世界を壊すほどの悪意をその身に宿した。


「もし……俺がそっちに生まれていて……ぐは、お前がこっちだったら……ぬっ、立場が逆だったかもっな」

「ざけ……ウッ、な」


 人は恐ろしいほど染まりやすく、そして脆い。

 あの人は何々だから安心だ、などという絶対条件は存在し得ない。

 どんな人間だって悪意に染まる。ただそこにいたから、そんな理由だけで人格が歪められてしまう。

 この結末も、ある意味人間の悪意の結果だった。人々の争う心が世界を破滅させる原因を創り出したのだ。

 誰か一人が悪いことではない。世界の人間全てが悪い。そう言い切ってしまえるほどの、人らしい哀れな終末。


「もう……いいんだ。全て……終わった。お前が誰かを恨む必要はない」

「くそ……お前に何が――」

「――何となく、だけど」


 よろめきながら拳を振るう。殴打のやり取りをしながら、直樹は想いをこめて言葉を交わす。


「もし……こんな世界じゃなかったら、いい友達になれたと……思うぞ」

「――ッ! そんなわけ……あるかよ!」


 キングが力強く直樹を打ち殴る。

 鼻が砕けて、血が迸った。すぐに鼻は再生し、元通りに戻る。

 いつ気絶してもおかしくない身体中を駆け巡る猛烈な痛みに耐えて、直樹は名残惜しそうな顔を浮かべる。


「そうか――そいつは残念だ」


 直樹はすぐに真剣なそれへと表情を変化させ、残る力を全て右手に収束させた。

 同じように、キングも全てを賭けた一撃を放つ。

 交差する右手と右手。交わる善意と悪意。

 互いの打撃が相手に直撃した――刹那。

 決着がついた。直樹とキング、二人の信念を賭けた戦いの。


「……俺の、勝ちだ」


 勝ったのは直樹ぜんいだった。

 勝ち誇ることもなく、ただ事実としてそれを述べる。

 人類最後の戦争に直樹が勝利したその時、煌々と燃え盛る太陽が祝福するかのように姿を現した。





「殺せよ。早く」


 倒れ伏したまま、キングが自身の殺害を促してくる。

 太陽のぬくもり感じながら、直樹は首を横に振って応えた。

 それは出来ない、と。


「言ったはずだ。俺は誰も殺さない」

「……不殺の覚悟、か。知ったことじゃねえ。バカみたいに背中を向けてみろ。俺がお前を殺してやる。……お前を殺せるくらいの余力は残してる」


 キングの脅迫めいた文言に、直樹は取り合わない。

 心に会わなきゃならない、と言い残し直樹はキングを放置して歩き出した。


(……そんなことは必要ない。なぜなら)

「バカ……め! しねえ!」


 とキングが殺意を秘めた瞳で立ち上がった瞬間、ぐは……とキングは血を吐いて自死することとなった。


「どっちにしろ……もう限界……ぐ……」


 今度は直樹が膝をつき、血を吐く番だった。

 キングが限界だったのなら、同じように直樹が限界なのも当然だ。

 もう既に肉体は限界を突破して余りあるほど。いつ死んでもおかしくない状況だった。

 もし直樹がオリジナルだったならば問題なかっただろう。だが、所詮は借り物、コピーだった。

 心から借り受けた異能の力による再生力よりも、キングから受けたダメージの破壊力の方が上回っている。


「……まだ……しねない……。こころ……」


 立つことすら困難になった直樹は、心に会うため、約束を果たすため、地面を這って進み続けた。



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