Winning Ticket-11
〈注釈〉
※1…デュランの気持ちの変化。はじめは「王族としての」王子に畏敬の念を抱いていたが、本当の性格を知るにつれ、彼女の王子に対する心の中での扱いが変化していく。
王子に手を握られるのは二度目でした。王子のお顔は喜びで満ち溢れていらっしゃるようでございました。
「デュラン、お前はなんて――」
「あ、王子。すみませんが、そこまでで。」
「……えっ?」
私は王子のお言葉を、ご無礼は承知しておりますが、お引き止め申し上げました。
「……電話に出てもよろしいでしょうか。」
胸ポケットの携帯電話が震えていたのでございます。
王子は不服そうに私の手をお放しになりました。私は申し訳ございませんとお詫び申し上げ、王子から少し離れて電話に出ました。ディスプレイに表示された名前は――またしてもアンナさんでした。
「――もしも」
「し」と言いかけた時でございます。
「貴様ァ! アンナの好意を無下にするなど、万死に値する!!」
受話口から割れんばかりの、いえ、実際に音割れして大変聞き取りづらい叫び声が私の耳を襲いました。私は驚き、すかさず携帯電話を耳から離しました。頭の奥でキーンと響いたその声は、噴水の音に負けることなく王子にも聞こえなさったのでしょう、目を丸くしてこちらをご覧になっていました。
「……あの?」
もう一度電話を耳に押し当てた私の返事も待たずして、声の主は矢継ぎ早にまくし立てました。
「アンナが貴様にどれほど感謝していたかわかっていないのか!? アンナの気持ちを無残にも踏みにじったなど、たとえ天が赦してもこの俺が許さん!」
なんとか聞き取れたのはこれくらいでした。ああ、この声はもしや――
「フレッドさん?」
そうお呼び申し上げると、彼は唐突に沈黙なさいました。しかし彼の沈黙は、彼自身の言葉によってすぐに破られました。
「……デュラン=コナーと言ったな。」
「え、ええ。」
真剣な声で、彼は私におっしゃいました。
「この俺と、決闘しろ。」
――はい?
「えっと……決闘、とは?」
私はすぐにその意味を呑み込めませんでした。当然でございます。このご時世に決闘などと聞きなれぬ言葉を、ましてや自分に挑まれてしまったのでございますから。
「アンナをかけて、俺と決闘しろ。明日の午後六時、デ=カラット広場。必ず来い。」
そうおっしゃって、フレッドさんは電話をお切りになりました。
私はしばらくの間、電話を耳に当てたまま固まっておりました。状況が呑み込めません。なぜアンナさんの携帯でフレッドさんは電話をかけたのか。なぜ私がアンナさんとの交際をお断り申し上げたことを知っていらっしゃるのか。……そもそも、決闘とは如何いたすものなのか。
私が頭を抱えていると、王子が私にお声をお掛けになりました。
「……おいデュラン。なんか揉めてるみたいだけど、今の電話は?」
……王子にはお話しするべきでしょう。
「実は――」
私は虚実織り交ぜて、王子にいきさつをお話し申し上げました。王子ははじめ、私に同情したように頷いていらっしゃいましたが、「決闘」という単語をお聞きになった瞬間、どういうわけかぱっと顔を明るくなさいました。そして私にこう仰せになったのです。
「デュラン、男同士の決闘……絶対に受けて立つべきだ!」
「……は、王子?」
王子は拳を握り、私に熱弁なさるのです。――曰く、女をかけた男同士の闘いならば、正々堂々受けて立つのが礼儀だと。そして白黒つけ、最後には認め合うのだと。
……王子、失礼ながら――アホですか。(※1)




