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Winning Ticket-14

 あまりよく眠れませんでした。普段は夢も見ないほど熟睡しているわたくしではございますが、こんな夜は久しぶりのことでした。


 朝食を終えて携帯を見ると、一通メールが届いているのに気づきました。差出人は――……王子?

『絶対結果教えてくれよ! あと絶対勝ってこい!』

……どうやら、王子なりに私を応援してくださっていらっしゃるようでした。とはいえ、お楽しみなさっている節の方が多いのですが……。


 「アルバさん、初日からこのようなことを申し上げるのも大変恐縮なのですが……本日の魔法の授業を休講してもよろしいでしょうか。」

お昼ごろ、私は王子のマネージャーを務めていらっしゃるアルバ氏に事情をお話し申し上げました。すると、アルバ氏は既に王子から事情をお聞きになっていらっしゃるようで、

「お話は伺っております。災難でしたねえ。」

とおっしゃって、私の厚かましい申し出を快諾してくださいました。このようにご迷惑をおかけしてしまうなど、なんと畏れ多いことでございましょう……。


 「――ねえ待ってフレッド! やっぱり考え直して!」

一方、「かけられた対象」のアンナは、話を聞かない男を説得しようと奮戦していた。

「アンナ。これは男同士の闘いだ。悪いが君は黙っていてくれ。」

やはり思い込みの激しい男、一筋縄ではいかない。

 フレッドは黙々と決闘の準備をしていた。着慣れた軍服に身を包み、得物の剣を差し、髪をオールバックに整える。これが彼なりの正装であった。決闘たるもの、相手に敬意を払って正々堂々勝負する……アンナという女性は、それに値する人物なのである。彼はそう信じ込んで、的外れな勝負を挑もうというのだ。

 あんな軟弱野郎には絶対に負けない――そして俺はアンナと恋人に……。

「ふ、ふふはは。」

彼の妄想の産物である不気味な笑いに、アンナは身の危険を感じたとかいないとか……。


 あと一時間。

 午後五時の部屋で、洒落た壁掛け時計を私は溜息をつきつつ見上げました。窓から差し込む空色はほんの少しだけオレンジの混ざった光でした。今日もきつい夕方の日差しが私めがけて突き刺しにくることでしょう。私は薄手の白いシャツと夏物の黒いスラックスという、いつもとそう変わらない出で立ちで出かけようと思いました。一方的に押し付けられたとはいえ、まさか約束を違えるわけにもいきません。つくづく私は甘いのです。自分にも、他人にも。

 「おでかけですか?」

お手伝いの方は私に持ってきてくださったお茶の、空になったカップを片付けながらおっしゃいました。

「……ええ、少し用事ができてしまって。王子の家庭教師をまだ一日もお務め申し上げていないのに、お恥ずかしい限りです。」

「そんなことはございませんよ。王子もきっと、そうお思いになっていらっしゃるでしょう。」

彼女は笑ってみせてくださいました。彼女は黒い髪の素敵な女性でした。


 それから私は部屋を出て、デ=カラット広場に向かいました。デ=カラット広場はバルドナ城の正門前の大通りを十分ほど真っ直ぐ行ったところにある、大きなカスケードのある石畳の広場です。この国の文化遺産、観光名所になっていて、休日には多くの人で賑わう場所でした。

 「――……待っていたぞ。」

五時三十分。彼は既に私を待ち受けていたようでした。

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