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Cesario-7

〈注釈〉

※1…以前にもあったように、魔法使いは奇人変人の多い職業と思われている。

 「――で。私、お父様たちにお話があるの。」

ご挨拶もそこそこに、王女は腕をお組みになって、仁王立ちあそばせながらそう仰せになりました。陛下や王子、もちろんわたくしも王女の方へ顔を向けますと、彼女はもったいぶるように少し間をおいてから、こう高らかに宣言なさったのです。


 「私、このデュラン=コナーと結婚したいの。……いいえ、するわ!」


 それからはもう大変でございました。ええ、特に陛下です。王女のお言葉をお聞きなさるや、しばらく放心状態、そう、まるで魂が抜けてしまわれたかのように石化してしまったのでございます。それから急に思い出したように言葉にならない呻き声をあげ、そしてお顔を赤くしたり青くしたり、最後にはついに土気色になってがくんと膝から崩れ落ち、顔をくしゃくしゃにして失神してしまったのでございます。

 陛下はこの世の多くの父親たちと同じく、ご息女であらせられるソフィ王女を心から大切になさっていらっしゃったとお見受けします。その王女がこのようなどこの馬の骨とも知れぬ、しかもただの一般市民同然の、ましてや魔法使い(※1)なぞと結婚するとお聞きになっては、そのショックは計り知れません。

 陛下が気を失われてから使用人たちは大慌てで陛下の介抱をし、そのまま医務室へとお運びしました。王子と王女はと言うと、その様子をどこか冷めた目でお見つめになっていらっしゃいました。


 「……あの、陛下は大丈夫なのでしょうか……。」

私がそう申し上げますと、王子はやれやれと首を横に振り、私の肩にぽんと手を置きました。

「まー心配いらねえよ。親父もそろそろ子離れするいい機会じゃないか?」

「そうね。お父様は私のことに構いすぎだわ。」

王子に賛同するように、王女も頷かれました。

「……本当にそうでしょうか……。」


 ――ところで、です。

 「――……エール様、先程のお話の続きですが……」

私はまだ何も知らされておりません。

「ああ、そうね。私はあなたに惚れたの。だから結婚してちょうだい。」

――ええと……。

「お前、そんなにマジだったのかよ。ていうか、やっぱりデュランきょとんとしてるじゃねえか……。」

王子が呆れたように眉を顰めてそうおっしゃいました。よほど私は間抜け面をしていたのでございましょう。

「……お兄様もうるさいわね。デュラン、行きましょう。」

王女は私のシャツの袖をお引きになりました。


 「――それでエール様、わけを話してはくださいませんか?」

私は廊下の壁にもたれかかる王女のそばで、片膝をついて彼女のお顔を覗き込み申し上げました。王女は何か迷いのあるような瞳で私を一瞥なさり、お顔を赤くされながらふいとそっぽを向いてしまいました。

「……話したくないわ。」

「……そうですか。わかりました、無理にお訊き致しません。ですが、陛下にはどうかきちんとご説明をお願いしますね。お父様はきっと、とてもご心配なさっていますよ。」

王女からお返事はいただけませんでした。そのときの王女のお顔の悲しそうなこと……何か深いわけがあるのでしょう。ですが王女が「話したくない」とおっしゃる以上、私は王女のご意志を尊重し、それ以上は何もお尋ねしませんでした。

 ……誰にでも等しく、他人に話したくないことはあるのでございましょう。私には――ある、のでしょうか。

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