Winning Ticket-15
ああ、ついにこの場に来てしまいました。こんなにも暑い日ですが、デ=カラットの美しいカスケードは相変わらず涼しげに飛沫をあげています。
「――待っていたぞ。」
フレッドさんは昨日のTシャツ姿と打って変わって、かっちりとした軍服に身を包んでいらっしゃいました。……暑くないのでしょうか。いえ、そんなことも気にならないほど集中なさっているのでしょうか。というよりも、月曜日の六時によく予定が空いていたものです。……私も人のことは言えませんが。
「……デュランさん、ごめんなさい!」
「アンナさん?」
彼の後ろで申し訳なさそうに身を縮めていたのは、不本意ながら私と彼がかけているアンナさんでした。
「……私、昨日酔っていて、つい彼に携帯電話を預けてしまったんです。こんな大変なことになるなんて思ってなくて……。私も彼を止めようとしたんですけど……。」
彼女は今にも泣きそうな顔で首を振りながら、そうおっしゃいました。なるほど、昨日彼女の携帯から私に電話がかかってきたのはそういうわけでしたか。――いえ、それよりもです。
「あの、フレッドさん。やはりこの決闘を取りやめることはできないのでしょうか……。」
ここは人が多いですし。と付け足して、私は最後に縋ってみました。すると彼はこうおっしゃるのです。
「……このデ=カラット広場は以前、幾度となく決闘場として使われてきた聖地。この場こそ、貴様と俺の決闘にふさわしい。」
……そっちじゃないでしょうに。
「しかし、私は本当に彼女とお付き合いする気はないのです。ですから、彼女をかけるとおっしゃっても……。」
私、女ですし。私は心の中でそう呟きました。
「逃げるのか、デュラン=コナー? 貴様の魂胆は知っている。俺に遠慮しているか、そういうところを見せてアンナのポイントを稼ごうとしているんだろう!」
……ポイントとは一体何の話でしょうか……。
ですがやはり、彼は話を聞いてくださらないようでした。これでは説得しようとするだけ無駄です。
「……わかりました。」
私はそう、腹をくくったというものでございます。
「……俺の名前はアルフレッド=アール=ゲーリック。陸軍軍曹、第六分隊長。」
そう名乗りを上げて、彼は腰の剣を抜きました。細身の諸刃の剣です。きっと扱い慣れていらっしゃるのでしょう。
軍人さんですか。――なるほど、魔法を扱える私に決闘を挑むわけです。以前にも申し上げた通り、魔法は軍事訓練にも用いられているものでございます。軍曹というからには彼もまたその訓練を受けているでしょう。それも、わが国きってのスパルタ訓練を課すと噂される陸軍ですから、並のものではないはずです。魔法と剣、それにおそらく格闘技にも秀でていらっしゃるでしょう。これらが組み合わされば、たとえ魔法を専門に扱っている私とはいえ油断はできません。
「……デュラン=コナーです。」
周囲の人々が、剣を抜いた彼と私が向かい合っているのに気付き始めました。どうやらフレッドさんといると否応無く注目を集めてしまうようです。
「――早く終わらせよう、デュラン=コナー。」
彼は私を一睨みして、剣を構えました。その後ろでアンナさんが不安そうに私を見つめます。
ああ、本当に。早く終わればよいのですが。




