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暗殺少女の理想郷  作者: 白銀悠一
第六章 壊れる世界
111/129

喪うモノ、取り戻すモノ

 大抵の人間は、自分が何者かを知っている。

 自分の記憶に問いかければ、何者であるか返ってくる。

 男か女か、子どもか大人か、趣味、職業、家族構成、友人関係、思い出……etc。

 だが、記憶喪失となるとそうはいかない。いや、そもそもコレが記憶喪失であるのかすら定かでない。

 一度死んだ。そう考えてもいいと思えてくるような、奇妙な感覚。この感覚を言葉で表すのは、とても難しい。


 ――でも、あなたにはちゃんと心があるでしょう?


 私に話しかけてくる、あなたは誰――?

 そう訊ねたが、もう答えは持ち合わせていた。

 狭間心。悪名高き異能殺しの異名を持つ、人殺しのエキスパート。

 もちろん、この評価は伝聞によるものだ。かつての敵、神崎成美から聞いたモノ。


 ――エキスパート、とまで言えるかどうか。私の暗殺方法は正直お粗末なモノ。不意をつくことが最適解であるはずなのに、私は直接対決を行ったこともある。それに、何度も殺されかけている。私は、正直、そこまで強くない。

「その評価は……正しいと思える。どちらかというと生存術に長けているといった方がいいかもしれない」


 原始的なサバイバルとは命を奪うこと。生物の命を刈り取り、植物の命を引きちぎり、喰らうこと。

 戦いとは常に略奪だ。命か物か。そのどちらでしかない。人とは喰らう者であり、盗人でもある。

 そんなイーターでありシーフであり、アサシンである狭間心は、白い場所で自問をまた繰り返す。

 確かに、記憶は眠っている。喪われた、というのは間違いだ。彼女の記憶は、深い眠りについている。

 だから、起こすには目覚ましが必要だ。もしくは王子様のキスか。

 生憎、心はどちらも持ち合わせていない。


(もしくは衝撃的な出来事か)

 

 だが、記憶を取り戻すほどの事態とはどれほどのモノなのだろう。

 心は深く考えなかった。というより、考えたくなかった。

 丁度、そんな彼女の思考を遮るかのように、もうひとりの彼女が話しかけてきた。


 ――そろそろ、真実に辿りつけそう?

「……あなたが辿りつけているなら、私も辿りつけるはず。私はあなただから。でも、あなたが謎を解いていなければ、私にも謎は解けない。あなたは私だから」

 ――別に、記憶に遠慮する必要はない。あなたが解いてもいいの。あなたが真実に気が付いたから、私が消えるわけじゃない。

 あなたの想像通り、私は眠っているだけ。一時の夢を見ているだけ。それを悪夢とするかは、あなた次第だけど。

「だけど、今起きていることは現実。こうしている間にもたくさんの人が死ぬ」


 ビジョンが移り変わる。

 心のいる場所が、真っ赤に染まる。赤、朱、紅。血に染まる世界。

 血でコーティングされた大地を、暗黒が狙っている。滅びは近い。世界はすぐに黒くなる。

 白い画用紙は、様々な色に染まる。色んな色がひしめき合い、どんどん混ざって行く。

 だが、そこに黒は投入してはいけない。しても、多少でないとダメだ。じゃなければ、世界は真っ黒となる。他の色を描き足しても、黒には敵わない。黒は強いからだ。全てを支配してしまう。

 そうなってしまえば、世界は終わりだ。黒く染まった画用紙に未来はない。もう用済み、と言わんばかりに処分される絶望しか存在しない。

 そこに希望を見出すならば、黒を消去するほどの色を塗りたくるしかない。希望は薄い。だが道はそれしかない。

 もしそれでもダメで、まだ世界の存続を望むなら、その時は――。


「新たな……画用紙を……」


 ――その前に、絶望が襲いかかる。私とあなた、狭間心に。


 唐突に世界が暗転した。




 どうやら、迂闊にも眠ってしまっていたらしい。

 心は、自分の携帯の着信音で目を覚ました。避難した狭い洞窟の中で、心は横になっていた。

 相手は、角谷彩香。鳴るはずのない携帯が鳴り、心は敵の罠かと警戒する。下手に出れば、居場所を探知されかねない。


「……でも、直樹に繋がる手がかりとなる」


 探してくれと言いながら、今、心は逃亡している最中だ。理由は不明だが、心は敵に狙われている。

 いや、ある意味自明なのかもしれない。クイーン曰く、心は理想郷の鍵らしいからだ。

 意を決して電話に出る。幸運なことに通話相手は表示通り、彩香だった。

 なぜか、とても、息が荒い。


『やほー、心。……って、記憶喪っちゃった後はまともに話してないよね……』

「あなたが大切な人であることはわかっている。安心して。私はすぐにあなたのことを思いだす……」


 心がそう返すと、彩香は焦らなくていいよ、と言った。


『大丈夫。時間をかけてもいいよ。死なない程度に、ね。あなたは私の相棒だから、そう簡単に死なれちゃったら困るし……』


 まぁ、逆は問題ないんだけど。

 電話口から口元を離して呟かれた彩香の言葉は、心に届かなかった。


「……時間をかけている間に、人が死ぬ」

『そう言うと思ったよ。……一年前から、ちょっとだけ変わったけど、本質はあの時と同じまま。あなたは他人のことを大事にし過ぎ。……もっと……自分を……大事に……しな、いと』

「……どうしたの。大丈夫? 声が……」


 苦しそうな声音。荒い呼吸音。

 その息遣いを聞いて、なぜか心の鼓動が早まって行く。

 知っているからだ。この感覚を。

 何度も、何度も、何度も味わって。幾度なく、その手から零れ落ちた命の……終わりの音。


「……あ、彩香……」

『きゅ……うに……らしくない……いや、あなたらし……いこえ……ださないで……』


 合間合間に、聞こえる吐血音。音と言う情報源が、角谷彩香の命が急速に喪われていくのを、心に伝えてくる。

 必死の形相で、携帯を握りつぶさんばかりに、心は訊ねる。例え、無駄とわかっていても。


「……っ! あなた今どこに……!!」

『たぶん……かもつしつ……のはずなんだけど……くらくて、よくみえないや……』

「暗いところなの!?」

『いや……あかりはついてる……ぅ……はず。……ただ、わたしの……』


 めがひかりをにんしきできていないみたい――。

 その言葉を聞いた時、心は膝から崩れ落ちた。

 もう無理なのだ。どうあがいても。喪われる命を治す術はたくさんある。だが、適切な場所に最適な人間を配置出来なければ、救える命も救えない。

 日本から遥か離れたアミカブル王国まで、心が移動する術はない。

 それに、行けたからと言って、救えるスキルもない。彼女は結局人殺しの暗殺者なのだ。


「そんな……ダメ……しんじゃ……だめ……」

『……まえも……そういってたよね……おぼえてないだろ……ぅ……っ……けど』

「彩香……喋らないで……」


 心の懇願も彩香には届かない。彩香は口を動かし続けた。血反吐を吐き、血の涙を流しながら。

 今言わないで、いつ言うのか。この機会を逃したら、一生言葉を交わすことが出来ないというのに。


『あなたは……やさしい、ひと。そして、きびしいひと。たにんに……あまく、じぶんに、きびしい。あなたは……ぐ……』

「彩香……」

『い、わせて。……あなたは、とてつもなく……つよいひと。だけど……とてもよわい……あなたはすごくせんさいなの。きづいてる?』


 問いかけられたのに、心は返せなかった。

 嗚咽を耐えるのに、手一杯だった。涙を流さないように、声を聞き漏らさないように、耳を澄ませるだけで精一杯だった。

 自分のこころが泣き叫ぶのをかろうじで耐えながら、心は相棒の言葉を聞き続ける。


『……ぁ……あ……どこまではなしたっけ……。もうわかんないや……すぅー。……つたえたいことは……たくさんあったけど……さいごに……どうしてもいいたいこっとが……あるぅから……つたえ』


 ごほごほと咳き込む音が聞こえた。死神が命を狩りたがっている。

 死の神には異能も無意味だ。勝ち目はない。奴らは死にかけている人間を、横から掻っ攫って行く。

 特に、良い人間、善人は大好物だ。

 ふざけるな。出てこい。心はそう叫びたかった。

 私の前に姿を現せ。私が相手になってやる。私が銃で相手をしてやる。いや、戦わずともいい。

 私の命と彩香の命を取り換えてくれ。私は死んでもいいから、私のことは好きにしていいから、彩香だけは。

 そう願う心だったが、きっと神は心のことを傲慢だと思っているのだろう。

 彼女の根底には、自分の命の引き換えに――この地球上にいる全ての人間達を救って欲しいという願いがある。

 深く、深く、彼女自身にも認識出来てない傲慢過ぎる願い。

 理想郷、などというのは所詮まがい物だ。現実的に創れる可能性を考えて、目標にしていたに過ぎない。

 本気で、人を救いたかった。平和を求める祈りが、自分の殺人が、人を生かせると信じてきた。

 だが、それは人の枠をはみ出る願い。愚かすぎた理想。

 だから当然の結果として、角谷彩香の命は消える。


『……こころ……わたしを……すくって……くれて……』

「彩香っ!!」

『――ありがとう』


 今まで心と過ごした時間の全て。

 一年という僅かな時間。だが、嘘をつくこともなく、充実な毎日を遅れた。

 最後には、学校にも通えた。友達まで出来た。

 もう十分だった。短期間で、密度の濃い生活を送ることが出来た。

 だから、彩香は……笑って死んだ。今にも笑い声を上げそうな顔で、この世唯一の理想郷と共に崩れて逝った。


「あ……やか」


 通信は途切れている。もう何を叫ぼうが手遅れ。全てが遅すぎた。

 心は何となく察していた。自分を仲間と呼んでくれた人間の半数が、もう死んでしまっている。


「彩香……返事して……」


 それでも、その声が聴きたくて、その名を呼び続ける。繰り返し繰り返し、名前を叫び続け、とうとう携帯を落としてしまった。

 画面が心の目に映る。着信時に画像が設定されていたようだ。

 そこには、しぶしぶ写真に写る自分の顔と彩香の顔があった。


「う……っ!! な……んなの」


 よろめきながら、携帯を手に取る。拍子に、きちんと固定されていなかったレッグホルスターが外れ、中身が飛び出した。


「なんで……人が死ななきゃならないの。何で戦争なんか起こすの」


 ――それは、平和が戦争の休息期間でしかないから。人は争いの状態が正常。今世界中の人々は、正常な反応として多くの同胞を殺し、当然の摂理としてその命を散らす。

 人は戦いに生き、戦いに死ぬ者。生きるために、他種族を滅ぼせる者。


 また、自分が語りかけてくる。

 自然法則。地球という惑星に……この世界に生まれた以上、あらゆる生命が縛られる法則に、誰もが支配されている。

 だから、抗っても無意味なのだ。暗に、もうひとりの自分はそう告げていた。

 自分と同じ声で、彩香の死を認めている。自分よりも大切だったはずなのに。


「な、にそれ。なら、彩香が死んでもしょうがなかったの……」

 ――死ぬことはしょうがなくない。でも、死んでしまったらどうしようもない。私には人を蘇らせる術はない。


 心は反論出来ない。こころが言うことは事実だ。

 こころは冷静に彩香の死を受け入れていた。つまり、自分も徐々に受け入れ始めているということだ。

 涙が止まっている自分がいた。もうどうしようもない、と諦観している自分もいる。

 受け入れがたい事実として、心は人の死に慣れ過ぎていた。


「……っ。なら……人が争う生き物なら……理想郷なんて創っても意味ないじゃない……。他に方法はないの!?」


 救いを求めて、問いを投げかける。他ならぬ自分自身に。

 だが、こころは答えない。口を閉ざしたままだった。

 お前はもう知っている。答えは目の前にある。そう言われている気がして、目を移す。

 そこには、理想郷ユートピアという名の、人殺しの拳銃が落ちていた。

 金は理想の色。輝かしい栄光の色。だが、どれだけ美しく飾っても、その銃は血濡れるさだめにある。

 どんな高貴なものも、穢れてしまう。血に染まり、だんだんと黒ずんで、やがては黒となる。


「……人が……戦争を起こすなら……」


 心は、ゆっくりと手を伸ばす。父の形見に。初めて自分が人を殺した拳銃に。

 見たこともないような暗い瞳で。その手を徐々に、近づけていく。


「人を――殺してしまえば――いい……」


 その手が、理想郷ユートピアに触れた。


 ――心、まだ起きてたのか? もういい子は寝る時間だぞ。

 

 瞬間、声が聞こえてきた。自分の声ではない。とても優しく、暖かく、安心感を感じさせる声。

 フラッシュバック。心は幼い頃の、父親の声を聞いていた。

 突然、場面が切り替わる。暗い洞窟から、思い出の詰まった、懐かしい民家へと。



「それ、何?」

「あ……いやこれは……。エアーガンだよ」

「エアーガン……って、オモチャ?」

「そうそう。オモチャだけど、お前にはまだ早いよ」


 父親は、自室で何かしら作業をしていたようだ。そこに、幼い自分が入り込んだらしい。

 慌てて隠した黄金色を確かに心は目撃していた。


「なんでそんなものを?」

「父さんの……趣味さ。母さんには内緒だぞ」


 その時の心は、また父さんの秘密が増えた、と無邪気に喜んでいた。

 手元にあった物がエアーガンなどの遊戯銃ではなく、正真正銘の拳銃だったことに気付かずに。

 父親も母親も、謎が多い人物だった。

 仕事は何だ、と訊かれれば仕事、と答え返す人。

 言えるはずもない。如何に正しいと信じて行動していたとはいえ……幼い娘に、父さんの仕事は暗殺者だよ、などと。


「……お父さんって、ナイショゴトばっかりだよね。……何かわたしにおしえてくれないの?」

「何か、か。また漠然としてるな。父さんの誕生日とか……」

「一月二十七日。血液型はO型。好きな人はお母さんとわたしと勇気。……もうはぐらかせないよ」


 父親である狭間信はざましんは、どうにかして娘の好奇心を反らそうと苦心していたが、もう万策尽きたといわんばかりに、頭に手を押さえた。

 ふふ、と得意げになる幼い心と、苦悩する信。

 悩める父親は、そうだ、と何か思いついたように声を上げた。


「心。父さんの夢を教えてあげよう」

「お父さんの……ユメ?」


 父親は椅子から立ち上がり、心に近づいて、彼女を抱きかかえた。

 そして、強い信念を感じさせる瞳を愛娘に向け、その頭を撫でる。


「父さんはな。異能者と無能者……二人の人間が、仲良く出来る世界を創りたいんだ」

「みんななかよく……みんなともだちってこと?」

「それはどうかな。心は学校のみんなとも友達か?」

「う、うーん……あまり話さない子もいるけど」

「でも、喧嘩したり、いじめたりしないだろ?」

「うん。そうだね」

「そういうことなんだ。友達になれとか言ってるわけじゃないんだ。ただいっしょにいても気にしない。喧嘩したりしない。そんな世界になって欲しいんだよ」


 父親の切実な願いに、心は首を傾げて疑問を投げる。


「でも、それってふつうのことじゃないの?」


 純粋過ぎるその問いに、信は思わず苦笑してしまった。

 普通とは数の多さで決まる事柄だ。つまり、今の世の中での普通は、異能者と無能者が争いあうこと。

 だが、心が通う学校でのふつうは、他人と争ったりしないことだった。

 精神の未熟さ故、いじめも喧嘩も起こる。でも、彼らはわかり合うことが出来る。仲直りが出来る。

 汚れきった大人と違って。

 無限の可能性を秘めている。子ども一人一人が宝であり希望だ。

 だから、信は嘘をつく。いや、嘘ではない。理想を口にした。

 自分の言葉を否定し、心のことばを肯定した。それが正しいと信じていたからだ。


「ああ、そうだな。父さんが間違ってた。父さんの言ったことは普通じゃない」

「……お父さんでも間違うことあるんだね」

「ああ。人生は間違いだらけさ。それでも、俺が間違いじゃなかったって誇れることは」


 信は心を高く掲げた。心の底から嬉しそうに、笑みをこぼしながら。


「母さんと出会って……心と勇気が生まれたことだ」

「あはははっ! お父さん! 高い……高いよ……あははははっ!」


 父親と娘の楽しそうな笑い声が、部屋から響いていた。




「――はっ!!」


 気付くと、また洞窟に心は戻っていた。

 いや、最初からどこにも行っていない。ただ、頭を記憶が駆け巡っただけだ。

 手には、理想郷ユートピアが触れたまま。暗すぎる一番効率的でいて最悪な方法に頼ろうとした状態のままだった。


「今のは……父さん……幼い私……」


 衝撃的なことが起きれば、記憶が目を覚ます。心の仮説は当たっていた。一番当たって欲しくなかった説だったのだが。


「理想郷……みんなが仲良く暮らせる場所……」


 自分は何をしていた。心は自戒する。

 自分が手にするべきはそんな暗い世界ではない。

 もっと明るく、もっと美しい。そんな世界だ。

 理想の色の様に黄金の……誰もが輝く美しい……。


「黒じゃない。白い場所。灰色でもない真っ白な……」


 そこに辿りつくためにはどうすればいい――?

 自問したが、まだ答えは出ない。ならどうすればいいか。

 前の心にもわかっていたが、今の心にもわかっている。より明確に、より濃密に。


「……敵から逃げれば、直樹が攻撃を受けるリスクは減る。でもあの男がいる以上その作戦は無効となった。むしろ、こちらから向かうべき」


 心は携帯に目をやり画面をタップし始めた。

 ぱっぱっと移り変わる画面で、目当てのアプリを起動させる。


(恐らくは探知される。でも、私が常に移動し続ければ問題ない)


 リスクはある。だが、リターンも大きい。なら実行しない手はなかった。


「見つけた。結構遠いけど……行くしかない」


 画面に映るのは、神崎直樹がアミカブルで新調した携帯だった。

 戦時下で通信妨害が起きる最中、彩香が連絡出来たということは無能派の暗号回線の一つを使って送受信していたとしか思えない。

 だが、彩香が死んでしまった以上、その通信網を使うにはリスクが多すぎた。常に変化するセキュリティシステムに、まんまと探知されてしまったことだろう。

 しかし、直樹の居場所は知られていない。あくまで知られたのは心だけだ。ならば。


「私が逃げ切って、直樹を見つけ出せばいい。今までと変わらない」


 そう心は言い切ったが、確実に事情が変化していた。

 心はもう逃げない。取り戻したからだ。

 自身の記憶を。狭間心としての在り方を。


「ありがとう。彩香、父さん」


 夢から覚めた心が、理想郷ユートピアを掴み握りしめた。


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