5.そのこころは。
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わたしの恐れ怯える心を表す四字熟語が切れました。
募集中です( 嘘 で す よ )。
「それでは、失礼いたします。キサさま」
「あ、ありがとうございます」
「我々の職分ですから」
目覚めたわたしは、付き添ってくれていたメイドのおねいさんに、その後の次第を聞いていた。わたしが倒れ、この部屋に運ばれたこと。現在神山樹早の立場および待遇に関して協議中であること。詳しい決定がなされるまで城外への外出は禁止、常に護衛を着けて行動すること。めったな行動は慎むようにということ。手際の良いメイドさんが一礼して出ていくのを見送り、あらためて用意された部屋の豪華さに目を見張る。
「うわー………なにこのベッド。何人で寝るつもりなの」
明らかにシングルではない。大人五人は余裕で寝れてしまいそうだ。大学生の時に入っていた学生寮の一人部屋、あれよりも広くないか?! ―――――せつなすぎる。
「もしかしてわたし国賓扱いだったり?」
そんな。こちとらただの新卒社会人ですよ。ぺーぺーなのですよ。こんなに大事にされる謂れはない、ただの迷子で、わざとじゃないけど不法侵入者で一般人で。あんな、あんな目をされることなんて。
言い知れない澱が、こころに溜まってゆく。
「てゆか………転送結界に待機させてた部下たちって、つまり、あのおばあさんも神殿か騎士団の関係者?」
あの、縁側でにゃんことひなたぼっこが似合いそうなおばあさんも、イケメン騎士のお兄さんも、気の良さそうなコックっぽいおじさんも、メイドのおねえさまも。
王子のお妃の来訪を喜びそのあまり分別をなくしたふりで―――――
そら恐ろしい忠誠心だ。騙されたことに対する怒りはほとんどないけれど。だってお妃といっても、素性も知れない女が大切な王子に近づくのだ。身体検査くらいして当たり前だろう、彼らの感覚として。むしろ高圧的にあそこで服を脱げといわれる確率だって無きにしも非ずだったわけで。そう考えれば側近たちを含めた彼らの行動の行き着くところはひとつ。
「とりあえず、様子見?警戒はとくけれど、王子にふさわしいかどうかはこれから見定める感じで」
あの人数で小芝居をうってみせたのも、王子にわたしに対する罪悪感をもたせないため。あるいは、わたしが王子に対する悪感情をもたないようにするため、か?万が一気付かれても、気付く頭があれば王子や彼らを恨むのは難しい。現にわたしは恨めないし憎めないし、おとなしく彼らに従っていれば悪いようにされないのだと分かってほっとしているくらいだ。
「………もーめんどい。誰だこんな頭使う作戦考えたやつぁ」
要するにとどのつまり結論として今のこの現状。体のいい軟禁である。
13.07.04改稿しました。大筋の順番を時系列順に直しただけなのでストーリーに変化はないかと思います。