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Cesario-4

 「――まあまあ、お二人ともどうか落ち着いてください。」

わたくしが間に入ってお止めいたしますと、お二人ともそっぽを向いてしまわれました。……やれやれ、ですね。

「とにかくキロミエール様、どうかお戻りくださいませ。アルバさんも心配しておられますから。」

私が跪いてお頼み申し上げると、ソフィ王女はむずがゆそうな、なんともいえない表情をなさって、こう仰せになりました。

「そのキロミエールも気持ち悪いわ。エールで結構よ、デュラン。」


 王女を近くに控えていたお手伝いの方にお連れ出し頂いてから、私は王子の方へ向き直りました。

「王子、突然お訪ねして申し訳ございません。」

「いいさ別に。それより、よくここだとわかったな?」

王子は私に、紅茶を淹れてくださいました。そのお味をなんと申し上げればよいものか……何者にも代えがたい、それは貴いものでございました。

「ええ、王女のおいでになる場所は、やはりお親しい方の許ではと思い当たりまして。」

「ははは、親しい? 俺はあいつとはそんなに仲良くないんだよ。」

王子は左手をひらひらとお振りになりました。

「……しかし私には、たいそうお優しい御令兄かとお見受けしましたが。」

「や、やさし……ったく、やめろよな。気持ち悪いって!」

王子はお召し上がりになっていた紅茶が気管に入ってしまわれたようで、少し咳き込んでからそうお答えくださいました。その様が照れ隠しのようで、失礼ながら、私は笑いをこらえることができませんでした。

「ええ、そういうことにして差し上げましょう。――では王子、ご夕食前に失礼致しました。私はこれで。」

「ああ。」

そう申し上げて、私は王子のお部屋を退出いたしました。


 「――おお、エール王女! 一体どちらにいらっしゃったのですか。もう授業が始まる時間でございますよ!」

まったく、このアルバはどうしてこうも口うるさいのかしら? 私には家庭教師なんて必要ないというのに!

「別に。ちょっと風に当たりたかっただけよ。そんなに騒ぎ立てなくてもいいでしょ。」

「王女……。しかし、時間はきちんと」

「きちんと守るんでしょ。はいはい。」

ああもう、またあのムカつく家庭教師に教わらなくちゃいけないなんて……。あんなヤツに教わることなんて何もないわ!


 「ソフィ様。お勉強の時間は何時から何時まででしたか?」

むかーっ。またこいつは私のことをファーストネームで呼んだわね。何度も何度も何度もエールと呼べと言っているのに、そのたびに「ソフィ様こそが正しい呼び名でしょう」なんて。――もういい、諦めたわ。

「……七時から八時十分。」

「その通りでございます。しかし今は七時五分!」

わかってるわよ。いちいちイヤミな言い方しなくてもいいじゃない。まったく、大人げないったら。このデブ! デブ!!

「ソフィ様。時間を守ることは、じょ、う、し、き、です! これからは遅刻のなきよう。」

「……。」

やっぱりキライだ。この名前も、この家庭教師も。


 ……あ、そうだ。いいこと考え付いちゃった!

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