Winning Ticket-2
ようやく一息つけると言っても、私にはやるべき事がございます。そう、たとえば――
明日からの授業をどうするか、ということです。
浅はかな考えから厚待遇のお仕事をお引き受けしたのはよろしいのですが、如何せん急いでいたものですから、何の準備もしておりません。とにかく、明日からの授業の予定を立てなければなりません。
アルバ氏に頂いた予定表を見ると、王子のスケジュールがびっしり書かれていました。王子は明日学校にお出でになるでしょうから、お帰りになるのは夕方。それからすぐに魔法の授業が入っております。授業はおよそ二時間ほど。それからご夕食をとるそうです。
「大変そうですね……。」
私は王子の顔を思い浮かべ、少し同情しました。普通の家庭に生まれていれば、マネージャーにスケジュールを管理されることも、魔法の修行を強制されることもなかったでしょう。
ですが私はその考えを、首を振って否定しました。私ごときが王子のお気持ちを推し量るなど、できるはずもございません。王子はあれで、楽しそうにお笑いになっていらっしゃいました。
私はもう一度予定表に目を落としました。魔法の授業は月、火、木、土、日曜の週に五日。魔法の腕が上がらないからと、諦めてはいないのでしょう。妥協なく魔法の修行をなさるつもりだと思われます。
「さて、週に五日ならば割と余裕があるかもしれませんね……。」
私はこれからの予定を立ててみました。家庭教師の契約期間は、とりあえず一年間。王子がお望みならば、さらに契約更新……となっています。私のような未熟者に一年間も仕事を与えてくださるのですから、その間精一杯王子に尽くさねばなりません。あらゆる計画の破綻も許されることはないのです。私は王子の魔法の進み具合により、五通りのプランを考えました。
ですが、優秀な王子のことです。恐らくあの指輪――ラフカットエレメントをお使いになることで、今までよりも格段に魔力の制御が楽になるはずです。魔法の実践はおできになれないとはいえ、王子はこれまで我が師より多くの魔法の事柄について学ばれてきたことでしょう。優秀な頭脳をお持ちの方です、こと魔法の知識に関しましては、恐らく私の弟子と比べても劣ることはないでしょう。ならば、まずは私がかつて師から与えられたように、あの課題から始めてみるべきでしょうか。……いいえ。いくら王子といえど、いきなり石を割るということは困難でしょう。
私は王子のプロフィールの書かれたファイルを思い出しました。そういえば、王子はいささか不器用なところがあるようでした。王子が魔法を苦手としている理由も、こういうところにもあるのやもしれません。とすれば、まずは王子に手先の器用さを身につけていただかなくてはなりません。
私はしばらく思案して、城を出ることにしました。とりあえず、必要なものを街で買わなくてはなりません。手伝いの方に一言申し上げて、私は部屋を後にしました。
――これが、面倒なことになるとも知らずに……。




