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Winning Ticket-18

 わたくしが王子の方を向きますと、王子は視線にお気付きになったのか、「ぎくっ」という擬音が聞こえそうなほどあからさまにお顔を引きつらせなさいました。そしてその後、ごまかすようにお笑いになりました。

「――フレッド! デュランさん!」

「……アンナさん。」

アンナさんが人ごみを掻き分けてこちらに走ってきました。

「あ……フレッドは?」

彼女は横たわるフレッドさんの身体を心配そうに揺らしました。私に少し、罪悪感が生まれます。

「ええ、気絶しているだけです。――アンナさん、すみません。私のせいでこんなことに……。」

アンナさんはほっとしたように笑うと、首を振りました。

「いいえ。これで彼もわかってくれたと思います。こちらこそ、ごめんなさい。」

アンナさんはそうおっしゃると、フレッドさんの頭に手を添えて、彼の上半身を抱き起こしました。すると、彼は気がついたように呻き声をあげました。

「……う……。アンナ……?」

フレッドさんがアンナさんを見つめると、彼女はすかさず――なんと、彼の右頬を平手打ちしました。ばっちんという音に観衆たちは色めきます。きっとこれが、修羅場だとでも思っているのでしょう。

「!?」

フレッドさんは信じられないものでも見たように、目を見開き呆然としています。アンナさんの呼吸は乱れ、目には涙を浮かべていました。

「……フレッドのバカ! 心配したじゃない……!」

そう言った途端、フレッドさんは泣く彼女を抱きしめました。私はそれを見て、その場を去ることにしました。フレッドさんが一度こちらを見て何かを言いかけましたが、立ち止まりません。――もはや、この場に私のいる理由もないことでしょう。

「あなたの幸運を祈ります、フレッドさん。」


 さて、あとは――

「……王子、どちらへ?」

「うっ!」

そそくさと立ち去ろうとする王子の後ろ姿を見つけた私は、お引止めいたしました。王子のお友達と思しき方が、にやにやと笑っていらっしゃいました。

「……わ、悪かったよデュラン。でもどうしても気になって……。」

王子は苦笑いなさって、お友達に先にお帰りになるようおっしゃいました。

「アルバさんにご連絡なさいましたか? いつもお車でお帰りになられるのでしょう。」

「……あ、ああ。」

「お迎えをお呼びしましょう。王子、よろしいですか?」

王子が頷かれるのを見て、私は電話をかけました。


 「……十分ほどで到着するそうです。それにしましても王子、よく周りの人に気付かれませんでしたね?」

「有名人ってのは、思ったより気付かれないモンなんだよ。王子様が一般人に紛れ込んでるなんて思わないだろ、普通?」

確かに、私もはじめは全く気付きませんでしたが――

「……放課後にさっきの友達――クロウっていうんだけど、アイツから連絡来てさ。“面白いもん見れるからデ=カラット広場に来い”って。そしたらデュランが決闘しててさ――」

なるほど、それでご覧になっていたというわけですね。

「でも、さっきのデュラン、めっちゃカッコよかったぜ! 俺もあんな風にパーッと魔法使えたらなあ……。」

そうおっしゃると、王子は少し寂しそうにお笑いになりました。

「……ご心配には及びません、王子。この私が――」

「“ワタクシが王子を魔法使いに”だろ? わかってるよ、俺はお前を信じてる……デュラン。」

王子……――

「では、そのためにもこのようなところで油を売っていらっしゃるようではいけませんよ、王子。」

「う。……だから、それは悪かったって。」

思わず私は笑ってしまいました。それをご覧になると、王子もお笑いになりました。

 「……お前実は、結構イイ性格してんだろ。」

王子はぼそっと小声でそう零しました。私は聞こえないふりをして、車が到着するまでの間、王子と何気ない雑談をし申し上げて過ごしました。


 「ところでさ、さっきの火の魔法。あれって火傷しそうだけど……熱くないのか?」

「心頭を滅却すれば火もまた涼し、ですよ。」

「え……」

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