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Winning Ticket-9

 あれからわたくしは夕方まで城の庭園で過ごしました。流石はこの国で一番美しいとされるところ、目に入るものは全て美しく新鮮で、罪悪感に包まれる私の心を癒すのでした。私に詩才でもあればその美しさを表現できるのでしょうが、あいにく私の持ち合わせは拙い魔法のみなのでございます。


 「デュラン様、王子がまもなくこちらにいらっしゃるそうです。」

部屋で夕食を終えた後、コーヒーを持ってきてくださった給仕の女性がおっしゃいました。私はわかりましたと答え、コーヒーに手を伸ばすふりをして、さりげなく部屋全体をもう一度確認しました。

 ――問題ないでしょう。

 「……このコーヒー、とても美味しいですね。」

部屋を確認し終わると同時にコーヒーを口につけた私は、少し驚きました。今までこんなコーヒーは飲んだことがなかったのです。

「ありがとうございます。このコーヒーは無糖で飲むのが一番良いものなんです。王子もお気に召していらっしゃるんですよ。もっとも王子はミルクもお砂糖もお入れになりますけれど。」

「そうだったんですか。」

思わず私は笑ってしまいました。あの王子の少し子供っぽい一面を知ることが出来るのは、傲慢なことですが、私がこの国でも特別な人間になったような気にさせるのです。

 「私はこれで失礼致します。御用があればお呼びください。」

一礼して女性は部屋を出て行かれました。昼の緊張も、今の話を聞いて幾分かほぐれてきました。あまり気を緩めても何か無礼を働いてしまいそうですが……。


 ――コンコンコン。

 三回のノック音の後に男性の声で、王子がおいでになったとドア越しに聞こえました。私はドアの取っ手に手を掛けて、一度だけ深呼吸をして、それからドアを開けました。再び、最敬礼するのです。

「お待ち申し上げておりました、王子。」

「……デュラン、そうかしこまるなって言っただろ。」

男性は去っていかれ、代わりに王子が壁にもたれかかっておいでになりました。

「いえ、礼節をわきまえることは人として当然の義務でございます。」

王子は一言、「カタブツ」と小声で悪態をつかれ、部屋のソファに腰をおかけになりました。王子は私にも着席を促され、私はそれに従いました。

「――して王子、今晩はどのようなご用事でしょうか?」

王子はきょろきょろと部屋の中を見回しておいでになりましたが、ややあって私の目をまっすぐご覧になりました。私がたじろいでいると、王子は大変発声よくおっしゃいました。


 「お前の魔法が見たいんだ!」


 そうおっしゃった後、王子はにこにことお笑いになりました。

「はあ……。私のですか?」

「ああ。」

どうにも、王子のペースに引っ張られると調子を狂わせてしまいます。たとえば、この王子はいったい何がしたいのか、などと、とても口に出すことはできないようなことを思わせるのです。

 ですがお受けしないわけにもいきませんので、私は王子に魔法をご覧に入れることにしました。王子は、

「本当か!? 今やってくれるのか!?」

などと目をお輝かせになり、白い歯を何度も私にお見せになるのでした。

「かしこまりました。では、お庭に出ましょうか。」

私は部屋の鍵を持って、王子を外へお連れしました。

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