VRMMOの利点①
VRMMOという設定の優れているところは、登場人物への自己投影がしやすいという点にあります。
例えばですが、私は戦闘訓練など受けていません。
ですから、戦闘シーンを読んでいても「自己投影できません」。だって、戦闘行為に対するイメージが湧きませんから。
しかし、VRMMOという単語を間に挟むと話が変わります。
戦闘シーンとは、普段やっていゲームの戦闘の延長線上。これならイメージしやすく、「自己投影できる」ところまで印象が変わります。
VRMMO―RPGという「自分の体を動かす感覚で動くキャラクター」で「ゲームの戦闘をする」遊びなら、理解できるのです。これが「自分の体で戦闘をする」になると理解できないのに、です。
人間、理解できるところから順に積み重ねてしまえばなんとかなるという話ですね。
他の利点として、異世界転移などで魔法を使うシーンを読者に納得させる一助になるというのもあります。
普通の人は魔法など使えません。ですから、異世界転移という現象の後に魔法を使えるにしても、その理由付けが必要になります。そこで出てくるのが「VRMMOと同じやり方で魔法を使おうとしたら出来た」という説明です。
魔法の使い方などを誰かからレクチャーしてもらうのなら、その理由付けが必要になります。魔法を使える説明をする為の、更にその為の説明が必要になるのです。ゴテゴテして分かり難いから、「VRMMO」というクッション一つですっきりまとめるのです。
……私も、そのクチです。それ以外にも理由はありますが。
これは魔法だけでなく、スキルなどにも同じ事が言えます。主人公の強い理由、特別な理由をすべて一つの設定で賄えるのです。便利ですよね。
あと、VRMMOというジャンルが流行したので、説明が最小限で済むという利点があります。
ゲームのシステムそのものはマンネリ化し、オリジナリティがあっても一から十までオリジナルでなく、半分以上は「説明不要な設定」となっています。これは完全にオリジナルのゲームシステムだけだと読者が上手くイメージできなくなる危険性が高いことに起因しますが。
説明が少ないという事は話のテンポが良くなり、読みやすくなるという事です。これを「説明の努力を放棄した」という人もいるでしょう。が、手軽に読みたい読者には説明の少ない分かりやすい話の方が喜ばれるというニーズに沿った戦略なのであまり問題視すべきではないでしょう。似たような言葉に「中世ヨーロッパのような街並み」という説明もありますが、これも似たようなものでしょうね。
他にも、「なろう」では人気ジャンルなので読者の確保がしやすい、読んで面白かったジャンルなので自分でも書いてみたい、実際にこう言うゲームをやってみたい。
様々な理由があると思います。
VRMMOを批判する読者様は、「またVRMMOか」ではなく、「他と何が違うVRMMOなんだろう?」と考えてもらえると、いろんな作者が喜ぶと思います。