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Winning Ticket-5

 「フレッド、本当よ。この人は私たちを助けてくれたの。そうだよね、ジュリア、クリス?」

「う、うん……。」

「……。」

アンナさんはフレッドさんの両腕を掴み、訴えていました。電話をかけていたジュリアさんは、気おされるようにうなずき、怯えていたクリスさんは無言のまま俯きました。

「……本当にそうなのか?」

「だから始めからそう言ってるじゃない。」

フレッドさんは少し落ち着きを取り戻したようでした。……やれやれです。

 フレッドさんは私の方へ向き直り、頭を下げました。

「俺が勘違いしていたようだ。すまない。」

意外と素直な方のようです。とにかくわたくしは誤解が解けて、ほっとしました。

「いいえ、気にしないでください。」

問題が解決したのがわかったのか、見物していた方たちも次々お帰りになりました。


 「まったく、本当にせっかちなんだから。」

ジュリアさんはかっかと笑いました。明朗快活な女性のようです。

「フレッドてば、アタシが“アンナが危ない、早く来て”って電話したらものすっごく焦っててさ。」

「なっ……! 何を言ってるんだ……!」

フレッドさんは少し赤くなって、慌てている様子でした。なるほど、そういうことですね。確かに彼女は守ってあげたくなるような、いかにも女性らしい美人な方でした。

「ほーんとに、アンナのこととなると周り見えなくなるんだから。」

ジュリアさんはフレッドさんをからかうように、指でつついて言いました。

 「ところでアンナ、何があったんだ?」

フレッドさんは話を逸らすように一つ咳払いをしてから、アンナさんを心配そうに見ました。彼女は両腕を身体の後ろに隠して微笑みました。

「ええ……。酔っ払ったおじさんがクリスにつきまとってきたから、嫌がってますよって注意したら怒っちゃったみたいで……。そしたら、この方が助けてくださったの。」

「そうだったのか……。まったく、無茶をするんじゃない。君は女性なのだから。」

フレッドさんは胸をなでおろしました。

「ごめんなさい。でも、来てくれてありがとう。」

アンナさんはにこっと笑うと、私にもう一度、丁寧なお礼を述べてくださいました。

「本当に、危ないところを助けていただいてありがとうございました。」

「いいえ、どういたしまして。これからは気をつけてくださいね、お嬢さん。」

私はそれだけ申し上げて、踵を返しました。あの、とアンナさんが呼びかけるのが聞こえましたが、私はそのまま去ることにしました。


 「結構カッコよかったじゃん、あの人。」

ジュリアはアンナの肩をぽんと叩いた。

「な、何!? ……俺よりいい男なのか……?」

フレッドは小声でつぶやき、遠ざかっていく背中に対抗意識を燃やした。

「私……ちょっと、ごめんなさい!」

突然、アンナはデュランに向かって走り出した。

「え!? ちょっと、アンナー?」

ジュリアがフレッドを横目で見ると、彼は見事に彫像のように固まっていた。いたずら好きなジュリアは、きししと笑い、フレッドに耳打ちした。

「ありゃ、あの“王子様”にホの字だね。」

フレッドには聞こえていないようだった。


 「――あ……あの!」

足音が近づいてくるのがわかりました。この声は、アンナさんでしょう。どうやら私の後を追いかけてきたようです。私は立ち止まりました。

「どうかされましたか?」

私は背の低い彼女に合わせて身をかがめました。顔を覗きこむと、彼女は走ったせいか頬を真っ赤に染めていました。彼女は呼吸を整えてから、口を開きました。

「……あの……っ。お、お名前は……?」

「……え? ああ、私はデュラン=コナーと申します。」

私は一瞬面喰らいました。

「あの、お礼がしたいのですけど……。連絡先、教えていただけませんか……?」

そう言ったきり、彼女は俯いてしまいました。よく見ると、長い髪の隙間からほんの少しだけ見える耳が赤くなっているのに気付きました。


 ……よもや、あなたもですか。

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