Winning Ticket-13
〈注釈〉
※1…デュランの本性が垣間見える部分。
――王子、それは漫画か何かの読みすぎではないでしょうか?
などということを申し上げるわけにもいかず、私は不本意ながらその「決闘」とやらを受けて立たねばならなくなりました。想い人をかけた男同士の闘いならば……「男同士」の……。ますます、私の素性を明かせなくなってしまいました。
ところで、決闘という言葉はあれど、その内容とはいかなるものなのでしょうか? 文明再構築されて久しいこのご時世、そのような言葉を口にする者もほとんどいないでしょう。まさか私がその当事者になるとは思いもよりませんでした。
決闘するというからには、やはり私は魔法を使わねばならないでしょう。魔法を今日出会ったばかりの人間に向けることなど、とても好ましいこととは思えません。やはりアンナさんの誤解を解いて、フレッドさんを説得して取りやめるのが一番良い解決法だと思われます。もちろん私の身分は隠して……。
「……で、デュラン。お前自信あるのか?」
王子は依然として楽しそうに、私を質問攻めするのでございます。
「はあ、お相手を務めるぶんには問題ないかと存じますが……。ただ、できれば争い事は……。」
口を濁す私に、王子は口を尖らせました。
「お前、そんなんで相手が納得すると思うのか? どう考えても正々堂々立ち向かうのが一番だろ!」
と。
本当はわかっていました。フレッドさんがそんな説得に耳を傾けてくださるとは到底思えなかったのです。せっかちで、聞く耳持たずで、割と嫉妬深くて、アンナさん命で(※1)……ああいけません、このままではただの悪口になってしまいます。
私は、何度も何度も「絶対に結果を教えてくれ」とおっしゃる王子とお別れして自室に戻りました。
「はあ……。」
溜息をつくと幸せが逃げるとは、確か前文明から伝わる迷信だったような気がします。でも明日のことを思えば、幸せを見逃しても「普通」を取りたくなります。フレッドさんは私とどのように闘うおつもりなのでしょうか。体格のいい方でしたから、もしかしたら何らかの格闘技で鍛えていらっしゃるのかもしれません。
――格闘技。それは、魔法と双璧を成す「戦う術」でございます。自らの肉体で闘う格闘技は、精神力を用いる魔法とは対極の存在と言われています。
本来魔法とは「本来の意味の」護身術の類でございました。自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手の攻撃を防いだり、それを利用して相手を制する、悪く言えば地味なものでございました。それがいつしか火や電気を用いる、主に相手を攻撃する魔法が進出してきたのでございます。
仮にフレッドさんがその身一つで闘いを挑むとしたら、それは圧倒的に不利なことでございます。魔法は遠距離からの攻撃も可能なものでございますから、どう考えても勝ち目はほとんど無いでしょう。それとも、他に何か策があるのでしょうか?
「……考えても仕方ないですかね。」
気が重い予定を都に上って早々こしらえてしまうなど、人生最大の不運でございます。いえ、今日こそが人生最大の厄日でしょう。自分の性別を勘違いされ、あまつさえ訂正も許されず、街に出ても男性と間違われ、さらには決闘なるものを挑まれる……。ああ、なんとか丸く収まってくれれば良いのですが――人生最大の不運がその程度なら、私の苦労もなかったでしょう。
私は今まで、自分は運が悪い方だとは思っていなかったのですが……まだまだ甘かったようですね。これも私の未発達な、青い部分でございます。
とにかく疲れました。今日ばかりは早く寝てしまいましょう。




