小雨、降る。
あくる朝、クリスティーナは雨音で目を覚ました。
いよいよ今日から祭りだというのに、今年は雨なのね。
祭りは3晩続けられるがやはり、3晩目をメインとしていた。
初日の今日は、晴れているにこしたことはないものの雨でも問題なかった。
にもかかわらず、クリスティーナの気分は鬱いでいた。それは、祭りの日 。そして、雨 。この条件で思い出したくはないのに、思い起こされる出来事があったのだ。もう、幾年も前のことが 今もまだ昨日のことのように鮮明に思い浮かぶ彼女にとっては辛かった。
きっと、年月がわたしを癒してくれるばす。あと何年かしたら、こんな日を静かに受け止めることができる。
本当に?
この瞬間でさえ胸が苦しくてたまらないのに?
クリスティーナは鬱々と思考し、動けずにいた。
「おかぁさん、おはよ。」
可愛い声が右下より聞こえてきた。
クリスティーナが視線を向けると彼女の髪色と同じ薄い栗色の柔らかな髪が目にはいる。
そして、クリスティーナの心を奪っている人と同じように春の日差しを思わせる笑みがあった。
髪の色も目の色も違っているのに、あの人と同じに見える。
クリスティーナは一瞬、切ない表情を見せたが
すぐに切り替えた。
「おはよう。エド。早起きね。今日はお祭りだからお昼に出店にいってみましょうね!」
エドと呼ばれた小さな男の子は笑った。
丁度、正午の鐘がなり、フードを被った男の子が目を爛々と輝かせて。
「かぁさん、いこ。いこ。まだ~。…」
「はい、はい。いこうね。」
クルスティーナがエドワードの手をとり、戸口へと進んだだ時、コンコン。ノックが聞こえた。
クリスティーナは誰かしら?と首を捻りながらも戸口へと向かう。
「どちらさま?」
戸を開けた瞬間、クリスティーナは固まった。
目の前にいたのは、クリスティーナがわすれられない彼だった。
「ハル…ト様。」
「やぁ、ティーナ。久しぶりだね。」
彼は 笑みを称え、まるであの頃のようにクリスティーナへと声をかけた。
まるで、あの出来事がなかったかのように。をたみ
あの時のように霧のような小雨がふっていた。
呆然とするクリスティーナをクスリと笑いながらハルトが、口を開いた。
「ティーナ、迎えにきたよ。」