星の降る夜。
「ティーナ。かわいい。」
そう言ってクリスティーナの頬を撫で抱きしめているのは、まだ少年ぽさが残るラインハルトだった。
抱きしめられたクリスティーナは、頬を朱に染めながらも嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
二人の出会いは、クリスティーナが16歳になった年だった。
その頃のティーナな夢見がちな年相応の好奇心を持った娘だった。とある事情から両親の知人であるジョナサン シェパードのところに身を寄せていた。ジョナサンやその妻であるメアリーはクリスティーナを気遣い優しくしてくれた。しかし、クリスティーナは両親と離れての生活に寂しさで気が落ち込む時もあった。そんなときは少し離れた森の湖へ行き水面を見ていた。
とある日、クリスティーナは両親からの手紙を読みため息をついた。クリスティーナの両親は王都で暮らしており、手紙には、まだしばらくクリスティーナと一緒に暮らせないばかりか会うことさえできそうにないと認めてあった。
クリスティーナは、両親に会えない寂しさと憤りを抱え今日も湖へと足を運んだ。
きらきらと揺れる水面を見ていると心の小波も穏やかに 落ち着いてきた。そして、透明度の高い水面を覗いて見ると数匹の魚が見えた。小さな魚に中くらいの魚。大きめな黒い魚に淡い色の魚が寄り添い仲睦まじく泳ぐ姿に見えた。
クリスティーナにその魚の群れは、一家族のように見え目が離せなくなっていた。
暫くして、クリスティーナは手紙をもう一度取りだし両親への返事を書き始めた。
書き終えた手紙をお気に入りのレース編みの鞄にしまうと、新たに便箋をだしまた筆を走らせた。
その手紙は 未だみぬあなたへ と始まっていた。
遠くに暮らす両親へは明かせぬ心情や憧れの結婚いろんなことを書いた。そうして、書き上げた手紙を大きな葉を船にして乗せて流した。誰かが読むなんて考えもせず誰にも読まれず水のそこに沈むと半ば確信して、クリスティーナは船を見送った。
その頃、森への視察にきた父についてきたラインハルトが独り集団から外れて湖に来ていた。
なんだか小さな頃来た湖をみたいと思い立ち来てみたラインハルトは懐かしさと湖の美しさに心洗われていた。