星降る夜3
クリスティーナは心地良い風を頬にうけ、ぼんやりと魚たちが造り出す水面の波紋を見ていた。
突然、背後から背の高い草花の揺れるカサカサという音がした。クリスティーナは、反射的に振り向くと其処には青年が立っていた。彼は夜色の髪と新緑の眼をもち、均整の取れた体からは気品が漂っていた。
クリスティーナは、突然現れた男に驚きとまどっていた。
彼もまた驚いていたようにクリスティーナには見えた。
青年は、止まっていた時を進めた。
「驚かせてしまったね。すまない。湖の美しさに眼を奪われてついつい足を延ばしすぎたようだ。」
彼は踵を反そうとしたが、クリスティーナが声を掛けた。
「そんな、このワナ湖は民が自由に散策して良いのですら。気になさらないでください。少しびっくりしてしまって恥ずかしいですわ。」
クリスティーナの頬は咲き始めの薔薇のように色づいていた。それを見た彼も笑みを浮かべ二人は名を名乗りあった。
「僕の名はラインハルトだよ。君は?」
「私は、クリスティーナと申します。」
それから、二人は、他愛もないことを話し合った。ラインハルトは、父親と共に森に入ったことを。クリスティーナは森の近くにすんでいることを。クリスティーナの緊張も解けた頃、ラインハルトは手紙を手にした。クリスティーナは、すぐに自分が先ほど認めたものだとわかり、顔を真っ赤にした。
「さっき、葉の船に乗り僕のところへやってきたんだ。もしかして君のものかな。」
ラインハルトはな半ば確信を持ちながら尋ねた。
クリスティーナは、俯き頷いた。
彼女は恥ずかしさから、咄嗟に何か喋らなければと思った。
「あの、これは、誰かに出したわけではなくて。」
「うん。じゃあ僕が ‘’まだ見ぬあなた‘’に立候補してもいいかな。」
ラインハルトは惚れ惚れするような微笑みをクリスティーナに向けた。
クリスティーナは予想もしない申し出に言葉がででこなかった。
クリスティーナがやっと出した声は消え入りそうだったがラインハルトには聞こえていた。
「は、はい。」
ラインハルトは満面の笑みを浮かべた。