雨上がり2
「ふぅっ。」
クリスティーナは、息を吐くと冷めきったお茶を口にした。
興奮状態だったエドワードをやっと寝かしつけて落ち着いたところだった。
クリスティーナは、昼間の出来事を思い出しては信じられなかった。まるで白昼夢のようにさえ感じていた。
だが、今 考えなければいけない事はただひとつだった。
しかし、頭の中は今日の出来事で一杯だった。
あのあと、クリスティーナが放心状態でいるうちにラインハルトは口早につげていた。
「直ぐにでも出立したいけど、ティーナもじゅんびがあるだろうしね。
明日の朝に迎えにくるよ。
準備といっても何もいらないならね、大切なものだけもつといい。」
「ま、待ってください。私まだ、ご一緒するとは申し上げておりません。」
クリスティーナが焦って口にしたが。
「エドが泣いてるんじゃないか?そういえば、祭りにいかないのか?ティーナは準備で忙しいな...。よしわたしが連れていってこよう。」
「えっ?いいえ、大丈夫ですわ。」
とクリスティーナが言い終わるや否やクリスティーナの後ろからかわいい声がした。
「行くぅ!ハルトさまと一緒に行くよ。ママは待ってていいよ!」
エドワードが頬を緩ませ眼をキラキラと輝かせていた。
「えっ」
クリスティーナは、息子の言動に驚いていた。
「では、いこうか!外は寒いぞ。なにかはおらなければ。ティーナ、エドの上着をよういしてくれないか?」
ラインハルトはこんなに気が付くおとこだったか?ティーナが唖然と見ていた。
ラインハルトは、不意にクリスティーナの耳に口を寄せると、
「大丈夫、きちんと面倒はみれるよ。安心して。慣れてるからね。」
それって奥さまとの間にお子様が...
一体、おいくつなのかしら?
確かにラインハルトの家ならば跡継ぎがいるであろうこともわかっていたことだった。
だけれども、目の前で自分ではない女性との幸せな暮らしの片鱗を見せられては心は平穏ではいられなかった。
クリスティーナが暗い思考に陥りながらも
「はい。」
言われる侭、息子に上着をきせると、二人はてを繋ぎ出掛けていった。
二人が出ていくのを見つめていたが二人の姿がみえなくなると、
「あ、雨があがってるわ。」
クリスティーナが誰にでもなく呟いた。