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4.説明お願いします。

お気に入り登録ありがとうございます。

見るたび増えていく数字に、冷汗三斗の狩乃であります。

13.07.04改稿しました。大筋の順番を時系列順に直しただけなのでストーリーに変化はないかと思います。

その後のレフィリアルさん曰く。


わたしがまぎれこんでしまったここ、アイリシスカ国はシスカ神を主神とするシスカ教を信仰しており、レフィリアルさんのような神官が政治にも参加している。シスカ神殿では礼拝・説教・神法術による医療行為をおこなうほか、シスカ神の託宣をうけるよりましの教育も行っており、その管轄で頂点に立つ大神官さまがある日突然エドワード王子に会いに来てこうおっしゃった。


「エドワード王子、近いうち、貴方を大きく変える『鍵』のおひとがどこでもない世界、ここでない異世界よりあらわれましょう。ゆめゆめそのおひとを逃されますな。そのおひとよりほかに、貴方の妃を真の意味でつとめられる方はいらっしゃらないでしょうからして」


言うだけ言って、大神官さまはさきにお亡くなりになったご自身の伴侶の墓がある、(さやけ)しの宮にさっさと引きこもってしまわれた。


大神官さまは現役でナンバーワンのよりましであるうえ、神法術だけでなく数々の占術もおさめた当代随一の先見である。そのお言葉を放っておくわけはなく、レフィリアルさん付きの神官全勢力をかけてもう少しくわしいところを先見した。その結果、


一、お妃様(暫定)は王子の執務室にあらわれる

二、お妃様(暫定)はうつくしい(・・・・・)黒の御髪(おぐし)でウイスキーブラウンの瞳をしていらっしゃる

三、お妃様(暫定)はペリドットの耳飾りをしていらっしゃる


ということが分かった。


一仕事終え、やれやれあとはお妃様を待つだけだとなった次の日。その日から、どこから情報がもれたのか王子の執務室に次々と『お妃様』が送りこまれるようになった。

殺気ばんばんの暗殺者(アサシン)なら切り捨て御免ですむとして、下手な『扮装』のご令嬢がたは扱いに困るうえ、その父親たちの根回しが、 ま こ と に 、うざい。そのため、側近二人の一存で王子の執務室を変えることにした。




わたしは王子が執務室にうつって十分後にあらわれたのだそうだ。




「情報がもれるにしても早すぎました。わたしがもてるすべての神法術をもってエドワードさまと我々ふたりの気配を隠し、アメリバルドの案内でこの部屋に入ったのです。無論隠遁の結界も張っており、外からこの部屋は何年も使われていないようなほこりっぽい物置部屋にしか見えません。転送結界の中に待機させていた部下たちにさえこの部屋は教えていなかった。

それに、貴女がドアをあけたとき、貴女は先見の条件を満たしていましたが、明らかにこの世界ではありえない格好で、とても驚いてわたしたちよりも窓の外(・・・)を見ていました。暗殺者にしろご令嬢にしろ、目的の王子がそこにいるのにわざわざ窓の外なんて見慣れた景色を見つめる必要はないでしょう?」


以上が貴女を異世界よりのお客人だと判断した理由です、とレフィリアルさんは結んだ。


そう、わたしがこの部屋に入って、ここが異世界だと判断するに達した理由、レフィリアルさんはきっと気づいている。


そりゃあ部屋の広さにも驚いた。豪華な調度にも、(日本人離れした)半泣きの少年プラス青年二人という状況にだって驚いたけど。


窓、窓の外。


海が見えたのだ。


おばあさまからいただいたメゾネット。海を見ようと思ったら電車で一時間ちょっとかかるようなところにある、メゾネット。その一室の、窓から。


本来なら裏にはちょっとした神社があって、鳥居と杉の木が見えるだけのその窓から、見えるはずのない海と、どう考えたって現代じゃない街並みが見えてしまったなら。


異世界と認めるしかないよねーたははー、という訳である。


どう考えたって入ってこれないはずの部屋に、足を踏み入れてしまったわたしは、さらに運の悪いことに残り二つの条件をクリアしていた。


うつくしいかどうか分からないけれど、まあ、黒い髪。ひとよりちょっと薄い茶色の瞳は、かっこよく言えばウイスキーブラウンになるのかな。八月生まれなものだから、二十歳の誕生日にもらったお気に入りのピアスがぺリドットだったのも仕方ない。んだから、今から後悔したってどうしよーもないのだ。


からだを満たす脱力感にくらくらしていると、それまでほとんどくちを開かなかったアメリバルドさんがはじめてくちを開いた。


「神山樹早どの。貴女にとってこの来訪はまったくの想定外であったようだし、貴女はエドワード殿下を害する存在ではないようだ、そうですね?」


聞かれ、返事をしようとして、咽喉が渇ききっていることに気付く。レフィリアルさんの説明中は聞いて理解するのに夢中で、頷くくらいの反応しか返していない。乾いて震える声のまま返事をした。心臓がきしみながら鳴動している、それを感じながら。


「はい」


へんに裏返ったりしなくて良かった。


最後に、そんなことを思ったと思う。わたしはそこで気を失った。





今回は少しながめになりました。


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