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Winning Ticket-7

〈注釈〉

※1…魔法使いが「師範」となるには、少なくとも二十年以上の修行が必要とされる。しかしデュランは魔法を始めてからまだ十数年しか経っていない。これは彼女が天才であるがゆえに可能なことであるのだが、年若い彼女は自分を「まだ新人」と評して謙遜している。

 王子がお越しになるのは夕食の後だと伺いました。わたくしは荷物をきちんと片付けて、何かおかしいところはないかですとか、もう一度自分の服装を確認したりだとかをしていました。お部屋はたいへん綺麗に掃除されていましたので、そこは何も心配することはなかったのですが……。ええ、私はとても緊張していたのです。


 その後は手持ち無沙汰でございました。お恥ずかしい話ですが私は産まれてからこの十八年間、魔法以外にはこれといった趣味もございませんでした。これを機会に何か新しいことを始めてみるのも良いかもしれません。後でお庭に出て、どんな植物があるのか調べてみましょうか。

 私は部屋の中を見回しました。手慰みと言っては失礼にあたるのやもしれませんが、王子が魔力のコントロールにお慣れになったら、まずはどんな魔法から始めていただくか考えてみたのでございます。まず目に入ったのは間接照明の電球。それから飲料水の入った水差し。使えそうなものはこの二つでした。ですが電気を使う魔法は初心者には少し難易度が高いので、まずは水の魔法からお教え申し上げるのが定石でしょうか。

 王子にはアクアマリンのラフカットエレメントを差し上げました。私の最も得意とする魔法は火を使った魔法でございます。私のラフカットエレメントはガーネット。ガーネットは火の魔法を扱う際に最も相性がよい、つまり高い効果を示すものでございます。同じように、アクアマリンは水の魔法を扱うのに最も適した鉱石でございます。王子には水の魔法を重点的に学んでいただくことにいたしましょう。

 私は水差しの水をグラスの半分くらいまで注ぎました。指先に集中を向け、グラスの上に手をかぶせ、中指だけを水に浸からないようにしながら下に向けるのです。すると水はひとりでに渦を巻き始めるのでございます。これが水の魔法を扱う際の基本事項「水の流れを操ること」でございます。

 私がこれを行った理由は、どう王子にお教え申し上げればよいか確認するためでございました。魔法は教えることが大変困難なものでございます。自分がどのように魔法を使っているのか、どのようにそれを言葉で表現するのか……。自分が魔法を使えるという「当たり前」を見つめ直し、なおかつそれを人に教え、成功させる……。私は駆け出しの新人魔法使いでございます。(※1)師のように上手く人に魔法を教えることはまだ出来ないので、一つ一つ私自身が実践・確認し、教え方を模索する他ないのでございます。

 そう、私には責任がございます。王子を立派な魔法使いにお育て申し上げるという、とても大きな責任が――


 そのとき、携帯電話が机の上で震えました。ディスプレイには見知らぬ番号。私はもしやと思いました。少し躊躇ってから、私は通話ボタンを押して携帯電話を耳に押し当てました。

「――はい、もしもし?」

「……あ、あの……。アンナです。先ほどはどうも失礼しました……。あの、今お電話してもよろしいでしょうか……。」

やはり掛けていらっしゃったのはアンナさんでございました。

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